鎮圧される。
第八部
「思い上がるな、異界人。『力』は確
かにあるようだが、『人』の身であり
ながら、我らに対してのその暴挙が許
されるとでも思ったかっ!」
「ナターシャ様、何故我らを置いて先
に行かれたのですか?相手は、訳あり
の異界人。現に予想どおりに不安定。
初動を誤らぬよう慎重に対処するよう
おっしゃったのは、ナターシャ様ご自
身ではないですか。」
「そうですよぉ。危険がないとは、言
い切れない状況でしたのに。迂闊です。
迂闊ですよぉ、ナターシャ様。もしこ
の人が『力』に既に目覚めていて、邪
な心の持ち主だったら、一大事だった
じゃないですかぁ!でもでも、このく
らいで済んで良かったですぅ。」
援軍がやって来たのか。
顔を上げた俺の視界に、ナターシャさ
んの前方に展開した、3人のやや軽装
ながら、うっすらと赤く輝く、いやオ
ーラを放つか?杖や槍そして弓を構え
た、戦闘態勢の少女達が見えた。
三方を囲まれている。背後こそ空いて
いるだろうが、逃げられる可能性を全
く感じられない。
「お止めなさい、リュドミラ。アナス
タシア。エレーナ。構えを解きなさい
!それに、その発言は何ですかっ!何
を考えているのですかっ!!」
ナターシャさんが、先程までと違い冷
たく言い放つ。表情も凍てつくような
静かな怒りを抑えているような、怖い
ものに変わっている。俺は、自分が怒
りのままに取り返しのつかない事をし
た、と悟った。
死して魂となって、悪霊になった。怨
念で破壊行為をした。先程『力』とか
言っていたが、映画ポ○ターガイ○ト
の悪霊がしでかす現象の例えだろう。
俺は、決して悪人ではないと思ってい
たが、本質は 悪 なのだろう。
俺は、成仏出来ず良くない存在になっ
てしまった。怒りを覚えて強風と炎を
出すなんて、迷惑極まりない。
ナターシャさんは、きっと俺を除霊し
にきたのだ。そう思った。
「長門さん、勘違いなさらないで下さ
い。貴男に声を荒げたのではありませ
ん。思慮に欠けたこの娘達を叱ったの
です。誰も貴男を傷つける、突然の死
に、まだ死ななくてよかった貴男を襲
った理不尽な状況に苦しむ貴男を、更
に鞭打つような事は事はしません。
私達は、貴男を癒やしたい、助けたい
のです。落ち着いて、心を穏やかに。
私を信じて下さい。」
ナターシャさんは、元の穏やかで優し
いゆったりとした口調で語りかけてく
れた。俺は、涙した。
お読み頂きまして、ありがとうございます。
きっといつか誰か読んで下さる。そう信じて頑張ります。宜しくお願いします。