会話する。
第五部
「・・・さん、陸奥 長門さん。」
美しい人は、俺に声を掛けてきた。耳に優しい声。
10代後半か、20代前半か。あきらかに美人だが、
可愛らしさも感じる。天使様なのか、女神様なの
か。身長は、160センチくらいか。白く美しい肌。
ローブに包まれているが、スタイルはとてもよさ
そうだ。ハイレベルな、女性らしい、曲線美を感
じる。優雅極めて風雅。先程、ホバリングをド○
に例えた事を心苦く感じる。
腰まで届く、金色の美しい髪。その瞳は蒼く、ま
っすぐにこちらを見つめる涼しげな視線に、思わ
ず頬が熱くなるような感じがしてしまう。
これまで生きてきて現実世界でも、紙面や画面の
中でも見た事がない、最高レベルの良い女だ。
あきらかに非常事態なのに、不謹慎ではあると思
う。俺は、こんな場をわきまえない、ふしだらな
性格ではなかった筈だ。
相手にわからないように、女性の魅惑的な部分を
見ているつもりでも、はっきりとバレていると聞
いた事がある。
今の俺の表情や視線は・・・。はっきりバレてい
るだろうな。俗物だ、と!
気持ちに余裕があるわけではない。現実逃避して
気を紛らわせているのだろうと、思う事にする。
「陸奥 長門さん。聞こえていますか?いえ、まだ
気持ちの整理もつかず、状況を理解出来ずに混乱さ
れているのもわかります。乗り越えなくてはならな
い事態が、人間にとってあまりにつらく厳しい事と
理解しています。どうか、難しいとは思いますが、
まずは落ち着いて下さい。時間はたっぷりとありま
す。落ち着いてきたら、私の話を聞いて下さい。」
ゆっくりと穏やかな口調で、語りかけてきた。
深呼吸をして、姿勢を正す。あくまで、そのように
したつもりではあるが。
「陸奥 長門です。心は落ち着いてきています。い
え、落ち着き気持ちの整理を付ける為にも、教えて
下さい。私は、どうなってしまったのでしょうか?
ここは、何処なのでしょうか?私はこれからどうな
るのでしょうか?私だけでなく、家族は。父や母、
兄弟はどうしているのでしょうか?お願いします。
教えて下さい。どうか、お願いします。」
話すうちに感情が昂ぶり、涙が頬を伝う感触がす
る。教えを請うてはいるが、いざ聞いてしまうの
は恐ろしい気がする。しかし、聞かない訳にはい
かない。
美しい人の表情が、曇り俯く・・・。しかし、
顔を上げ決心したような表情となり、静かに穏や
かに語り始めた。内容は、ある意味予想どおりで
はあった。数点の予想外の事柄を除いて。
第四部、お読み頂きましてありがとうございます。引き続き宜しくお願いします。