美しい人。
第四部
身構えては見たものの、空を飛ぶ何かに対抗
出来るとはもちろん思っていない。
辺りは草原で、隠れる所もない。向きを変え
逃げたところで、逃げ切れるとも思わない。
ゆっくりと、徐々に高度を下げながら、何か
は確実に近づいてくる。
やがて、俺の前方100メートル辺りで、高度
2メートル付近で停止した。
光球状の何かは、徐々に人型に姿を変える。
更に高度を下げ、50センチくらいか。淡く
光輝く女性となった。こちらの様子を窺っ
ているようだ。
金髪の白人女性。白いローブのような衣服
をまとっている。武器は手にしていない。
不思議と恐怖は感じない。むしろ、優しく
暖かい穏やかな何かが、心に流れ込んでく
るような気がする。
距離があるのに、何故か微笑んだのが解っ
た。優しい微笑。慈愛に満ちた美しい人だ。
高度50センチのまま、こちらに向かってゆ
っくりと移動、まるでモビ○スーツ:ド○
のホバリングのようだ、いやそんな荒々し
いものではない。何を考えているんだ。
女性に対して失礼な表現だ。
でも、あのド○のホバリング憧れたんだよ
なぁ、格好良かったよなぁ。
そういえば、ケ○プ○ァーも少し違うが
ホバリンクみたいにしていた、あれは超
低空飛行なのかな?あれも、格好良かっ
たなあ。懐かしいなぁ・・・。
現実逃避から、意識を戻す。
こちらに接近してくる、飛来というべき
だ。その動作について考察する。
そう、優雅だ。音もなく舞うように。
まだ、その正体は解らないのに、何故か
俺は落ち着いている。そして、助かった
ような気もする。不思議な事だが。
まさか、イン○ィ博士の映画で開かれた
聖櫃から出てきた存在のように、始めは
美女の姿をしていて、やがて目を開いて
いた者に悪霊のような姿で襲いかかって
くる事はないだろう。無い、と信じたい。
あれこれ考えているうちに、その人は俺
の前方2メートル付近まで接近すると停
止し、ふわりと着地した。
美しい人!いや、”飛べる”という事から
考えるに、人ではないのかも知れない。
だが、美しい人と考えるのが一番だ。
他の何か?だと、あまりにも怖い。
相手は飛べるのだ。いや、飛べなかった
としても、逃げ切る事は出来ないと思う。
今の俺には、その美しい人を凝視する事
しか出来ないのだから。
第四部、お読み頂きましてありがとうございます。引き続き宜しくお願いします。