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日本男児、異世界を征く。  作者: 益荒男中年
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目覚める。

         第二部


頬に当たる柔らかい草の感触と、心地よい風。


優しい植物の葉の香り。


閉じたまぶたに光を感じる。暖かい。


ゆっくりと目を開けると、ここは草原のよう


だ。とても穏やかな陽気で、心が落ち着く。


いや、落ち着いている場合ではない。


そもそも、俺は事故にあったのではないのか?


突然眼前に現れた大型トラックに、はじき飛ば


された記憶が残っている。不思議と痛みは感じ


なかったが、あの衝撃は覚えている。


それならば。奇跡的に命に別状が無かったの


ならば、アスファルトの路面か救急車内、ま


たは病院のベッドの上にいなければおかしい。


それに、その後に『闇』の中で感じた 核攻


撃の描写のような更に激しい体験。


いや、あれこそが事故の瞬間なのか?俺はト


ラックがぶつかる直前に気を失った。『闇』


は、意識がない?無意識?の状態なのか?


考えるも、よくわからない部分がある。


この草原は、何処なのか?いや、そもそも


草原にいるわけではないのかもしれない。


これは、死にゆく者が見る走馬燈のような


映像なのでは?


やはり、死んでしまったのか?ここは、あ


の世なのか?


深呼吸して、冷静になる事を心掛ける。


身体に痛みはない。理解出来ぬ部分がある


が、記憶も意識もはっきりしている。草原


にうつ伏せで横たわっているという感触も


ある。まずは、周囲の様子を調べよう。


立ち上がり、見渡す。まずは、前方。


広大な草原、その先には小高い丘が連なる。


更に遠方には、雄大な山脈が見える。


だが、人口的な建造物は見えなかった。


あるのは、豊かな大自然。


見上げれば、澄み渡る雲一つ無い蒼い空。


太陽からは、暖かな光が降り注ぐ。


振り返り、後方を確認。


やはり、広大な草原。こちらには、森林も


見える。その向こうには、美しい、その頂


に雪化粧を施された巨大な山がある。


やはり、雲一つ無い蒼い空。


その空には、島が浮かんでいる。島には森


があり、その奥の方には壮大な赤い城壁が


見える。その内側には、白亜の宮殿。黄金


で装飾されているようだ。尖塔の上部は、


玉葱状のドームのようになっている。


赤い宮殿、クリーム色の巨大な神殿のよう


な建造物もある。どこか既視感がある。


激寒の冬と広大な雪原が思い浮かぶ。


地の底から響いてくるような、厳かで壮大


な民謡が聞こえてきそうだ。


宮殿のテラスでは、オールバックに立派な


口髭のあの恐ろしい御仁がこちらを睥睨し


ているのではないか?


思わず、そんな光景が目に浮かぶ。


妄想はともかく、再度観察する。


大自然はともかく、島が浮かんでいるのは


当たり前だか、見たことがない。


俺は思った。俺は、やはり死んだのだ。


ここは、あの世に違いない。


いたたまれない気分になり、叫びたくなっ


た。だが、その気力も湧かない。


深呼吸して、うつむくのが精一杯だった。


が、そこには草の生えた地面しか見えなか


った。あるはずの、俺の身体が見えない。


地面しか見えなかった。


やはり、俺は死んだ。ここは、あの世だ。






第二部、お読み頂きましてありがとうございました。引き続き宜しくお願いします。

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