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幸せの定義  作者: 咲智
1/3

1: 初雪

初雪が窓の外を白く染めてゆく。


こたつの温かさと、室内の静けさにまどろんでいると、


トントントン…


階段を駆け上がる軽快な音が聞こえて、あたしは時計に目をやった。


あ、そうか。時間だ。


よほどぼーっとしていたのか、ケータイの着信にも気づかなかったようだ。


「ちょっと、サイ!!舞子の話聞いたー?!」


部屋に踏み込むなり、両頬と鼻の頭を真っ赤に染めたエリが叫んだ。


「舞子が、…何だって?」


8畳ほどの狭い部屋を占領するこたつの中から、そのやかましい親友を見上げる。


「結婚よ!!」


「結婚?あの舞子が?」


「そぉ!!3つ年上の彼氏と!あの、例のIT関係やってる彼ね!」


興奮気味のエリゎ乱暴にコートとマフラーをフローリングの床に脱ぎすてると、こたつにもぐりこんだ。


「あれですか?最近流行りの、できちゃった婚?」


「ううん、そういうわけじゃないみたい。4月に籍入れて、9月に結婚式するって…交際期間3年でのゴールインだよ。」


「へぇ、あの舞子がね、ちょっと意外だね」


「でしょ!もう、びっくりしちゃったよ、あたし!」


そう言って、エリゎこたつの上のみかんに手をのばす。あたしも真似して、手をのばす。


最近ほんとに、このての話が多くていやになる。


やれできちゃっただの、やれ結婚だの、はたまた離婚だの…



あたしはまだ、そのどれにも属したくない。


だってまだ、21なんだから。自由に生きたいお年頃?でしょ。


もちろん結婚に憧れはある。


結婚は25くらいで、子供は30までには産みたい。


経済力のある優しくてカッコイイ旦那さまと、可愛い子供たち(2人くらい、出来れば男女で)に囲まれて、専業主婦やりつつ趣味に精を出す。


参観日には子供が自慢に思うような若くて綺麗なママを演じて、家に帰れば家事もちゃんとこなす、完璧な女。



あくまで理想だけど。



今のところ、ほんとに理想で終わりそう。だって、あたしの彼氏はフリーターだ。

昼は配送の仕事、夜はキャバクラのボーイ。


5つ年上なんだけど、ぶっちゃけ収入はあたしと大差ない。


出会ったきっかけから付き合うまでの経緯に至っては、とてもじゃないけど褒められたもんじゃない。



甘酸っぱいみかんを頬張りつつ、あたしはそっと瞼を閉じた。


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