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僕の生活への金事情 

単回です。

 この世で最も大事な物は「金」である。

 誰かが言った言葉、賛否両論のある名言なのだが、現在の幸田はその通りだと思っている。

 命や愛や人との関係や・・・・・・。


 どれも人間として重要なファクターであることは確かだが。

 そのどれを大事にするにしても金は必要になってくるのだ。

 

 そんな金を誰よりも今、必要としていると自負している幸田。

 それは何故か。


 始まりは一週間と三日前に遡る。

 大男家で居候?を始めてから五日目の夜のことだ。

 

 いつも通りウィルとナヤの面倒を見て、お風呂に入る。

 勿論お世話以外にも家事の手伝いも期待以上に励んだつもりだ。

 元居た世界で親に頼まれ家事を多少心得ていたこともあって足手まといにはならなかったと思う。

 

 始まりが突然であったように、終わりもまた突然なのだ。

 

 水の使用量も成るだけ最小限に抑えお風呂から上がり五人入れるのがやっとな空間、リビングに入る。

 

 「お風呂ありがとうございます、あ、あとご飯も」


 毎日欠かさず言っているお礼の言葉。

 親の前では絶対に言えない言葉だが、たった五日の滞在だけでもう板についてしまった。

 

 生きる、という行為はこんなにも大変なのか。

 これまで自分がどれだけ豊かな生活を送ってきたのか、それが心から理解できた。

 

 

 ・・・・・・・理解できたと思っていた。


 世界観はお決まりの「中世」であり当然電気もない。

 この町は調べるに結構な辺境に位置するらしく"発展"を感じることのできる場所ではないらしい。

 そういうが、旅人や行商人の往来も少なくはないように思える。

 それなりに繁栄しているように感じるのだが・・・。


 ちなみに家の明かりは光魔術によるものだ。

 半永続的に持続する初階級魔術であるようで人口の大半が習得することができるらしい。

 幸田でも習得は可能らしく適切な環境で訓練すれば容易とのこと。


 「じゃあ、頂きます」


 行儀よく手を合わせ、感謝を告げる。

 

 今夜は市場で買った小魚と栄養のたっぷりと入ったスープが少量。

 こう見れば貧困な暮らしを送っているようにも思えるが、この町では普通である。

 何でもここら一帯を統べる王国ーシェルバンデム王国が周辺地域に課す税金や関税の高さ、更には地方税も何らかに充てる為、集金しているようだ。

 

 だが、大男から聞くに、集金というより徴収の方が正しいようだ。


 

 それを踏まえた上で生きていく上での当然の事態が起きた。

 

 子供が二人仲良く食事をしている隅でその親は苦渋な表情をしていた。

 幸田もスープを飲みながらチラチラと伺う。

 

 -もう飲みほしちゃった・・・・・・。


 この辺りでは普通であろうとも幸田にとっては全く足りない。

 だから、食べさせてもらっているだけマシと腹に訴えてお腹の減りを我慢する。

 

 お腹を満腹にする魔術でもあればなと思っていると。


 「・・・・・・ねえ、コウタ君・・・・・・少しお話があるの」


 大男の妻ーコウから声がかかった。

 いつになく渋々した声音のようで。


 大男ーヴァームスも真剣でいて少し申し訳ないといった顔をしている。


 「はい・・・・・なんでしょうか?」


 多分に嫌なことだろうと身構える。

 

 「あの、ね。

 言いづらいんだけど・・・・・・・」


 「お前はいい、俺が言おう。

 責任は俺が取るべきだ」


 「・・・・・・・あなた」


 あ、これホントにやばいやつだ。

 そう思い、考えつく最低な事を必死に考えた。

 そうすることで、いざ口頭で告げられてもあまりネガティブにならないようにするために。


 「・・・・・・・コウタ、自分から誘っておいて申し訳ない。

 ないが、本当にすまないが・・・・・・俺等も生きる為だから」


 ーあーそういうことか。

 

 ヴァームスは言葉を区切って数秒間の重苦しい空気が部屋を満たした。

 子供達は意味が分からないようで何となくそんな空気を感じ取って合わせているようだ。


 「実はな。昨日お前が町へ買い物に行っている時に、国の集金人が来てな。

 どうやらお前の存在に勘付いたようで・・・・・・」


 「魔感知ですか」


 「そうだ、この家のものではない魔力の存在を感じたらしくてな」


 魔感知は魔術をある程度まで極めた者でないと感じることは不可能な筈だが、意外と抜かりないな。

 

 -ん?ということは。


 「お前の分の税金を払わなければいけなくなる。

 ・・・・・・俺達四人でもギリギリの生活なのに・・・・・お前もとなると」


 「・・・・・・そい、ですか・・・・・・」


 「本当にすまない」


 ヴァームスとコウは深く頭を下げた。

 そんな彼等を見て。


 「・・・・・・元々は僕から頼んだことですから。

 あなた方が謝る必要なんてないですよ・・・・・・こちらこそ、お世話になりました」


 「・・・・・・・行く当てはあるの・・・・・・いや、あればこんな所にはいないか。

 できればお前が働き口が見つかるまではここに置いておきたかったのだが」


 「すいません・・・・・幾らかはあるんですが、まだお金はないです」


 「おそらくこの町にここ以外にお前を置いてやれる住まいはないだろう」


 それが、現実だと言わんばかりに突き刺さる易しくはない現状。

 別に何も悪くないのに何度も何度も頭を下げる夫婦。

 

 幸田自身、もう耐えられなくなったのかそれから数口の会話の後、仮自室へ戻った。

 

 そして、次日。

 早朝に二人に最後の礼を告げ、これから先何があっても関わらないという約束をし、家を去った。


 

 それから8時間後、現在。


 相変わらずお腹の減りに耐えながら、やけに賑わいを見せる屋台が並ぶ広場へ足を運んでいた。

 舗装が不完全な路を荷馬車が通り、その端を住人が歩く。

 

 「あの、僕を働かせていただけませんか?」


 幸田は既に十三件目の屋台に頭を下げる。


 今日もむせ返るような暑さが町を活気付ける。 

 

 


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