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僕の大男一家兄妹との日常 前

大男一家との日常

今回と次回は兄妹とのお話です

 町の外れに建つ小さな家。

 周りの豊かな自然と同化しているような感じで少し薄汚れさが目立って趣深い。


 「兄ちゃん!遊ぼうぜ!!」


 「お兄ちゃん!木登りしよう!」


 そんな家の玄関。

 子供らしい無邪気な声音が外に響き渡った。

 

 トトトと最初に外に姿を現したのは小学生っぽい赤毛の男の子。

 陽に照らされて赤くなった顔を曝け出して右手に木刀のような剣を握っている。

 勿論、やすりのような魔術で芯は取ってあるのでするすると心地のいい触り。

 そのまま近くの木に木刀を振って遊んでいる。


 次に出てきたのは男の子までとはいかないものの赤みを帯びた肌のこちらも赤毛の女の子。

 安っぽい布で作られたミニスカートを可愛らしく回して誰かの手を引っ張っている。

 

 そして、最後に玄関の戸をくぐったのは幸田だった。

 実は家用のスリッパを履いてそのままこの世界に召喚されていたため、不要だと判断し市場で売り捌き一番安価だった皮の靴を購入した。

 質はしっかりしていて履き心地も悪くはない。 

 

 「うわぁっとと」


 まだ紐を結び終えてなかった為、手を引っ張られ体勢を崩しそうになったが何とか踏みとどまった。

 ふう、と息を吐き蝶々結びの締め。

 

 「ごめんごめん、それで何からするの?」


 立ち上がって赤毛の・・・兄妹を見下ろす。

 

 夏場の蒸し暑い気温の中に吹く涼味な風が三人の髪を揺らす。

 

 元居た世界ではゲームばかりしていて外は苦手だったけど、こんな暮らしも悪くないと思い始めている最近。

 確かにまだたまにゲームをしたくなる時もあるがここは言ってしまえばゲームの世界だ、今はこっちの方が興味深い。

 

 幸田がこの世界に来て3日が経とうとしていた。

 時間も夕暮れ時。

 お世話になっている身として最低限の家事を済ませ現在、子供の世話に努めている。 

 食事と寝床を用意してもらっている以上遊びといえど怠ることはできない。

 

 町門が閉まる鐘までの間、時間にして1時間半程度。

 

 「じゃあまずはウィルとチャンバラするか!」


 「お!やったあ!!はいこれ兄ちゃんの」


 手渡されたのは同じく魔術で安全になった木刀だ。 

 ウィルの持つ木刀より明らかにリーチが短いのは対抗心の現れだろうか。

 

 幸田は剣道などおろか、チャンバラさえやったことがない超の初心者であり、ウィルとも互角程度の実力だ。

 インターネットやパソコンの普及の影響でそのような体験をしてこなかった所為でもあるが、ゲームやアニメで練習した剣技のフリを披露したところ見事ツボに入ったらしい。

 素直に喜んでいいものか分からないが。


 妹のナヤちゃんの声援の下、50cm以上の身長差の二人が勝負する。

 

 「よ~い・・・ファイト!」


 何処で学んだのか、試合開始の合図が出される。

 

 初手、幸田は後方へ飛ぶ。

 意外と足が速いウィルから少しでも距離をとるためである。

 それを見たウィルは脳筋プレイの魂を燃やし突撃。

 

 15mという間を一瞬で埋める猛スピードで斬りかかる。 

 比喩ではなく本当に起きているありえない事態に初めて目にした時は思わず大声を上げてしまったものだ。

 この家の主が言うには、無意識の中で加速魔術を発動しているとのこと。

 魔術を使う者としてまだ未熟である子供はよくあるらしい。

 無意識で魔術を発動しているなんてとても恐ろしく思った。


 そんな無意識な加速魔法。

 初見では脅威だったがもう十数回目。

 

 突進しかしてできないことを理解した幸田は少し横にずれた。

 直後にブオンと風切り音がした次の瞬間。


 -ゴツン


 太く伸びた大木に直撃した。

 頭から突っ込んでだウィル。

 

 「はははっ、大丈夫か?」


 幸田は心配の欠片もなく笑った。

 身を案じてもいいほどの快音なのだが、幸田はそんなことないと言うように駆け寄った。

 

 「っ~!兄ちゃん流石だな!」


 「ふん、まあな、もうウィルの動きは読めてるんだよ」


 何事もなく幸田によって差し出された手を取り立ち上がる。

 ウィルはえへへと笑い再び木刀を構える。


 これもまたこの家の主曰くー我々一家は頑丈、とのことだ。

 

 頑丈の度合いが人間を超えていると思うのは僕だけだろうか。

 

 「よし、このまま続けるよ兄ちゃん! それ!!」


 「お、ああ、ズルいぞウィル!」


 木刀同士が重なる。

 バッと二人は同時に後ろへ下がる。

 

 「せいやぁ!!」


 「よっ」


 連打ち。

 ウィルが斬りこんで、打ち合い。

 ウィルが攻めに徹し、幸田が守り。

 

 「やるなぁ」


 簡単な一撃一撃はすぐに弾かれるが、数回に一回、幸田の防御範囲からの攻撃を仕掛けてくるのだ。

 才能のような類だろうか。


 だが、防御はがら空きな為、そこも含め微笑ましく思う。


 「よし、そろそろ僕も攻撃するよウィル」

 

 「え?」


 頭一つか二つ高い幸田はウィルの頭を狙って木刀を降ろした。

 

 「あっ!」


 一発。

 木刀はウィルの天辺を当てた。


 「はい、ウィルの負け~」


 「・・・・・・むうううううう!ずるいずるい!兄ちゃん大人げないぞ!」


 「・・・・・・・・大人げない、って・・・・・」


 確かに大人げないな。 

 何だろう、この試合に勝って勝負に負けるような気持ちは。


 「兄ちゃん!も一回!」


 「・・・・・・・あ、ああ。

 やろうやろう」


 ウィルは今度こそと気合を入れ直した。

 

 「お兄ちゃん、私も遊びたい~!」


 ナヤちゃんもそろそろ痺れを切らしてきたみたいだ。

 

 しかし、もうしばらくの間、二人のチャンバラは続くことになる。

 

 

 

 

 

 


次回、妹。

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