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僕の日常の始まり 

 -どうしてこうなってしまったんだろう。


 気づいたら異世界に召喚されてて、挙句に帰れなくなってしまった。

 それに、勇者や英雄になれるだけの才能も適性もないと判断され・・・・・・。


 それから召喚主さんの話などろくに聞かず、流れるようにここ<ラナクレア町>に送られた。

 少しは反省しているようでフェレタール(移動魔術)という魔術を使ってここに連れてきてくれた。 

 何故この町か。

 それは、僕の生涯能力と対戦適性からによるものとのことらしい。

 

 生涯能力は、その人が一生に得られるであろう基礎能力やその他のことであり・・・ゲームで例えるとパラメーター、ステータス。

 

 対戦適性は、戦闘におけるその人が及ぼす影響と才能のこと、とのことだ。

 おそらく、戦場で誰よりも多く敵を倒せるほどその適正は高いと思う。


 ゲームの世界のように、パラメーター、ステータスを数値化し才能や適性の区別をつけるものかと想像していたのだが、召喚主さん曰く、この世界に数値化という概念はなく、実際に動いて計測するものらしい。

 大雑把な指標だなと感じた。


 ちなみに召喚主さんが発動したフェレタールは固有魔術と呼ばれる系統に分類されており、使用者は幾人か存在はしているがそれ以外が発動することはできないのだという。

 ややこしい区別の仕方なのだが、この世界の魔法とは大きく魔法と魔術に分かれており、それは使用できる人数で決まる。

 

 魔法は、世界中で必ず一人しか発現しない・・・どれだけ才能があろうとも修行しようとも使うことができない唯一のもののことを指す。

 比べて魔術は、誰もがではないが発動することができるもののことだ。


 才能主義とも取れるこの世界、凡人である僕が送られたラナクレア。

 どうやらここが僕に合ったスタートの地だと、そう判断したらしい。


 

 「・・・・・・だからと言って一文無しじゃなんにもならないじゃん!!」


 町の入口、召喚主さんに連れてこられるだけ連れてこられて捨てられた僕は思わず叫んでいた。

 説明だけして金の一銭も寄こさずに未知の地に立たされる絶望感。

 

 RPGの主人公は適応力が飛んでもないことが身を持って証明された。

 

 「僕がやってたゲームのキャラクターもこんな気持ちだったのかな?」


 ワクワクドキドキな軽快なBGMもなく、賑やかな人と物の往来も今では何故か喧騒にも感じる。

 心の持ちようなのだが、そんな余裕などない。


 もう何度目かの嘆息。

 

 ー一体どうすれば・・・。


 

 「おい、そこの少年!」

  

 「んえ?」


 僕に向かって豪快な大男が近づいてきた。

 

 プロレスラーみたいなごつい筋肉を見せびらかすように下着とパンツのセットで。

 

 ー不審者・・・かな?

 

 あの身なりだ。

 当然よ言えば当然なのだが、いかんせんここは異世界だ。

 普通の事かもしれない。


 「お前、旅人かぁ? そんなとこに突っ立ってねえで、他の奴等の邪魔だろ?」


 「あ、はい。そう、ですね」


 確かに、見たところ馬車の出入りもあるし。

 

 こっちこい、と手招きされ少し離れたベンチに案内された。

 どこそこに点々と配置されており、数人が読書をしていたり時間的に昼食を取っていたりしている。

 僕も大男の隣に腰を落とした。


 「あ、あの・・・・・・ありがとうございます」

 

 ひとまずはお礼を言っておかなくては。


 「おう!気にすんなよ! それでお前、あんな所にボーと突っ立ってどうした? 何かあったのか?」


 「・・・いや、その・・・はい・・・ええっとー」


 「何だ? 歯切れが悪いなぁ。もっとハキハキ話そうぜ!まだ若いだろ?」


 「あははぁ・・・すいません・・・」


 中々切り出せないでいると。


 「・・・・・・そういやお前のその服装、変わってるなぁ。

 まさか、お前さん・・・魔女にでもやられたか?」


 「・・・・・・魔女?何ですかそれ」


 急に真剣な面向きで語りだした大男。

 

 「あぁ、最近になってよく耳にするようになったんだが、何でも旅人を一方的に何処か遠くへ飛ばしてしまう魔術を使うんだそうだ」


 「何処か遠くへ飛ばす・・・フェレタールですか?」


 「魔術名か? お?うん・・・・確かそんなのだったと思うが? まさかお前、それを?」


 「あ、いや・・・そうではな・・・・」


 ガシッ。

 大きな手が僕の肩に乗った。

 ぎょっと目を丸くして男の方に目をやると、「そうか・・・・」と哀れそうな顔。


 「大変だったな・・・だから、戸惑っていたのか・・・」


 「いや、あの!違いますよっ!」


 変な勘違いをさせてしまった。

 僕は声を荒げた。


 「そうか、そうか・・・・・・そんなに強がらなくてもいい。

 不安だったな、でもお前が飛ばされた先がここで良かったよ」


 「・・・・・・はぁ・・・・・そう、ですね」


 もう完全に信じ込んでしまったよう。

 何を言っても無駄だろうと諦めることにした。

 今の境遇と近い所があるし。


 「あ、あの・・・今僕お金持ってなくて・・・・敵とも戦える自信がないって言うか・・・・・・」


 「ふむ、成程。

 よし、それなら家に来い! これも何かの縁だと思えば良い」


 「えっ!? 良いんですか! お邪魔しても」


 思ってもみない展開だ。

 気が引ける部分もあるが、ここは素直に誘いに乗っておこう。

 大きい男の人ってのは心も大きいんだな!


 おう!勿論よ、と快く了承してくれて、意外にもあっさりと生活する手段を手に入れた。

 

 「・・・・・あぁ、でもな」


 「はい?」


 「一応先に伝えておくが、俺ん家は結構生活に窮屈すると思うぞ」


 「窮屈、ですか」


 何やら不穏な空気が。


 「我が家は4人家族なんだが・・・たぶん、お前の分のしっかりとした寝床とか生活できる分の食料はない。

 それでも・・・いいか?」


 マジですか。

 やはりあっさりとはいかないようだ。

 だが。


 「・・・・・不安はありますけど・・・・・よろしくお願いします」


 何とかするしかない、と取り敢えずお世話になることにした。

 

 


次回から前後話で軽い日常風景を書いていきます。

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