24話 俺はマルス。NPC。プレイヤーの故郷を目の当たりにする。
ちょっと遅れちゃってすいません!
俺は、ケイタ君が表示してくれる画面にくぎ付けになっていた。
「マルスー、聞こえる?」
中からは金髪の女の子の声が聞こえる。こっちでの姿と多少違うが、ユイだとはっきりとわかる。
「聞こえるぞー。リアルとやらの姿もそれはそれで可愛いな。」
「ありがとうー!そっちでの姿に寄せるように化粧とか頑張ったんだよー!」
「ああ、頑張ったんだな。本当は男だったなんて信じられないぞ。」
「信じなくていいよー。どうせこれから私は女の子として生きていくんだし。」
「ああ、大変だろうけど応援するよ。」
最初に性転換すると説明を聞いた時は理解に時間がかかったが、一番強く思ったのは「俺のために性別を変えるなんてしなくても……。」と言うことだった。でも、ユイは「自分のためだから!」って言ってたから、応援することにした。本心なのはよくわかる。
「さて、約束通り外を見せるよ。」
そう言って家を出る。
「本当に高い建物が立ってるんだな。」
「うん。でもここらへんの建物はそんなに凄くないよ。この曲がり角を曲がって大通りに出ると、本当に凄いんだから。」
「じゃじゃーん!これがマルスに見せたかった景色。」
100万ドルの夜景、とまで言われる景色らしい。ドルというのは向こうの通貨の一つらしい。
すっごい。
すっごい。
遠くの建物から、近くの建物から、光が飛び込んでくる。
まぶしかったが、慣れてくると確かに美しい。
「これはユイが自慢するわけだな……。」
「でしょー。」
「そういえば、最初は光のインパクトで気づかなかったけど、建物一個一個が凄く大きくないか?」
「うん。高層ビルなんかは、マルス数十人分の高さがあるよ。」
「すごいな。世界樹より大きいんじゃないか?」
「うん。世界樹より大きいと思う。」
世界樹は、この前デートで行ったところだ。確かに綺麗な樹だったし、俺は凄く感動してたんだが、ユイはあまり感動してない様子だった。確かに、この景色を知ってると感動しないのかな。いや、建物と樹だからまた違うんだが。
「そうだ、マルス。女の子になる、っていう準備も整ったから、私から言わせてね。」
「何?」
「マルス。結婚してください!」
ぷ、プロポーズ……。
「しまった……。告白はユイからだったから、プロポーズは俺からしようと思ってたのに、先を越された……。」
「ふふ、積極的な女の子でごめんね!」
「ふふ、俺でよければこれからもよろしくお願いします!」
ユイが、ついに俺のお嫁さんになるんだ。
まぁずっとこっちの世界にいられるわけじゃないけど、それでも家庭とか築けるのかな。
「さて、ビデオ通話ができることだし、『娘さんをください』ってやつ、やってもらうからね♪」
「ひぇっ。嫌だなー。」
「まぁ私もマルスの家にあいさつに行かないとね。ずっとそっちの世界にはいられないのに妻になること、嫌がられるかもしれなくて怖いんだけど。」
「それはしょうがないよ。こっちの世界に来るにもお金がかかって、そのお金を稼ぐためには向こうの世界で働いたりしなきゃいけないんでしょ?」
「うん。まぁ今は学生だけどね。」
「出来る範囲でこっちに来てくれればいいから。歓迎するよ、ユイ!」




