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俺はマルス。NPC。プレイヤーの彼女ができました。  作者: 雪卵
間章1 その頃の周囲の人たち
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アイアンゴーレムの最期4

 「召喚、アイアンガーディアンゴーレム!」


 主の声とともに、我は戦場に現れた。眼前には、多数の魔物の群れ。そして、それを率いるのは、ヘビーグラウンドドラゴン。およそ我の敵う相手ではない。

 我の視野に、必死の形相でパーティーの仲間に助けを求める主の声が聞こえた。


 そして主から、強い思念を感じ取った。

「マルスは私が守る。マルスが逃げ切れるだけの時間を、私が稼ぐ。だからどうか、マルス、生きて」

 我が主に生きる希望を与えてくれた騎士マルス。その人格はユイからよく聞いている。マルスはここで役目を終えていい人間ではない。

 命を落としていいのは、東地域を守る役目を終え、一介の魔法使いの使い魔に落ち、その主ユイにすら満足に尽くすことができなかった、我だ。

 我は、死に場所を見つけたようだ。


「我は死ぬのはあまり好きではない。一分一秒でも長く生きながらえて見せる。一分一秒でも長く攻撃を止めてみせる」


 我は土魔法で壁を作った。ヘビーグラウンドドラゴンを数刻足止めすることに成功する。


 ヘビーグラウンドドラゴンは我に牙を向ける。


「かかってこい、ヘビーグラウンドドラゴン。一撃でも多くしのぎ切って見せるわ!」




 我の装甲はどんどん削れていく。我の攻撃は、ヘビーグラウンドドラゴンの攻撃を遅らせる程度の効果しかなかった。


 数刻の牙と拳のぶつかり合いの末、ヘビーグラウンドドラゴンは、我を避けて主の方に進もうとした。


 我は身を挺して時間を稼いだ。


 我の左手は、ヘビーグラウンドドラゴンに弾き飛ばされた。


 我は残った右手を振り回してヘビーグラウンドドラゴンを足止めしようとしたが、ついにヘビーグラウンドドラゴンは我の防御を突破した。


 その時、パーティーメンバーがユイのもとに現れた。


 新たに加入した炎魔法使いのPuma(闘技大会BEST8入り)。ハンマー使いのユウ(BEST32入り)。卓越した補助魔術師のケイタ(BEST16入り)。そして闘技大会4位、鉄壁の愛奈。

 彼らなら、一時の間ヘビーグラウンドドラゴンとその取り巻きの相手を任せることができる。


 我はボロボロ身体に鞭を打って、眼前の敵を見据える。中ボス格の魔物が続々とこちらに向かってきている。


 我の相手はこ奴らだ。


 中ボス格の剣が、鞭が、槍が、弓が、銃が、炎が、雷が、我の身を貫く。


 我の身には穴が開いてしまっているが、近くの岩をはめ込んで穴をふさぐ。


 我はこの中ボス格どもの攻撃を通さないためにこの場所にいる。


 この身は不倒。主の前で、決して膝はおらない。


 「この身は我が主、ユイの盾である!最後に主への忠誠、果たさせていただこう!」




 我の意識がもうろうとしてきている。いけない。主が戦っている。主が主の何より大切な物のために、戦っているのだ。我がここで、意識を、失う、訳、に、は、いか、な、い、の……だ……。


 我の身体が崩れていくのが分かる。必死に朽ちかけの右手を振るい、中ボス格の魔術師、ハイオーガメイジを屠る。その時、右半身が砕け散った。


 ああ、我はここまでだ。


 我の長い命の大半は、東地域の守護者として過ごした。イリス様をお守りできなかったと悔い続けてきた永き日々。しかし、人生の最後に主とであい、イリス様をお救いする事ができた。そして、新たにできた大切な仲間と、素晴らしき日々を過ごすことができた。


 その中で強くなった我の実力を存分に振るい、最後に主のために命を散らすことができる。本望である。


 天国に行けば、イリス様に会えるのか……。会えるといいな……。


 我は自爆スキルを発動させると、我の散らばった身体全てを爆発させ、多くの魔物を屠った。


 我の意識は、身体とともに、霧散した。


 俺はユイ。マルスを救うために絶望的な戦いを挑んでいる。


 必死でコールドブリザードを放つさなか、爆散するアイアンガーディアンゴーレムが目に入った。


 彼は感情を持つ魔物だった。気高き、そして主思いの魔物だった。


 私のわがままのために、彼の命は砕け散ったんだ。


 彼と過ごした日々が脳裏によぎる。俺は、最初はゲームの中の話だとたかをくくっていた。でも、彼が俺を心配する気持ちが本物なのは、痛いほど伝わってきた。


 涙があふれてきた。俺の、俺なんかのために、気高き東地域の王が、散ってよいのか。


 その時、彼の言葉が俺の脳裏によぎった。

「我は主にまだ何も返せていない。主の力に、支えになりたいんだ」


 その時、俺は、私は、理解した。彼は俺と、私と、同じなんだ。大切な人の力になりたいという思いに突き動かされて、動いていたんだと。

 だから俺は、私は、私の大切な人、マルスのために、戦う。


 狙い澄ましたツララランスが、こちらに向かってきた中ボス格の急所に刺さる。

 戦いはまだ、始まったばかりだ。


 マルスと再会した日、俺はマルスとともに、アイアンガーディアンゴーレムの土葬を行っていた。


 「俺のせいで、大事な使い魔の命を失わせてしまったのか……」


 「いいのマルス。後悔しちゃダメ。マルスに救われた人たちに、失礼だよ。マルスが救った人たちは、生きるべき人たちだったんだよ。だから、これでよかったんだよ」

 「そうだな……」

 「私は、彼が私に尽くしてくれた分まで、マルスに尽くすよ。それが、彼の想いに答えることだと思うから」

 「ユイ……。俺も、ユイの想いに、少しでも応えていきたい。それが、彼の想いに答えることだと思うから」


 アイアンガーディアンゴーレムの顏部分は、4つに割れていたが、誇らしげに、笑っていた。

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