犬なんて飼うもんじゃない。
初めて短編を書きます
月イチで短編を書いていきたいと思います
よろしくどうぞ
キミを飼ったおかげでボクは気軽に家をあけることができなくなった。
登録したり予防注射やワクチンを注射しなきゃいけない
とても面倒くさい。
ボクは朝が弱いのに
キミのために1時間早起きして
散歩に連れて行かなければいけない
しかも朝と夜2回、行かなければいけない
連れて行かなければ、キミはストレスでイタズラをする
たちが悪い
散歩に行ったら行ったで足を洗わなければならない
これまた面倒くさい。
ときどきシャンプーもしなくちゃいけない
犬臭くなるから
そのあとキミは濡れたカラダで
ボクのヒザの上に乗るけどやめて欲しい
とても冷たいから
ボクがご飯を食べているときに
キミは催促のチョイチョイをするけどやめて欲しい
そんなウルウルした目でみつめてもダメなものはダメだ
キミは撫でるといつも怒るのに
ボクがソファに座るといつもとなりに座るのは何故だ?
つい、触ってしまうからやめて欲しい
キミはおやつの時だけ
"おすわり"も"お手"もするお利口さんだ
なのになにも持っていないときは見向きもしない
ちょっと現金過ぎないか
ドライブのとき膝の上で大人しく座っているのはいい
だけど前足でパワーウィンドウのボタン押したり
クラクションを鳴らすのをやめて欲しい
凄くびっくりするから
キミはお気に入りのオモチャで遊ぶとき
いつもどっかへくわえて持っていってしまう
独占欲が強すぎなんじゃないか
キミはペットシーツの上でオシッコするとき
足を挙げてするけどやめて欲しい
ペットシーツの意味がなくなってしまうから
ボクが仕事から帰って寝転がると
キミはいつも鼻の穴を舐めるけど、やめて欲しい
あれ結構痛いから
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
キミは最近年をとったね
散歩する距離は短くなったし
エサの量も減った
寝てる時間も増えてきた
あれ?眼が見えずらくなってきたか
病院に連れて行ったら白内障と診断された
もう少ししたら
キミはボクの顔も見えなくなってしまうのかな
キミは全然歩けなくなってしまったね
もう大好きだったあの公園まで
一緒に歩いていくことは
もうできないのかな
もうキミの瞳は真っ白になってしまって
ほとんど見えなくなってしまったね
名前を呼ぶとボクはキミのすぐ目の前にいるのに
キミはボクを探している
傍に寄って撫でてあげると
前は怒ったのに
今は安心したかのようにカラダを預けてくれるね
なんだか少しさびしい
最近のキミは眠ってばかりいるね
どんな夢をみているのかな
キミの夢にボクはでてくるのかな
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ある日の朝
キミは冷たくなってしまった。
もう、あの元気な鳴き声も
触れたときに感じた温かさも
抱っこしたときに感じた重さも
散歩に連れていくときの嬉しそうな顔も
ちょっかいかけた時にみせる不機嫌な表情も
おやつを持った時にみせる期待したまなざしも
寝ているときにみせる安らかな寝顔も
もうこれからは見ることはできない
ボクの時間はいつの間にか
キミでいっぱいになってしまっていたため
今のボクは空っぽだ
キミのせいでボクは変わってしまった
キミのせいで
ボクは早起きになった
キミのせいで
ボクは運動不足にならなかった
キミのせいで
ボクはよく笑うようになった
キミのせいで
ボクは泣き虫になった
キミのせいで
ボクは‥‥ボクは‥‥
こんな思いをするくらいなら
ボクはキミなんて飼うんじゃなかったのかな
でもあの日々をなかったことになんてしたくない
振り返えるとあのときのキミがすぐに思い出される
初めて家にきたときの小さなキミを
毎日同じところを散歩してるはずなのに
嬉しそうに歩く後ろ姿を
一生懸命にご飯を食べている姿を
ドライブのときいつも膝の上に座っている重たさを
幸せそうに眠っている寝顔を
触られて怒ったあのときの表情を
走り回って遊んでいるときの姿を
一緒にソファに座っていたキミを
眼が見えなくなって同じところをぐるぐる歩き回っている姿を
撫でられて安心しているキミを
そしてずっと深く眠っていたキミを
愛嬌たっぷりのあのしぐさやあの姿やあの表情をボクは忘れないだろう
キミと共に過ごした時間は
ボクにとってのかけがえのない宝物だったんだな
ボクはキミに伝えたいことがある
こんなボクに出会ってくれてありがとう
素敵な日々をプレゼントしてくれてありがとう
そして、さようなら
おやすみなさい