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転校初日の初授業4

 二時間目の授業は数学。フェアリー育成と言えど一般の学校とほぼ変わらず国語や社会、英語や理科、音楽や美術、家庭科etc……。


 外の学校と違う異なる所は体育におけるフェアリー育成、能力向上の為の訓練や、フェアリーが発見されてから今までの歴史等が教科に入っており、そこが大きく異なる部分であり、この二つは毎日授業として行われるのである。


 先程言った通り今は数学の授業中であり、旭は眠気に襲われながらも黒板に書かれた数字や文字を欠伸(あくび)を噛み殺し、ノートに書き込んでいくが、最後ら辺は旭自身も分からないのでは無いかと思うくらいに字が汚くなり過ぎてしまった。


 旭はその自分の字を見て後で静華にでもノートを借りて、写させて貰おうとそう思った時に丁度いい感じにチャイムが鳴り授業が終了した。


「終わっっった~……。なぁなぁ静華~?」


 大きく背伸びをし前に居る静華に声を掛ける。静華はその声に振り向いき、


「ん? どうかしたの?」


「今終わった授業のノート見せて~」


 机に伏せながら手だけを静華に向けた。


「あれ? ノートとってなかったの?」


「いや、とったんやけど最後ら辺眠くて字が汚くなり過ぎたんよ。これじゃ~読まれへんからマジ頼んます~」


 両手を合わせ拝む旭に、


「あ~そうだったんだ。うん、分かった。じゃあこれ、はいっ」


「あざ~すっ」


 そう静華に貸してもらい休み時間内に字が汚い部分だけ修正しようと、そのノートを受け取ろうとした時、


「はいっ、ダメ~」


 受け取ろうとしたノートが横から奪われる。ばっと奪った人物に顔を向けるとそこには恵愛がノートをひらひらとさせながら立っていた。


「ダメだよ静華っ。これじゃ~旭君の為にならないでしょ?」


「恵愛ちゃん。でも旭君ちゃんとノートとってたんだよ? ただ最後の部分だけ字が汚くなったから、その部分だけ修正するって」


「うんっ! 授業ちゃんと聞いてたっ! だから恵愛さん、どうかノートをこちらにっ!」


 そう言い旭はノートを取ろうとするが(かわ)される。


「だからダメだってばっ! もししっかりと授業を聞いていたのならノートもちゃんと取ってる筈。取れてないのは旭君がしっかりと先生の授業を受けていないから眠気が襲ってくるんだからねっ」


 何も言い返せない旭を見て「分かったよね? それじゃあ、はいっ」っと静華にノートを返す。


「ブゥブゥ~恵愛冷たいわ~。別にいいやん少しくらい~」


「もうそんな事言わないのっ! 今日はこの学園に旭君が来た初日なんだからもっとシャキッとしないとっ、ねっ?」


 ぐでぇ~っと机に突っ伏したまま不貞腐れる旭。それに対し恵愛はまったくも~っと思いながらも旭の肩を持ちしっかりと座らせ、


「ほ~らっ、今度静華と私とで、旭君と椿に勉強教えるから不貞腐れないのっ……どうせ椿もちゃんとノート取ってないだろうし」


 恵愛は廊下側の真ん中の席に居る椿に視線を向けた。そこにはすやすやと眠っている椿の姿があり、恵愛は「はぁ~」っと深い溜め息を吐く。


「でっ、それでいいっ?」


「うんうんっ、さすが恵愛さんっ! 静華さんもありがとうございます〜」


 静華と恵愛の手を取り頭を下げる旭。


「はぁ~まったく調子が良いんだからっ」


 肩を落とす恵愛に苦笑いをする静華だった。


 それから次の三時間目が体育と言う事で椿を起こし体育館に向かう四人。


 そこでふと旭は、


「あれ? 着替えは?」


 その旭の疑問にまだ眠たそうな椿が、


「わすれてない? ほらっ、リミッターがあるし、別に今着替えなくてもいいんだよっ」


 旭はぽんと手を叩き、


「あっそっか、リミッターがあるわな。素で忘れてたわっ」


 そして校舎を出て少し歩いた先に体育館はあった。しかし、それを見た旭は体育館がある場所をキョロキョロと見回す。


「えっ、体育館どれっ? 何か同じ様な建物がいっぱいあるんやけどっ?」


 驚き見回し続ける旭を見ていた三人は笑いながら、


「旭君、実はこれ全部体育館なんだよっ。凄いでしょっ」


 何故か恵愛は腰に手を当て自慢げに言った。


「へぇー。でも凄いんは凄いんやけど、こんなに体育館いるん?」


「普通の体育館ならあんなには要らないんだけど、あの体育館はフェアリーホルダー専用でね。大会がある時の個人練習やトレーニングなんかの為に使うから、これだけあった方が皆も喧嘩せずに済むでしょ? 後、この体育館は許可を取ればいつでも使っていいんだよっ」


 ふ~ん。っと一応納得した旭は次に更に後ろにある建物に指を指す。


「じゃあその後ろの馬鹿でかいドームとスタジアムみたいなのがあるんやけど、あれは?」


「あれ? あー、あれは普段は使えないんだけど学園の生徒全員が強制的に参加させられる、学年別の生徒ランキングを決める学園内の大会だったり、他校合わさっての大きな大会の会場に使われたりするの」


「強制的にって、言わば運動会や体育祭みたいなもんか……。でも、ええやん。何か楽しそうやし」


「確かに旭君はそうゆう催し物好きそうだよねっ」


 その静華の言葉に「当然っ!」っと答え、


「あたしもこ~ゆうの大好きっ! 何か燃えるしっ!」


「おおっ! そうやなっ! じゃあその大会とやらが開催されたら皆ライバルってやつやなっ! 椿っ! その時は手加減せえへんでっ!」


「上等っ!」


 二人で盛り上がる旭と椿を苦笑いをしながら眺める静華と恵愛。


「はいはいっ、もう行かないと体育に遅れちゃうよっ。ほらほら行くよっ!」


 恵愛は盛り上がっていた二人を急かし、1と書かれた体育館に入って行く。


 そして体育館に入って見ると、もう(ほとん)どの生徒達が集まっており、このクラスの担任である美和はまだ来ていない様であり、クラスメイト達は友達同士で走り回って遊んでいたり、お喋りをしながら笑っていたりと思い思いに行動していた。


 旭達もとりあえず四人で固まって担任の美和をお喋りしながら待つ事にする。


 それから少し経った頃ぐらいに美和が体育館に現れ、


「ごめんね~少し遅れちった~」


 テへっとウインクをしながら自分の頭を軽く小突く。


(それ止めといた方がええって言ったのにっ……皆どうしたらええか困ってるやん)


 っと静かになっている同級生達を見ながら溜め息を吐く。


 そんな事など気にしていない美和は「はいっ、前に並んで並んで~」っと自分の前に並ぶ様にと言い、


「それじゃあ、とりあえず体操服を着用しっ、待機しててねっ」


 美和に従い生徒達は自身のリミッターを使い体操服を着用していく。見た目としては普通の体操服とは異なり、上と下が繋がっていて、手から肩の部分と、足から膝までの部分が無い全身スパッツの様な体操服であった。


 男女共に黒が主になっている。両横の太股から2つのラインがあり、そのラインの右側は左側の肩まで伸びていき、左側は右側の肩まで伸び、肩に伸びたラインは両方とも曲がり、首まで伸びているデザインであった。


 男女の違いは色。男子は青で、女子は赤であるが、旭だけ色が違う。旭は白いラインであり、今回も美和が何かしらしているだろうと旭は予想していたので、文句は言わず溜め息をするに留めのであった。


 それから全員の生徒達が体操服を着用した事を確認した美和は、体育座りをして待っている生徒達に、

 

「今日は1対1での模擬戦を行いま~す。では~適当に対戦相手を選んでくださいなっ」


(おいおい、適当ってなんやねん……)


 クラスの生徒達は美和の指示通りに対戦相手を決めて行く。


(えっ!? あれで誰も文句言わんと従うんやっ! ま~でも、その方が清光と対戦組みやすいからええけどね……)


 それから旭は一人で壁に寄り掛かり腕組みをしている清光の方に行こうとしたその時、


「で~す~が~旭だけは対戦相手が決まってますっ! それはお姉ちゃんですっ!」


 そんな美和のふざけた発言を聞いた旭は「異議ありっ!」っと某ゲームのキャラクターがする様に美和に対して人差し指を突き付けた。


「僕もう対戦相手決まってるんよっ。だからねーちゃんとは模擬戦せえへんの」


「え~っ! お姉ちゃんと模擬戦しようよ~私の体触り放題だよ~」


 旭はぶるっと震え「なにいきなりキモイ事いってねん!!」っと体を擦りながら怒鳴る。


 しかし同級生男子にとっては綺麗な先生を触り放題などと聞かされれば「じっ、自分が先生と模擬戦をっ!」「いえいえ、俺が先生とするんだっ!」「先生の体は俺のモノだ~っ!」などと男子の殆どが騒ぎ出し、それを女子は冷めた目で見ていたが、男子は気付いていない。


「だ~めっ、この体は旭のものなんだからねっ」


 両肩を抱き腰をくねらせる美和。その姿はどこかのまいっちんぐな先生の様であった。


「だからきもいねん! その体はねーちゃんのものであって僕のものやあらへんわっ! あと男子共っ! うちのねーちゃんにエロい目すんなっ! マジキモイし、そろそろ女子の冷たい目に気付やっ!」


 肩を上下させながら旭は荒い息を吐いていた。


 男子は旭の言葉で女子の冷めた目を見て即座に静かになり、美和は何も無かった様に手を叩いた。


「はいっ! 冗談はここまでにして、そろそろ始めましょうかっ」


「最初から普通にしようや~……」


 もう疲れたと言いたげに深い溜め息を吐く。


 旭は清光の所に向かい「よっ」っと手を上げ挨拶するが、清光は鼻で笑う。


「よく逃げずに来たものだな……。今日が貴様の命日になるとも知らずに……」


 芝居じみたセリフを恥ずかしげも無く言葉にした後、喉を鳴らす様に笑いながら先程の教室の時と同様に、顔を手で隠し、人差し指をこちらに向けていた。


「あっ、うん……」


(こうゆうのって、どう反応したらええんやろか……)


 少し戸惑いながらも相槌を打ったが清光からは反応が帰ってこず、首を傾げる旭。


「よく逃げずに来たものだな……。今日が貴様の命日になるとも知らずに……」


 今言った言葉を繰り返し言う清光。


(あ~なるほど。こっちもあーゆうセリフで返して欲しいって事やろな……。でもどうしよ、何言えばええやろか? まあええわっ適当にかっこいいと思う言葉を並べればええやろっ)


 とりあえず旭は自分が格好いいと思うポーズをしようと、左手の手の平を見せる様に軽く前にだし右手は腰に置き足を広げて、それから思い切り眉間に皺を寄せ、睨み付けて歯を見せながら口を開く。旭が思う格好いいポーズとは金剛力士(こんごうりきし)、いわゆる阿吽の像であり、その片方である阿形像(あぎょうぞう)である。


 清光は旭のポーズと自分に向けられる凄い形相(ぎょうそう)にビクッとなりながらもポーズは崩さなかった。旭は清光にビビられている事も知らずに先程の清光が言ったセリフの返事をしようと1歩前に出る。それはまるで歌舞伎の様であったが、


「こぉこでっあったが~あっ、100年目ぇぇぇっ! ここで決着をつけようぞぉ〜!」


 セリフ自体も歌舞伎の様にしようと思ったのであろう旭であったが、どうにも変である。後ろの方で椿が腹を押さえ寝っ転がりながら爆笑していた。


 椿の笑いで自分が凄く恥ずかしい事をしていると自覚し旭は顔が真っ赤になり、清光も突然ポーズを止め、


「何かごめん……俺が悪かった」


 などと謝るので更に恥ずかしくなった旭は、


「絶対ボコボコにしたるからなっ! 覚えとけよマジでっ!」


 真っ赤っ赤な顔で恨み言を言う旭。


 それからは真面目に四十名居る生徒達が二人一組となって二十組が出来上がり、それから模擬戦の為に生徒達は一時待機。美和は体育館の制御室に向かい、その制御室から生徒達に、


「ちょっとフィールド起動させるから、待っててね~」


 ただ通常より大きいだけだった体育館は突如として変化し始め、体育館の壁や天井が何か硝子の様な物に覆われていき、床は鉄の様な素材に変化し、その上に大きな四角い台が六つ出来上がっていく。この台は今から行われる模擬戦のフィールドである。


 この体育館は大きなリミッターを建物にした様なものであり、フェアリーホルダーのリミッターを解除出来る数少ない施設でもあった。しかも、色々とフィールドを変化させる機能も付いている。先程、硝子の様な物と表現した物はフェアリーの強力な力で建物が破壊されない様に防ぐ役割と、外に居る者達に危険が及ばない様に貼られた、いわゆるバリアーなのだ。


「準備はおっけ~、それじゃあ並んでる順でフィールドに入っていってねっ」


 六組の生徒達がそれぞれのフィールドに入って行き、模擬戦が始まった。

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