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九陽学園2

 旭は今日が始業式の為か、いつもより早く目覚め、鍛練とランニングも既に終わらせていた。


 そして自分の部屋のシャワーで汗を流し、体を拭いて、ボクサーパンツのみを穿く。


「制服着用っと」


 この制服姿は好きではない旭だが、何故か制服を着用し、ワクワクそわそわと、落ちつかない用にグルグルと部屋を歩き回る。


「今日からやねんな~。今は6時半過ぎか。そろそろ食堂開くし下に行っとこかな~……。よしっ! 下いこっ!」


 即座に部屋から出て、階段を使い一階の食堂に向かう。


「旭君、おはようございます」


 その声に振り向くと、静華(しずか)恵愛(あやめ)、そして椿(つばき)の3人も制服姿に着替えており、旭と朝の挨拶を交わす。


 静華・恵愛は白い長袖シャツに赤色チェック柄のプリーツスカート、首には赤いチェック柄リボンがあり、そして、黒のブレザーのボタンをきっちり留めていて、真面目な感じの2人。椿だけはブレザーのボタンは留めていない。


「おっ、みんなも早速、制服着てるやん。着てるの自分だけかと思ってたわ。てか、女子はスカート赤やねんな~。でも、みな似合ってるで」


「旭には勝てないよね~」


「本当に旭君って可愛いよね。本当に男の子なの? 正直疑っちゃうんだけど……」


「うん。私、旭君に勝てる気がしないよ……」


 ニヤニヤと笑いながら言う椿に、恵愛は旭を上から下まで見て首をかしげ、静華はしょんぼりとしていた。


「男に対してその発言やめてくれへん!?」


 3人の言葉に旭はがっくりと肩を落とす。


「皆も朝飯食いに来たんやろ? 一緒に食えへん?」


 時間はもう朝の7時になっており、食堂は開いていた。


「賛成!」


 と椿は手を上げ、他の2人も笑顔で頷く。


 そして4人は食堂に入り、カウンターに向かった。


 するとカウンターから声をかけられた。


「おや、おはようさん」


 食堂のおばちゃんの挨拶に、皆も挨拶を返す。それから今野(こんの) 紗英子(さえこ)は皆の制服姿に両手を1回打ち合わせた。


「あっ、そう言えば今日が始業式だってね。それにしても旭君、その制服よく似合ってるよ~。ほんと可愛らしい」


 紗英子は旭が穿いている物をじーっと見ていたが、直ぐに顔を上げ、


「……うん、スカートも似合ってるよ~」


 と、ニッコリと微笑んでいた。


(今の()って……)


 間が少し空いたが、旭は気にしない事にする。それよりも、スカートでは無い事を言おうか言うまいか悩んでいた。これからも色々な人にスカートと間違われ、その度にスカートでは無いと言い続けるのは流石に疲れると思った旭は、その事を言わずに顔を引き攣らせ、笑う。


「えっと……どうも、ありがとうございます」


 その旭の反応に椿は笑いがこみ上げてきたが、下を向いてぷるぷると震えながら我慢していた。


 この食堂では日替わり定食A~Dしかメニュー無い。しかし、400円と安く、値段の割にはボリュームがあり、毎日定食の献立(こんだて)も変わるので飽きがこない様にされていた。学生達はカウンターで注文し、バーコードリーダーの様な物が近くにあり、それをリミッターに近づけると、注文した定食の支払いが完了する。


 フェアリーホルダーになると国から月々5万円が支給され、そのお金はリミッターで使う事ができる様になっている。要塞都市東京内ならリミッターさえあれば困る事はない。


「今日は~っと……お、鯖の煮込み定食あるやん。今野さんCの日替わり定食でお願いします」


 あいよ! っとおばちゃんの声が響く。旭はバーコードリーダーを右手のリミッターに近ずけると、ぴっ、と音がでた。旭は音がなり、少しホッとする。


「えっと、これでええんやね?」


 後ろに居た恵愛に確認をとる。


「うん、それでおっけーだよ」


「良かった~。やり方は皆の見てたから分かるけど、初めてやからちと緊張する」


 恵愛は同意する様に頷き、


「だね。初めて触る機械ってなんか緊張するよね」


 と笑っていた。


 そして旭以外も注文をしていく。


 Aのハンバーグ定食を恵愛は頼み、椿は旭と同じくC定食。静華は卵焼きにソーセージ、少なめのきつねうどんにおにぎり2つ、後漬物がついたB定食を頼んだ。それから、それぞれ飲み物を取りに向かう。


 寮の食堂にはドリンクバーがあり、200円で飲み放題になるが、定食を頼むと、それが無料で飲み放題となる。それから4人は空いてる席に向かい、座ってから全員手を合わせて食べ始めた。


「そう言えば恵愛って首にリミッター付けてるけど、付けるとこって決まってるん?」


「ん? うん、そうだよっ。旭君、右手と左手に紋章みたいなのあるよね? この紋章の事をフェアリークレストって言うんだけど、リミッターはできるだけ紋章の近くにある方がフェアリーの力を抑えやすくなるの。多分だけど旭君は両手に紋章があるからリミッターを2つ付けてるんだと思う。でも正直デュアルコントラクターなんて初めてだし、私には分からないけどね。それで、私の紋章は胸元にあるんだけど、その胸元に近い首にリミッターを付けてるんだよ」


「へぇ~、紋章の位置によって、リミッターの付ける場所が決まるんや……。なるほど。よう分かったわ」


 旭は自分の両手の紋章を眺め、頷く。


 それから数分が過ぎた頃、旭の背後に立つ人物がいた。


「あ〜さ~ひ~」


 その人物は旭の耳元で息を吹きかける用に名前を呟く。


「うひっ……って! ねーちゃん何するん!」


 こんな事をするのは姉ぐらいだと、勢いよく後ろを振り向いた。


「お姉ちゃんが迎えに行くって言ったのに~。なんで部屋に居てないんよ~」


 不機嫌だと主張する様に、頬を膨らませながら旭を見つめる。


「いやいや来んでええって言ったし。それに、学園行く前に鍛練もしたいから、ねーちゃんの相手とかすんの面倒臭いわ」


「旭がすごく冷たい……皆どう思う? 旭はお姉ちゃんに優しくしないといけないと思うよね~?」


 恵愛、静華は苦笑いになる。しかし椿はニコニコと笑いながら、


「うんうん、そうだよ旭~。お姉さんには優しくしないと。ね~先生」


 そして、美和と一緒にハモる様に「「ね~」」っと言った。


「あ~、朝っぱらからめんどくさいねん! で、ねーちゃんは何しに? 朝飯でも食いにきたん?」


「う~ん、旭や皆と一緒に朝飯食いたいけど、皆より先に学園に行かないと行けなくてね。先生は忙し辛いんよ~。それでちょっとの間会えないから妹分じゅうで~ん」


 背後から抱きつき、旭に頬ずりを開始する。


「弟っ! あと鬱陶しいわ! それより早う行かなあかんのやろ? なら、もう行き~や~。てか、抱きつくのと頬ずりやめいな!」


 姉の頬ずりから逃れようと、手で引き離そうとするが、


「あとちょっとだけ~」


(うぜぇ~)


 なかなか離れない姉をそのままに、もう面倒なので無視して食事に戻る旭。そのまま姉は嬉しそうに頬ずりを続けていた。その様な2人のじゃれ合いを、皆は苦笑交じりに眺めていた。


(めっちゃみんな見てるし! このアホなねーちゃんの所為(せい)で、ほんま恥かくわ……)


 少しの間ベッタリとしていたが、どうやら満足したのか、旭を解放する美和。


「妹成分充電完了! それじゃあ旭、皆もまた後でね~」


 面倒臭いからと、妹という言葉にツッコまずに姉に手を上げ、見送る。


「うん。気おつけてな~」


「行ってきま~す」


 恵愛達も美和に手を上げ、見送った。


「あ~やっとうるさいのが行ってくれたわ~」


「ダメだよ旭君そんな事言っちゃあ。血の繋がったお姉さんなんだから」


 旭の言葉に対して、恵愛は少し笑いながら注意する。


「旭と先生って本当に仲良いよね。普通あんなに弟ベッタリなお姉さんって、なかなかいないよ~」


「でも良いな~。私もお姉ちゃんやお兄ちゃんが欲しかったな」


 ケタケタと笑う椿、静華は何だか羨ましいそうにしていた。


「そんなええもんちゃうよマジで。他の姉弟は知らへんけど、(うち)の姉しょっちゅうベッタリしてきて、ほんま疲れる。あの姉のテンションには、ついて行かれへんわ」


「え~? あたしは先生みたいなお姉ちゃん居たら毎日楽しくすごせそうだけどな~」


「確かに椿とは相性ええやろな。テンション高い系同士でうるさいやろうけど」


「うるさいって、それ酷くない~?」


 笑いながら旭の脇腹をちょんちょんとつつく。


「やめい、そこマジでこしょばいねんて」


 旭は腹をガードし、椿はガードの隙間を狙う。そんな2人のじゃれ合いを見ていた恵愛と静華も楽しそうに声にだし笑う。


「そう言えば、さっき女子のスカートは赤だって思ったみたいだけど、実は女子は赤、男子は緑色とかって決まってはいないんだよね。今日みたいに始業式の日とかは、女子は赤で男子は緑の制服じゃないといけないんだけど、それ以外の普通の日は別にどんな色でも、どんな制服でも構わないんだよ。それがこの学園のいい所だね」


 椿の言葉が理解出来ず、


「ん? それって、どう言う事なん?」


 と聞き返す旭。


「先生からリミッターの事とか学園の事って説明されなかった?」


 その恵愛の言葉に、


「あ~うちのねーちゃん基本面倒くさがりやし、忘れっぽいから、もしかしたら説明はしょったか、忘れてたかしたんやろ。僕も面倒くさがりやから言えた事やないけどね」


 と苦笑い。


「よしよし、ではあたしが説明してあげようではないか!」


「おお! ほな頼むわ」


 旭達は拍手し、椿はどうもどうもっと片手を軽く上げて拍手に応える。


「ではでは~。今あたし達が着てる制服って、元は実体の無いデーターなんだよ。そのデーターを実体化させる事が出来る装置が出来て、小型化にも成功した。それを取り入れたリミッターを、フェアリー治安部隊に持たせ、出動時間の短縮や治安部隊専用スーツのコスト削減ができるってことで国から許可され、今や治安部隊はもちろん、全フェアリーホルダーのリミッターにその装置が付けられ、今に至るって感じかな」


「て事はリミッターを外したり、何かの故障で機能が止まれば制服が消えたりするって事なん? これって元はデーターなんやろ?」


 その旭の疑問に恵愛が答える。


「それは大丈夫だよ。何かしらの故障で装置が暴走すれば分からないけど、そのデーターが1度実体化すると消える事は無いよ。言うなれば3Dプリンターみたいなものかな? 装置の機能を使って制服を分解し、元に戻す事は出来るけど、その装置が止まれば分解もされないって事かな」


「へぇ~このリミッターってめっちゃ最先端な技術で造られてるんやな~……。んで、今の話を聞くと九陽学園の制服のデーターが、このリミッターの中には色々と保存されてるって事なんやな」


「その通り!」


 椿はビシッと旭に指をさし、先ほどの説明に新たに付け足した。


「色々な制服のデーターが入っていて、そのリミッターの中に入っている制服のデーターなら、どれを着ても何も言われないんだよね~」


「なるほどな~……。って事はや」


 旭はリミッターのボタンを押す。


「制服ズボン着用」


 しかし、変化は無く、


『その様なデーターは、ございません』


 と、リミッターから音声が流れた。


「何でやねん! それじゃあ、ジャージ下着用!」


『その様な組み合わせは、許可されていません』


「これはねーちゃんや! 絶対ねーちゃんの仕業や! 何やねん、組み合わせが許可されてないって!」


「残念だったね~」


 旭の肩に手を置き慰める椿。


「おい、顔が笑ってるんやけど……。ま~何となくそうやろうと思ってたけど、でもあのアホ姉、何考えとるんか分からへんわ」


 苦笑いの恵愛や静華、口を押さえ笑うのを我慢している椿。そして恵愛は話を変えようと、


「あ、そう言えば旭君ってお風呂入る時、リミッターはどうしてる?」


「えっ? リミッターは外されへんし、ねーちゃんから防水やから大丈夫って聞いてるから、そのままリミッター付けたまま洗ってる感じやけど」


 うんうんと頷きながら聞き、


「そうだよね。リミッターの緩め方知らなかったら、そうするよね」


「へぇ~、リミッターって緩める事できるんや」


 笑顔で旭に頷く恵愛。


「うん。流石に外す事は出来ないけど、がっちり付いたリミッターを緩める事は出来るよ。それで緩め方なんだけど、制服着る時と同じ様にボタンを押して、リミッターに命令するだけ。この様にね」


 そう言い、首に付いてあるリミッターのボタンを押す。


「リミッター拘束解除」


 すると、リミッターの輪が広がり、首の一番下まで落ちた。


「ねっ? これなら洗いやすくなるでしょ?」


「おお! これはええ事聞いた。これやったら寝る時も楽になるわ」


 でしょ? っと、恵愛は笑顔で言う。


「外せないのは不便やけど、リミッターってほんま便利な道具やな。充電も5日間はせんでいいみたいで楽やし、充電も10秒位で完了できるから、面倒に感じへん」


「うん、でも充電は毎日した方が良いと思うよ。もし充電が切れたら治安部隊に捕まっちゃうから」


 静華の言葉に「マジで!?」っと驚く旭。そう皆で会話し笑い合っている間に、学園に向かう時間帯になっていた。

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