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凡人が才能に目覚め異世界を征したそうです  作者: オメガω
1章 修行編
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1話 野薔薇の花開く頃 (1)

神谷(カミヤ) (トオル)18歳 高校3年生。子供の頃から顔が不細工でもないし、スポーツができないわけでもなく、勉強が苦手なわけでもなかった。だか、他の人に比べて抜きん出たこともなかった。才能と呼ばれるものがないのだ。俗に言う凡人と言われる、そんな存在が俺だった。


5月の上旬、野薔薇(のばら)が開花し始める頃、トオルはいつものように通学路を歩いていた。


毎日の通学で通る見慣れた横断歩道が見えた。信号は止まれを示す赤。この道路は都市のど真ん中を通っているため、まだ朝というのにかなりの数の車が走っている。一本踏み出すだけで簡単に死んでしまうだろう。





別に死んだら金持ちの子に生まれ変わりたいとか、特殊能力を手に入れて異世界に転生したいと思っているわけではない。ただ、毎日同じ日々を送る生活に嫌気が差していた。何か一直線に進んでいける才能が欲しかった。だから生まれ変わりを信じる俺は死に惹かれた。


俺がまだ8歳の時だった。世界中の様々なところでゲートと呼ばれる異世界の門が開いた。門からは異形な姿をした魔物が現れ、人を襲い始めた。

ニュースでは連日のようにこのことを放送し、世界中の誰もが恐怖した。


まだ、子供だった俺にはこの恐ろしさがわかっていなかった。その頃から周りの奴らと比べて目立った物がなかった俺は、自分が魔物達を倒し世界のヒーローになる存在だと思い込んでいた。 だが、異世界との門が開いたところで俺には何の影響ももたらさなかった。





いつの間にか信号は青に変わり、人々が道路を渡り始めていた。また、一歩を踏み出すことができなかった。俺には死ぬ勇気もなかった。


見慣れた学校に着き、いつものように靴を履きかえ、いつものように教室に行き、いつものように席に着く。そんなトオルに話かけてくる者もいたが、いつものように適当に返事をして済ませた。


いつものように朝礼がはじまる…と思ったが来たのは担任ではなく学年主任の先生だった。


「今日は担任はインフルエンザで休みです。

なので、 担任が担当する3.4時間目の授業は自習とします。 」


喜ぶ声がちらほら聞こえる中、体育以外の授業の時間を寝て過ごす俺には関係の無い話だ。

そう思って眠りについたのだった。


◆ ◆ ◆


キャァァァァァァァァァァァァ


突然の悲鳴で目が覚めた。


「な、なんだっ」


顔をあげるとクラスメイトがいない…


「ってなんだこれっ なんで誰もいないんだよ。まさか寝すぎて下校時間を過ぎたのか!!?」


時計を見るが11時だった。下校時間にはまだ時間がある。よく見ると周りには筆記用具や教科書が散乱していた。


教室を出るが廊下にも人の姿はない。一応隣のクラスも覗いてみるが結果は同じだった。


「こういう時は、まず夢じゃないかを確かめる」


自分の頬を思いっきり捻る。


「いだだだだぁぁ

と、とりあえず夢じゃないことは確認できた。

んじゃあ次は状況把握だな。三階から見て回るか」


この時、トオルは普段とは異なるこの状況を楽しんでいたのだった。誰もいなくなってしまった学校…高3にして未だ厨二病を煩わっているトオルには最高に(たぎ)る状況というわけだ。


「三階は異常なしと。」


三階を一通り見て回った時だった。


キャァァァァァァァァァァァァ



再び女性の金切り声が廊下に響き渡った。その悲鳴は二階から聞こえてくる。


「二階かっ」


二階への階段を降り、慎重に二階を見回る。途中、二階の奥の部屋から何やら怪しげな物音が聞こえてきた。


急いでその音のするところに行くとそこは化学室だった。さっきからの怪しげな物音はどうやらここから聞こえてくるようだ。


「くせーーー何の匂いだよ。

鼻が曲がりそう。薬品の匂いじゃないよな…」


その匂いはこの部屋から漂ってくる。

扉に手をかけようとした、その時、身体が金縛りにあったかのように固まる。体の細胞がこの先に進みことを拒否しているようだ。


しかし、恐怖よりこの中に何がいるのかという好奇心の方が勝る。


「この中にいるのは美少女。この中にいるのは美少女。」


そう願いながら扉を開いた。


初めに見えたのは、、


血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血

血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血


部屋一面に広がる大量の血だった。


次に見えたのは、

目がトンボ、手にはカマキリのような2本の鎌、胴体はムカデの姿をした化け物が人を食らっている姿だ。


ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ


頭で考えるよりはやく身体がこの場から逃げていた。廊下を走って走って走りまくる。


「あれはなんなんだよ!!!?」


その時、ふと前に見たニュースの映像がよぎった。



「ま、まさかあれが魔物なのか…」


俺が子供の時、魔物を倒しヒーローになると思い込んでいたことを思い出す。


「相手が魔物ってわかってて逃げるだけでいいのかよ…これは、俺に眠る才能を開花させるためのチャンスかも知れないんだ。

戦え俺!!!」


ちょうど横にあった掃除箱から箒をとる。

後ろを向き追いかけて来るだろう魔物を迎え撃とうと箒を構えた。


しかし、トオルの全身は震えていて、意志とは反対に身体が動かない。さらに、こんな箒でなんとかなるものなのかと弱気になってくる。


「俺はヒーローになるんじゃなかったのかよ……。」


突然、「ゴッ」という音と共に鋭い痛みが頭に走り、壁に叩きつけられた。手から唯一の武器である箒が離れる。気づかないうちに魔物が後ろに迫っていたのだ。


ぶつけた頭がズキズキと痛み、じんわりと温かいものが流れ出ているのが感じられる。意識が朦朧(もうろう)とする。


薄らと目を開くと異形な姿をした魔物が近づいてくるのが見えた。魔物は二つの鎌を振り上げて、

もうダメだ、俺はこの魔物に殺されるんだ…

そう思った時、、、


――――――――ピカッ


突如、トオルと魔物との間に白い光とともに門のような物が現れる。


さらに、そこから一人の人間が出てきた。

身長は俺と同じくらいだろうか。黒いマントを頭から被っているため誰なのかわからない。かろうじて体格から男性であることがわかる。


カタカタカタカタカタカタ

魔物が口を震わし音を出して威嚇する。


しかし、黒マントの男はすぐ目の前に魔物がいるのにそれに何の恐怖を抱く様子もなく、こちらを向き呟いた。


「頑張れよ……※※※※※…………。」



そこでトオルの意識は暗転した。


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