二の巻
ひとまずお茶でも飲んで落ち着こう。
なんか話も終わらないので茶を所望する。
私の願いが通じたのか、東島さんがお茶を出してくれた。
「で、早苗を助けてくれたのが如月さんなんだ。」
生徒会長がイケメン3人に状況説明をしている。
3人はまたか、と顔をしかめている。
「まあ、それでだ。如月さんはとてもいい性格もしているし、成績も優秀だから生徒会の手伝いを頼もうと思っていたところなんだ。」
いや、そんな簡単に決めたらダメなやつでしょ。
他3人もちゃっちゃと反対しなよ。
そんな得体の知れないやつダメだとかさ。
「いいんじゃな〜〜い。」
「そうだな。」
「一緒に頑張ろうね、如月さん。」
………おい。
何簡単に賛成してんだ、こら。
東島さんも何嬉しそうにしてるの?
「反対意見もないことだし、如月さんお願いできるかな?」
生徒会長、貴方もいい性格してますね……。
断るのも面倒くさいな。
まあ、暇つぶし程度にだったらいいか。
「わかりました。出来る範囲でお手伝いします。」
「キミならそう言ってくれると思ったよ。では、改めて自己紹介を。僕は生徒会長の東島 健吾。早苗の従兄弟なんだ。よろしく。」
「んじゃ、次は俺ね〜〜。俺は樋口 透だよ〜。よろしくね〜〜。」
「俺は鬼頭 孝介だ。」
「僕は小岩 真。同じクラスだからいろいろ困ったことがあったら言ってね。」
あー、人の名前覚えるの苦手。
上から腹黒、のんびり、無口、眼鏡でいいか。
とりあえず私も名乗るのかな。
「えっと、如月 瑞樹です。よろしくお願いします。」
「じゃあ、自己紹介も終わったから事情説明するね。まず、なんで早苗が標的になっているかだ。まず、一つ目が顔がある程度整った生徒会役員と一緒に仕事をしているかららしい。悪意のある噂が広まって、生徒会役員全員と個別で仲良くしていると思われている。二つ目は早苗の母がいわゆる庶民出ということが気に入らないということだ。東島の家は代々続く名家と呼ばれていてね。勿論東島の家では早苗の母のことを悪くは言っていないのだが、何故か関係ない部外者が口出ししてきてね。その部外者の縁者がこの学校にも通っていて嫌がらせしてくるんだよ。」
うわ〜、何それ。
マジでうざい。
「あの〜、名家と言われているなら生徒会長が止めれば嫌がらせってなくなるんじゃないんですか?」
当たり前の質問をしてみた。
むしろ何故止まらん。
「それなんだが…事あるごとに止めてるし、注意、警告もしている。だが、悪知恵が働くのか1番の原因の奴がやった証拠が出てこないんだ。下っ端ばかり捕まえても意味がない。」
…使えない。
脳内で暴言を吐きながら考えた。
私を生徒会の手伝いにさせるってことは、きっと囮なのかなと。
道理で他のメンバーが反対しないはずだ、私が手伝うことを。
まあ、別にいいけどね。暇つぶしには。
「では私が生徒会の手伝いをするという事を大っぴらにすればまた嫌がらせしてくるんじゃないですか?今度は私にね。まあ、それが目的なんでしょうからいいですよ。」
私の言葉に他の人は難しい顔をしている。
東島さんは泣きそうな顔だ。
「確かにキミのことを知らせれば嫌がらせはあると思う。だけど、それを目的にしているわけではないよ。キミは早苗のことを知らないのに助けてくれたんだからね。そういう人だから生徒会に誘ってるんだ。もちろんキミの強さも魅力だけどね。」
ふーん、とりあえずはそういうことにしておきますか。
人を疑うのは私の癖みたいなものだからね。
いきなり信用なんて普通無理だ。
この日は解散になった。
詳しい手伝い内容は後日改めてとのこと。
ーー次の日
朝登校して教室に入ると視線を感じる。
昨日までは空気のような扱いだったのに。
視線を感じる方を見ると女子が何人か集まってこちらをチラチラ見てる。
ふーん、昨日の今日なのに情報が早いことで。
大方私が生徒会の手伝いをする事がばれたのかな。
という事は近々嫌がらせがくるかな。
ちょっとワクワクしながらその時を待った。
ーー放課後
生徒会長から昼休みにメールが来ていて放課後生徒会室に来てほしいとのこと。
実は昨日連絡手段としてアドレス交換してみた。
実に面倒だけど約束は守らねば。
さて、向かいますかと席を立ったところで声をかけられた。
「如月さん、お話があるので来て下さい。」
話かけてきたのは見たことのない女子だ。
名前を覚えるのは苦手だけど人の顔は覚えている。
クラスメイトではなさそうだ。
しかし、人の都合も聞かずに来いとは随分だね。
「どなたかわかりませんが、この後用事があるので無理です。」
見知らぬ人は機嫌が悪くなったようだ。
眉間にシワが寄っている。
「いいからついて来て!」
声を荒げて私の手を無理矢理掴もうとしてきた。
ヒステリックはいかんよ。
それにこんな人目のあるところで考えなしだな〜。
こんな知らない人の相手はしていられない。
時間に遅れるのは嫌なのだ。
「もう一度言います。ちゃんと聞いて下さいね。用事があるので無理です。それからあなたの事知りません。名乗りもしない人にはついて行けませんよ。では、遅れるのは嫌なので失礼します。」
私はそう言うと掴もうとしてきた手をすり抜けて、廊下に出た。
そのまま騒いでいる声をBGMに廊下を早歩きで生徒会室に向かった。
走ると怒られるからね〜。