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独生独死は必定なり。  わが人生瞑想ノートより

作者: 舜風人

この世に生まれたとき、誰かと一緒だったか?


双子さん以外は皆一人で生まれてきた。

そうして兄弟やら姉妹やらいたとしても皆別人格。

あなたのクローンではないから、

考えも違うし、生き方だって当然違う。

ましてや人生観も全く違う。


そうして皆一人でこの世を生きていく。

その間、気の会う人にも巡り合うかもしれない。

あるいは全く考えの違う人と出会って苦しめられるかもしれない。

友情を育める友が見つかるかもしれない。

あるいは信じていた友に裏切れるかもしれない。


ある日あなたの前に一人の魅惑的な異性が現れるかもしれない。

あるいは、結局何の出会いもなく中年となってしまうかもしれない。

運よく結婚できても、それは、楽しいのは数年だけ、、、、、。


家庭を営み家族を養う苦労は底知れないだろう。

連れ合いの離反もあれば、家族の病気もあるだろう。

いとしい子供が死ぬという悲劇だってあるかもしれない。


あるいは待ち望んだ子が重い障害を持って生まれてくるかもしれない。

反対に幾ら待っても子供が出来ない夫婦かもしれない。


家庭を背負って働くお父さんだって大変だ。

リストラ、パワハラ、左遷、社内いじめ、職場鬱、過労死、借金地獄、自殺、何だってあるのがこの浮世のさがだ。


この世は天国ではない。

四苦八苦、四百四病、

あらゆる困難、苦痛が用意されているのもこの人生道である


そんな人生道を夫婦二人、

結婚前までは赤の他人が何の故あってか、巡り合い、このえにしを結ぶというのも、摩訶不思議なり。

そうして二人で手に手をとって歩みし、夫婦道、

やがては花の咲くこともと、淡い期待は全て裏切られて、


枯れ木、朽木の夫婦人生。

何とか子供を育て上げれば待っているのは自分の、老化のみとはそりゃ余りにひどすぎませんか?

子供がいなくなった我が家は老夫婦のみ。


二人そろって、成人病、二人で交互に病院通いとは、、、、。

夫は退職年金暮らしならまだマシ。


60過ぎたって食うために老身に鞭打って、薬飲みのみ働かねばならなかったりする人だってたくさんいる。


妻は過去の、子育ての思い出に生きて、からの巣症候群。

あるいは、更年期障害で、半ば寝たきり。しらがと、しわだらけで

二人が出会ったときあんなに若くててぴちぴちだった、妻もいまは、すっかりおばあさん、


夫だってアンナに若くて理想に燃えて未来を語っていたのに、今は、

頭は真っ白髪で、腰も曲がり、咳き込みながら、

持病もちで半引きこもり生活とは、、、、。


そうして思うのは

夫は、「あああ、おれの一生って一体なんだったのか?」というつぶやきとぼやきのみ、、、、。

妻もまた、「私の一生は何だったの?私の青春を返して」という思いで一杯だ。


そうしてある日、夫がぼけてきて、徘徊、失禁、昼夜逆転、果ては、脳梗塞で寝たきりに、、、、。

10年寝たきりで、ヘルパーや、特養ホームにお世話になって亡くなる。

後には老いきった老妻が一人取り残される。


子供達だってもう、それぞれ家庭を持って生きるのが精一杯、

老いたお母さんを引き取る子なんて皆無だ。


結局老いたお母さんも特養ホームに入れて、面会も全く来ないという状態に、、、、。

やがてお母さんもある日亡くなってあわててそのときだけ、子供も、来所すると言うていたらく。


かくして、この二人の夫婦の人生も終焉するのである。

平凡なこの夫婦のことなんて、世間の誰も知らないし、


ましてこの夫婦が70年なり、80年なりの人生を必死でいきとおしたなんて、

知る由もない。


生まれる前、私は無だった、

それが何の因果か父母の体内に命を得て生を受け、線香花火のようなつかの間の一生を送り、

そして、寿命が尽きて、また私は無に帰えるのだ、


無から無へのほんの、一瞬、それがこの人生というものの本性だろう。


英雄豪傑偉人聖人徳婦、そんな人々だってしょせんは無から無への一休み道中に過ぎない。


ましてや、この平凡な夫婦の一生って一体なんだったのだろうか?


浜の真砂の一粒以下でもありえない、

でも、その一生には,さまざまな喜怒哀楽があったのです。


でも死んでしまえばもうこんな庶民がどんな一生送ったかなんてて誰も知りません、

また、知りたくもないでしょう。


諸行無常と一言で言ってしまえばそれまでですが、


それにしては余りにも虚しくまた、うら悲しい一凡人の一生ではないですか?


独り生まれ独り死す。


あなたが生まれたとき独りだったようにあなたは死ぬときも独りで死んで行くのです。

付き添って死んでくれる人なんていません。

独りで死ぬのです。


独去独来

独生独死


金がなければ困るけれど、

うなるほどあっったって、ソレを

担いで冥土までいけるわけでなし、


死ぬときは素っ裸で閻魔大王の前に引き出されるだけだ。

そのとき、生前私は、金持ちだったの、国会議員だったの言ったって、閻魔様は聞く耳持たない。

しんじまえば,そんなの何の関係もないからだ。


裸で生まれて裸で死んでいく。

何一つ、びた一文冥土に持っていくこともできはしない。

すべてこの世に残し置いて、たどるは冥土への一人旅なり。


独生独死はこの世の必定なり。

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