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魔女と布マフラー

更新亀速度ですみません。ストーリー上、ちょっと矛盾や違和感が入りますがスルーしてください。お気に入り、数名様に登録されてました、ポイント貰っていました。もうすごくうれしかったです!ありがとうございます!!

 

 光が滅多に差さない森の中、魔法のおかげで爽やかな朝に今日も感謝して店のテーブルを拭く。手を動かしながらも、はてさて今日は何を用意しようかと日替わりの一品を考える。

 なんとなく、今日はデザートを用意しようと思い立った。


 マドレーヌにしようか、それともカップケーキにするべきか。ちゃっちゃと小麦粉や牛乳といった、少なくはない数の材料を用意する。飲み物に合う少し塩味のあるマドレーヌにしようか、ふんわりとした小振りなカップケーキにしようかと、2つを思い浮かべた。

 

 『俺、これなら好きかな』


 ふと、そう言った青い彼がチラリと頭の中に(よぎ)った。

 甘味が苦手なはずの青い彼がそう言った後、もうひとつ口に含んで、くしゃり、顔を崩して笑ったのを覚えている。


 うん、今日はイチジクのカップケーキにしよう。

 

 そうと決まれば即行動。バターを出しておいて小麦粉とこっちのベーキングパウダー代わりのものを合わせて振るう。小さな正方形に切ったイチジクと果汁を牛乳を合わせてひとまず涼しい所に置いておく。

 バターに砂糖と卵を加えて混ぜ合わせた粉モノを半分少しずつ加えながら混ぜていく。そこに牛乳とイチジク達を混ぜたものを加えて良く混ぜたら、粉モノの残りを入れてさっくりと混ぜて型に流し入れる。そうしたら温かいオーブンの中に入れて焼き始める。


 じりじりとカップケーキが焼けていく。ちょっとずつ膨らんでいく姿を思い浮かべながら今日の下拵(したごしら)えをしていく。

 少しすれば控えめな甘い匂いが漂って来て、そっとオーブンを覗き込むとやわらかな黄金色の小山が型から出ていて、とても美味しそうだった。


 取り出してひとつ手に取ってみる。見た目はオッケー。じゃあ味はどうかな。パクリ、口に含んだ。


「うん、おいしい」


 ほんのりとしたイチジクの風味が甘さを含むカップケーキと良く合って、きっと甘いものが苦手な人も食べれるだろう。


 「さて、何個で一品にしようか」


 からん、うむうむと唸っていればベルを鳴らしながら店の扉が開かれた。顔を上げれば暗い森を背景に、青を纏った一人の青年。常連さんだったことにホッとして自然と微笑みが浮かぶ。まぁ、魔物がここに入ってこれる訳がないんだけれど。


 「おかえりなさい、アオさん」


 言えば、ふっとアオさんの頬が緩む。


 「ただいま」

 「今日は何にします?」

 「そうだな…」


 カタリ、カウンターの席を引いてアオさんは座った。そしてメニューを覗き込んでフと、カップケーキに目を向けた。


 「それ、頼めるか?」

 「はい、飲み物はどうします?」

 「紅茶を」

 「はい。ちょっと待ってくださいね」


 ちょん、とカップケーキを先に出して、疲労に効く紅茶を淹れる。ちょっとだけゲッソリしているように見えたから。


 「それにしても、この店は本当に風変わりだな」

 「まぁ、ちょっと自覚はしています」

 「来店2回目からは、挨拶が『おかえりなさい』一択だとは、流石に想像していなかった」

 「最初に言った時、アオさん驚いてましたよね」

 

 2回目の来店の時に声を掛けたら、ポカーンと惚けてた顔は今も忘れられそうにない。

 考えている事がわかったのか少しアオさんは苦笑いした。


 「忘れてくれ」

 「ははは。はい、紅茶をどうぞ」

 「ありがとう」

 

 スッと紅茶を飲む姿は旅装束(というより冒険者姿?)にはちょっと合わない上品さがある。カップを置くときだって音が立たない。どうやってるんだろうといつも不思議に思う。


 「『魔法使い』」

 「ああ、また古い話を持ち出して」

 「『魔法のように美味いものを作るから』、だったか?」

 「そうそう、誰がいいだしたんでしょうね」


 ああ、なつかしいなぁ。1回その名称の所為で間違った噂が出回ったんだよね。魔法使いが魔女にいつの間にかすり替わって伝言ゲームの如く広められて。少しだけ恥ずかしい思い出だ。


 「そういえば、マスターは大丈夫なのか?風邪を引いたと"聴いた”が」

 「あいかわらず耳が早いですねぇ。1日寝ておけば大丈夫らしいですよ」

 

 そうか、そう呟いたアオさんはチャリンとお代をいつの間にか空になっていたカップケーキのお皿の傍に置いた。キィ、と音を立てて席を立つ。


 「お粗末さまでした。味は大丈夫でした?」

 「あぁ、これくらいの甘さなら充分楽しめる。とても美味かった」

 「よかったです」


 そのまま扉へと遠ざかっていく背中。ゆらゆらと青のマフラーのような布が尾を引いて、金魚の尾みたいに見えて少し可笑しかった。ふふ、と小さな笑い声が漏れたのは仕方がないと思う。


 「行ってくる」

 「ふふ、はい、行ってらっしゃい」  

 「ああ、紅茶、気を使わせてすまない。おかげで疲れが軽くなった気がする」

 「いえいえ、平気ですよ」


 ふ、と笑い合って、からん、扉が閉まる。

 あんなに長い布を首に巻き付けて、よく扉に挟まないよなぁと毎回思う。ちょっと本人には言えない内容だからいつも心の中に留めるけど。

 さて、次のお客さんが来るまで食器棚の整頓でもしとこおかな。そう思って体を反転させる。



 私が紅茶の効能を言ってないのにアオさんが知っていたのには、気付かないフリ。





時系列はだいたい真っすぐ進みますが、設定説明とか話にバラバラに組み込まれる予定です。1番重要な設定とかはかなり後ろの方でバラす予定です。

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