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僕、東 信(21)社会人(一人称は僕派)
今日も今日とて当たり前のように残業して家に帰れば深夜1時、もちろんサービス残業なわけですが…
確かに仕事は辛いけど、明日からは待ちに待った年に一度の2連休なのですよ!!
期待を胸に明日からの予定を考えつつ就寝。
明日は何しようかなぁ…zzZZ
(ココドコ?あ、夢かな?)
なんて思うのも仕方ない。まわりは真っ白で、霧の中のような雲の中のような、1m先も見えないんじゃないかってくらいなのに目の前の神殿?みたいなのはハッキリ見えてるという不思議空間に立っていた。
「たぶん夢だな」
とか言いながら神殿みたいな建物以外に何かないのか見回してると、
「ここは夢の中ではないですよ」
なんてアニメ声が背後から聞こえてきた。
急な声に少し驚きながらも
「じゃあ、ここはどこ?というか、どちら様でしょう?」
と、質問した。(驚いたけど意外と冷静じゃないか、僕!)
振り返りよく見ると、年の頃17~18くらいの黒髪を腰の辺りまで伸ばした美人さんがいた。
(えー、せっかくの美人なのにアニメ声かぁ…すごいギャップ)
なんて失礼なこと思っていると、
「見た目と声が合ってないの気にしてるのに…」なんて言いながら美人さんが落ち込んでいた。「いや、ゴメン、口に出して言うつもりなかっ……………あれ?僕、口に出してた?」
急に落ち込む美人さんを前に、とにかく謝ろうと思ったが、謝ってる途中で違和感を感じた。
「私は世界の管理者です。あなた方が認識するところの神にあたるのかな?」
…………え?どゆこと?
「説明するとですね、ここは夢の中ではなく世界の狭間の空間で、私は世界の管理者です。そして、あなたは死んでしまったんですが、魂が輪廻に戻る前に私がここに連れてきたわけです。」
「えっと…僕、死んだの?なんで?」
「死因は過労死ですね。」「…………………納得できるのが悲しい。。。」
「受け入れるの早いですね!?というか、納得できちゃうんですか?」
「だってねぇ…勤めてた会社、労働時間長いし休みないからさぁ」
「なるほど、大変でしたねぇ…」
そんな同情的な目で見ないでっ!!
「それで僕はなんで輪廻に戻されないの?」
僕は美人さんがさっき言ってたことの中で疑問に思ったことを聞いてみた。
「それはですね、本当はあなたはまだ死ぬはずではなかったんですよ。」
「それは、どゆこと?」
「この世界は私が管理している世界の一つなのですが、一人で管理してると手が足りなくて、たまに管理から外れた存在が発生するというか、ぶっちゃけ管理ミスでして世界のバグに対する処理が遅れて事故が起こるんです。
いつもなら修正すれば問題ないんですが、あなたの場合は修正する前に死んでしまったので修正できないんです。」
「……マジですか?」
「マジです。」
「じゃあ、どうなるんですか?」
「元いた世界に転生して別人としてやり直すこともできますが、私が管理する別の世界に転生することもできますよ?」
「それは…異世界になるのかな?」
「そうですね、理解が早くて助かります。今は魂だけの存在なので、生き返るのではなく転生することになるのですが…」
「今の記憶とかはなくなるの?」
「元の世界に転生する場合は、転生前のあなたを知る人がいるので都合が悪いんですが、別の世界に転生するなら希望すれば記憶をそのままで転生できますよ。」
「けっこう融通きくんだ?」
「今回のような例は、こちらのミスなので、出来る限りの希望は聞きますよ。」
「じゃあ、記憶はそのままでお願い。あ、そういえば、僕が転生する世界ってどんなとこ?」
「簡単にいうと、剣と魔法がある世界です。」
「なるほど…」
「転生したあと、不自由しなくていいように魔力と身体能力を上げておきますね。」
「そんなこともできるの!?」
「管理者ですから♪他に希望はないですか?」
「なんでもいいの?」「大抵のことならかまいませんが、あんまり多くは無料です。」
「じゃあ、五つくらいならできる?」
「それくらいなら問題ないです。」
「とりあえず、全ての魔法が使えるようにしてほしいかな。」
「それなら、魔力と身体能力を上げるついでに才能として付加してますよ。あと、剣術や体術の才能も付加してます。」
「じゃあ、特殊な能力が欲しいかな…」
「どんな能力ですか?」
「色々なものを分析できる能力と物質の合成と錬成。」
「ちょっと待ってくださいね…………分析能力は問題ないです。合成と錬成は生物は対象外になってしまいますけど、どうします?」
「それでいいよ」
「五つの希望まであと二つありますけど?」
「じゃあ、転生後の性別は男がいいな。あと、名字はいいけど、名前は気に入ってるから転生後も使いたい。」
「それも問題ないですね。」
「じゃあ、その五つでお願い。」
「はい。では、転生させますね。」
そういって、美人さんが手を僕に翳すと同時に僕の意識が薄れていった。
(あ~、美人さんの名前聞いてないや…)