夕陽が丘霊園にて
雨の音と懐中電灯の光が織りなす、静かで切ないショートホラーです。
**「消えた影」**が明かす真実と、切ない叙述トリックの結末をお楽しみください。
酷く暑かった夏の陽は、西に大きく傾き、わたしの影を長く伸ばしていた。
目的地は夕日ヶ丘霊園だ。都内の一等地にある墓地であり、から見る夕焼けが美しいとして有名になった観光地ではないが、散策スポットであります。
わたしは、手にした強力懐中電灯を何処かに置き忘れて来なかったかと確認しました。
「暗くなるのはすぐかな?」
まさひろ 君が独り言のようにぽつり訊きました。でも、誰もその問いには答えませんでした。
どうしてって?
「まさひろ君」は幽霊で、肝試しの参加者としてカウントされていたのは、本当は「わたし」のほうだったからでした。
まあ、ともかくメインエベントである夕陽が丘霊園での肝試しはこれからです。
雨粒が冷たく頬を打ち始めました。
「ねえ、まさひろ君。小雨が降ってきたよ。……寒くない?」
わたしは隣を歩く彼に問いかけます。まさひろ君は不思議そうに首を傾げました。
「寒くなんてないよ。だって、透けているのは君のほうじゃないか」
はっと息を呑んで足元を見下ろしました。
夕闇のなか、懐中電灯の光が照らしていたのは、地面に落ちるまさひろ君の長い影だけ。
雨粒はわたしの体をすり抜け、ただ冷たく地面を叩いていました。
肝試しに来ていたのは「わたし」一人。
ずっと自分を人間だと思い込んでいた死者は、わたしの方だったのです
物語の仕掛けや演出意図をもう一段深く解剖することで、作品の持つ切なさと恐怖の余韻をより濃密に感じていただければ幸いです。




