俺なりのショートショート8
この、ホワイトボードにですね。やることを箇条書きしてですね、覚えさせると。そうするとこいつが、と言って茂木さんは足元のロボット犬の頭を撫でる。ロボットは嬉しいのか分からないが、頭を縦に振る。
大体、前日に私が散らかした部屋の掃除や、床に落ちている衣服をちゃんと椅子の上に置いておいてもらえるんです。そのくらい自分でやればいいのに、僕は思う。僕の思ったことが分かったのか、茂木さんは言った。私自身がやればいいのですが、そうするとですね。私が何も指示しなくても、こいつができるようになるみたいなんでね。まあ、今は学習期間なんですわ。なるほど、僕はうなづいた。値段は、どうです?茂木さんは指を一本僕の目の前に出した。十万ですか?茂木さんは頷いた。そのぐらいなら、僕でも行けそうだな…。いつか、買ってみたいな。ロボット犬。
茂木さんは右手で頭をぽんぽんたたきながら、言った。それはそうと、あなた。そろそろ、考えたらどうですか。何をですか?機械化ですよ。機械化。ああ…、機械化ね…。まだ、決心がつかなくて…。茂木さんみたいに、思い切りは良くないから…。大丈夫ですって、あなた。時間がかかるだけで。痛みは大したことないし…。時間はかかるのはいいけど、痛いのはちょっと…。とりあえず、どんな感じですか。それだけ聞いておきますよ。
簡単に言いますね。私の場合、三か月かけて全身を情報化したんですね。三か月で、ええ。個人の情報って、脳だけと思うでしょ。でも、違うんですよ。全身くまなく情報に落とし込まんといかんのです。
その後、機械と私の同化を始めるんです。これは、一週間かな。だいたい、だいたいそんなもんすわ。最後に、薬剤を人間の方の私に注入しまして。これが、痛いんです。なかなかね。頭の中まで、締め付けられるような痛みがくるし。で、気が付くと機械の体になっていると。
話を聞けば聞くほど、機械かは僕には無理な気がしてきた。帰りますね、僕は茂木さんの家を後にした。
一週間後。茂木さんは勤務先の工場で事故にあって、機械の体ごと亡くなったそうだ。プレス機による、巻き込み事故だったそうだ。機械の体と言えども、無敵ではないようだ。




