サンダードラゴンの襲来
険しい山道を進んでいると、空が段々と暗い雲に覆われていく。 すると、トラバスさんのオルトロスがしきりに鼻をひくつかせる。
『どうやら一雨来そうな感じだね。 トロンとザックスは湿度が上昇すると、雨の前兆に起こる独特な土の匂いに敏感になるんだ。 一旦、安全な場所を探そうか。』
ポツッ ポツポツッ ザーーーーッ
大雨が降ってきた為、落石や滑落の恐れが無さそうな場所を見つけると、アルトにハウスアンデットを再び召喚してもらい、しばらくその場でやり過ごす。
ゴロゴロゴロゴロッ
『やれやれ、大雨に続いて今度は雷まで発生してしまったか…コルネさん、すまないが少し離れた場所にドリアードの力を借りて避雷針として、高い木を生み出してもらえないだろうか?』
『分かりました。 ドリアード、お願い!』
ドリアードによって近くに立派な木が生み出されるたと思った瞬間…
ゴロゴロゴロゴロッ、バキバキバキバキッ!!
『きゃーーっ!!』
『うわーーっ!!』
落雷が木に直撃したかと思った俺達は、目の前に現れたその存在をすぐには頭の中で整理し、受け入れる事が出来るまで時間がかかってしまった。
『まさか…あれはサンダードラゴン!!』
雷が落ちたと思った木の生えた場所には、誰もが想像していなかったAランクに分類されているサンダードラゴンが、俺達の前に姿を見せた。
『このような場所に人が訪れるとはな。 お前達、まさかとは思うが、大昔に我が巣から卵を盗んだ悪党と同じ事を考えているのではないだろうな?』
『サンダードラゴンよ! 先ずは勝手に貴方の縄張りに入ってしまった事を許してくれ! そして我々の目的が決してそのような悪行ではなく、大空を自由に駆る力強い仲間を見つける為に、この場所を訪れました。』
『ほう、にわかには信じがたいが、我を前にしても臆する事なく話しかけてきた勇気は評価してやろう。 信じるかどうかは別として、お前達の話くらいは聞いてやろう。』
トラバスさんはサンダードラゴンの目を真っ直ぐに見ながら、今回の旅の目的を説明を行う。
『まさか、この平和の時代になっても魔王が存在した天空城に挑戦する無謀な連中が存在するとはな。 それも、目的が魔王の城に眠る財宝の類でもなく、お前達の従魔を進化させる為だけに〈影狼石〉を求めて我が縄張りを訪れるとはな。』
そう言うと、サンダードラゴンは俺達に向けて放っていた強大なプレッシャーを解除した。
『ワーッハッハッハ! 久しぶりに、これ程楽しい愚か者達に会えるとは思っても見なかったぞ。 いいだろう、これからお前達の力を我に証明する事が出来るようなら、お前もしくは隣りにいる小僧の従魔となって力を貸してやろうではないか。 どれっ。』
サンダードラゴンは自身に魔法を放つと、その巨体がみるみると小さくなり、俺達と同じサイズの人間の女性の姿に変化する。
『流石にドラゴンのままの姿では、お互い満足に戦うのは難しいであろう。 全力では戦わないようにしてやるから、お前か小僧で順番を決めて挑んで来るがいい。 どちらかでも、我に実力を認めるさせる事が出来るようなら先程言った約束を守ってやる。 さあ、かかってこい!!』
『分かりました。 ラッキー君、先ずは私が全力で戦ってみよう。 君はその戦いを見て、サンダードラゴンと上手く立ち回れるよう、真剣に分析していてくれ!!』
『分かりました。 どうか気をつけてください。』
トラバスさんはアイスレイピアを構えてサンダードラゴンの前に向かう。
『私から挑戦させていただく。 皆んな、見ていてくれ!』
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