渓谷入り前夜
新たなポイントカードの条件が判明してから2日経過。 俺達は順調に渓谷に向かって進んでいる。 道中は〈ネクロマンサー〉と〈精霊使い〉を獲得すべく、俺のオルトロスに何度か移動時に待機してもらい、後から〈従魔召喚〉を繰り返す事をあれから4回行い、ポイントはそれぞれ50ポイントになった。 それとは別に、馬車での移動の道中、皆んなの退屈しのぎも兼ねて、楽器の練習も時々行い〈吟遊詩人〉のポイントも1000ポイントまで増やす事ができた。
『皆んな、スレイプニルの移動速度のおかげで想定していたよりも半日早く、渓谷に着くペースのようだ。』
先の道を遠目で見ると、既に渓谷が見えるところまで進んでいる。 オルトロスのスキルを通して〈千里眼〉を使用してみると、鳥や飛行タイプの虫の魔物の姿がいくつか確認できる。
『トラバスさん、飛行タイプの魔物ばかり見られますが、皆んなで乗れる大型の魔物はまだ確認できないですね。』
『そのようだね。 ラッキー君、この先の渓谷は川沿いを進むとロンドに続く道と、それとは別に山の頂上に続く険しい道があるんだ。』
トラバスさんに続いてセレナさんも話しかけてくる。
『ラッキー君、以前に私が所属していたパーティを含む、大規模な行商人の馬車達がワイバーンの群れに襲われたのは、ロンドに向かう前者の道です。 途中で渓谷を跨ぐ大きな橋があるのですが、橋の移動中にワイバーン達に空から襲われて多くの犠牲者が出ました…』
『そうだったんですね…ピア達もそこで被害にあったのか…』
『我々が今回向かうのは、山の頂上に続くほうの道であり、皆んなが乗れる飛行タイプの魔物達は山の高い場所に生息しているようだ。 今日のところは渓谷の手前まで進んで野営を行い、明日から山の頂上を目指す事にしよう!』
ハウスアンデットがいるので、野営といってもスペースさえあれば、アルトの魔力向上のおかげで道中は立派な貴族の館と遜色ない建物を設置して休めている。 皆んなに個室が当たり前に割り振りされ、部屋の中ではシャワーまで利用できる。
『毎日の事ですが、旅の道中でこれ程まで快適に過ごせるなんて想像できませんでした。 ラッキー君達と行動していると、今までの常識が良い意味でおかしくなりますね。』
『今ではゾンビ達に建物の護衛も任せているから、よっぽどでない限り見張りも行わなくても大丈夫ですしね。』
キッチンで今日の食事当番のセレナさんとコルネが料理を作りながら、楽しそうに会話している。 夕食が終わると明日からの打ち合わせを行う為、皆んなでリビングに集まると、トラバスさんから指示が出る。
『皆んな、明日はいよいよ目的地の渓谷に入る。 山の頂上までの道中は、ソニックバードのフレッタに、私が〈意識共有〉で広い範囲を偵察しながら進んでいく。 ラッキー君は可能な限り〈千里眼〉で皆んなに危険の無いよう情報の伝達をお願いするよ。 続いて隊列だが、コルネさんには、オルトロス2頭と〈索敵〉を行いながら先頭で進んでもらう。 それと〈罠感知〉で渓谷の滑りやすい道で足を取られないよう皆んなを誘導してくれ。 中衛にはセレナと私が配置して魔物が前方だけではなく、後ろから襲ってきても対応出来るようにする。 後衛にはラッキー君とアルトさん、そしてテナーにお願いする。 ラッキー君のスレイプニルと馬車は、今回はハウスアンデットで待機させておこう。』
その後も細かい内容を確認し、全員明日に備えてしっかり休む事となった。
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