水の精霊像
『ねぇ、ラッキー、コルネ。 私は出発の日まで、〈鉦鼓〉の能力を身体に慣らす為の訓練に励もうと思うから、当日まで別行動する事にするね。』
そう言ってアルトは武器屋で、壊れた槍の代わりを新たに購入後、俺達から離れる。
『さてと、俺はポイントカードの未達成分を達成するのに出発の日まで取り組もうと思っているけど、コルネはどうするんだ?』
『ラッキー、実は精霊使いのジョブを身につけてから気づいたんだだけど、以前にベルファスに行く途中で、バンシーと遭遇した湖を覚えている?』
『あー、確か小さな村の近くにあった湖の事だよな。 フラットをアイスウルフに進化させて、ベルファスからウィンに戻る帰り道で、コルネも湖の近くを通ったんだっけ。』
『うん、当時は精霊使いの力だけでなく、索敵すら覚えていなかったので、はっきりとした事が分からなかったけど、今になって思い返せば、あの湖から精霊の気配を感じていた気がするの。』
『そうなのか? もし可能性があるなら、スレイプニルの〈転移〉を使って、これから向かって見ようか?』
『うん、無駄足になった時はゴメンだけど、確かめさせてください。』
俺はスレイプニルの馬車にコルネとオルトロスを乗せると、バンシーと遭遇した湖に移動する。 湖に着くと、コルネは意識を集中させて精霊がいないか確かめる。
『やっぱりそう。 湖の真ん中に小さな島があるでしょう? あそこに精霊がいるのは間違いないと思う。』
『よし、それじゃあ、あの島に向かってみようか。 オルトロスのホルンとフラットには馬車の見張りをお願いして、コルネは俺の後ろに掴まり、スレイプニルに乗ってあの島まで渡ってみよう。』
島が近づくと、入り江の岩山に洞窟があるのを発見する。
『あそこの洞窟で間違いないわ。 ラッキー、このまま進んで!』
洞窟に入ると、中は暗がりの為、俺の光魔法で周りを照らしながらゆっくりと奥に進む。 やがて水の高さより高い場所に繋がり、徒歩でさらに進む。
『コルネ、あれを見てくれ。』
洞窟の突き当たりに、祭壇のようなものが設置されており、水の精霊を祀ったものと思われる石像が、薄汚れた状態でひっそりと置かれている。
『コルネ、随分と古いもののようだけど、何か感じるかい?』
『長い間、忘れられていた事で、精霊の力が弱くなっているみたい。 祈りを捧げて呼びかけてみる。』
コルネが魔力を放ちながら、石像に祈りを込めていると、俺達が進んで来た道から魔物の気配を感知する。
『誰だい? 私の留守の間に、人の寝ぐらに忍び込むネズミは。』
姿を見せたのは、上半身は美しい女性の姿をしているが、下半身は多数の蛇になっており、俺達を威嚇してくる。
『ここは、スキュラの縄張りだったか! コルネ、アイツは俺がなんとかする! 石像への祈りを続けてくれ!!』
この小説を読んで「続きが気になる」「面白い」と少しでも感じましたら、ブクマと↓の☆☆☆☆☆から評価頂けると嬉しいです。 更新された『いいね』の機能も是非試してみてください!




