影狼石入手の依頼
『なぁ、オルガ。 ちょっといいか?』
送別会を終えて解散する際に俺はオルガに声をかける。
『この剣は俺がこの街で初めて武器屋で購入したものだ。 鍛冶職人の加護が備わっていて、長く使っていた物だけど今でも切れ味は変わらずに使えると思う。 流石にハーモニーが魔法を使えるとはいえ、皆んな丸腰でメロディ村まで戻るには危険だろう? 餞別という訳ではないが使ってやってくれ。』
『ラッキー、すまない。 治療やベネシャの土産だけでなく。宿代の延滞料金も肩代わりしてもらっただけでも感謝しているのに…助かるよ。』
『ピア君にも、私のナイフを何本か渡しておくね。』
『ありがとう、コルネさん。 ラッキー、お前達の活躍を応援しているからな!』
ピア達と別れると、アルトがコソコソと話しかけてくる。
『ねぇ、ラッキー。 スレイプニルでメロディ村まで、三人を送ってあげる事もできたのに、あえて武器を渡したのってどうしてなの?』
『アルト、俺はまだどこかで、あの三人が冒険者として、やり直す気になってくれないかという願望があるんだ。 何も持たない状態でいるよりは再起する為のきっかけとして武器があったほうが、可能性が広がると思うんだ。』
『そうだよね。 私もラッキーがした対応で良かったと思う。 いつか依頼を一緒に受ける日が実現して欲しいよね。』
翌日になり、俺達はベネシャの土産を持って、久しぶりにトラバスさんの屋敷を訪れる。
『やぁ、ラッキー君達じゃないか! ちょうど君達に連絡しようと、ヴァンパイアバットに手紙を持たせようとしていたところだったんだ。 ひとまず中に上がってくれ。』
いつもの応接室に案内されると、トラバスさんより少し若い一人の女性が先に部屋で過ごしている。
『先に紹介しておくよ。 彼女の名前はセレナ、私の冒険者パートナーだ。 先日、起きた冒険者パーティを複数雇ってロンドに向かう大規模な行商人の馬車達が、ワイバーンの群れに襲われ壊滅的な被害を受けた事件は知っているかい?』
『はい、詳しい詳細までは知りませんが、俺の同郷の冒険者パーティが依頼を受けていて、昨日会った時に生きてはおりましたが皆が重症で、治療をしました。』
『それは気の毒だったね…実はセレナも、その依頼を受けたパーティにいた一人なんだ。 仲間は全滅し、セレナ自身も借金奴隷として、この街に連れて来られたところを目撃したので、私が奴隷商人から引き取ったんだ。 一応、誤解の無いよう言っておくが、彼女の事は奴隷として購入した訳ではなく、もちろん奴隷の首輪を付けたりしていない。 同じ冒険者として、彼女の境遇に心を痛めて解放してあげるつもりだったのだけど、恩を返したいと彼女の強い希望で仲間になってもらったんだ。』
セレナさんは俺達にお辞儀をすると挨拶してくる。
『セレナといいます。 冒険者をしていた時はプリーストとして仲間を支援していました。 皆さんの話は私を拾ってくださいましたトラバスさんから聞いております。 ラッキーさん程の回復魔法は使えませんが、よろしくお願いします。』
『それは大変でしたね。 俺達の方こそよろしくお願いします。』
そう言って、俺達もセレナさんに自己紹介していく。
『さて、話は変わるがついにワイルドウルフの最後の進化系である、シャドーウルフになる為の〈影狼石〉の入手場所が見つかったんだ。 また君達には是非、同行してもらいたいと思っている!』
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