カルテットの解散
宿に行くとカルテットの皆んなをすぐに見つけるも、驚いた事に全員が大怪我をしており、悲壮感に暮れていた。
『おいっ! 皆んな、一体何があったんだ⁈』
『…あぁ、ラッキー達か…見ての通りこの様さ。』
ピアは右目や身体に包帯を巻き、力無く返事を返す。
『実はね、私達が前回、西のロンド王国に向かう行商人の馬車の護衛の依頼を受けたのは知っているでしょう? その途中の渓谷でワイバーンの群れが襲ってきて、護衛の冒険者達の多くが犠牲になってしまったの…私達は奇跡的に生き延びる事ができたのだけど、依頼を失敗した事で違約金も支払う事になり今までの蓄えと装備を全て売り、なんとか借金奴隷になるのは免れたんだ…』
『文無しの上、全員が深傷の状態で歩くのもやっとの状態なんだ。 宿のオーナーのご厚意で、まともに動けるまでは部屋を貸してもらっているけど、今後の見通しが立たなくて話し合っていたんだ。』
ハーモニーは足をギブスで固定し、椅子の横に松葉杖を置いていたり、オルガも腕を三角巾で吊るして現状を教えてくれる。
『そういえば、チェロの姿が見えないけどどうしたんだ?』
『アイツは俺達に比べると比較的軽症で済んだんだけど、周りで他の冒険者達が亡くなる状況を目の当たりにした事で、恐怖から実家に戻ってからは引きこもってしまっているんだ。 多分、パーティに戻って再び活動するのは無理かもしれねー。』
『なあ、ピア、オルガ、ハーモニー。 手を貸すから今から人に知られないよう、お前達の部屋に案内してくれ。』
ピア達を介助しながら、ピアとオルガが共同で使っている部屋に入るとカーテンを閉め、三人に話しかける。
『実は秘密にしていたんだが、俺のユニークスキルは複数のジョブを覚える事が出来る代物だったんだ。 これから三人の傷を治すから、この事は周りには秘密にしていてくれ!』
部屋の外に聞こえないよう小さな声で説明すると、三人は静かに頷く。
『傷の具合が重いから、一人ずつ対応していくぞ! 〈エクスヒール〉!』
上位回復魔法の効果で三人の骨折や傷、それにピアの視力も元通りに回復すると皆、驚きの表情を浮かべ怪我した箇所の確認をしている。
『これで、今まで通りに動けるはずだ。 活動資金で困っているようなら、俺達が貸す事も出来るから気にせず頼ってくれ!』
俺の言葉にアルトとコルネと笑顔で頷く。
『ありがとう、ラッキー…まさかお前にこんな力が備わっているなんて思っても見なかったぜ!』
口々に感謝する三人であったが、ピアが寂しそうな表情を浮かべながら代表して口を開く。
『せっかく治してくれて悪いが、俺達の冒険者としての活動は終わりにしようと思う。 三人でじっくり話し合い、自分達の限界を感じた結論だ。 一緒に依頼を受ける約束が果たせ無かった事が心残りだけど、元気になった身体で、それぞれメロディ村で自分達の家業を手伝う予定だから、冒険の合間にメロディ村に顔を見せに来てくれ! 今まで本当にありがとうな…』
そう言うと、ピアだけでなく、オルガもハーモニーも涙を流して俺達の手を順番に握ってくる。
『わかったよ。 三人が決めた事だから、俺達もピア達の事を応援するからな!』
その日の夜はウィンで人気のレストランでピア達の送別会を行った。 チェロは残念ながら参加出来ずに終わったが、ピア達の分まで俺達は冒険者として今後も頑張っていくぞ!
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