お互いの目的
転移魔法で移動したマリンバさんの家は、驚いた事に森の中ではなく、下を眺めると雲海が広がる山の上に建っていた。
『さっきまで森の中にいたのに! それに、ベルファスみたいに気温が低くて寒い…』
『今いる場所は標高1000メートルはある山の上よ。 貴重なアーティファクトや魔道具を沢山所持しているから、自宅の場所を特定されないように、森の中に家がある振りをしているの。 あなた達が森に来たのがわかったのは、最初に設置してある看板に、人が訪れたら私に直接連絡来るよう魔法をかけていたのよ。 ここは寒いでしょうから家の中に入ってちょうだい。』
マリンバさんに連れられ家の中に入ると、小さな山小屋のような外観だったのが嘘みたいに、中はまるで王宮かと思われる広さと豪華な飾りが一面に広がっている。
『これは凄い! 何故わざわざ外観を変化させているのですか?』
『いくら山の麓とはいえ、これだけの豪邸が見つかれば噂が広がってしまうでしょう? 中にはドラゴンライダーやペガサスナイトが私の山に近づく事も極稀にあるからね。 とりあえず、客室に案内するからついて来て。 それと、間違ってもその辺の飾りに触れてしまうと、迎撃用の魔法が発動するから気をつけてね。 こんな風になるから。』
マリンバさんが近くに飾っていた妖精が描かれた額縁に、魔法で生み出した人型のドールで触れさせてみる。 すると周りに飾られていた複数の騎士の甲冑が動き出し、人型のドールはズタズタに切り刻まれてしまう。 客室のテーブル席に座ると、メイドの格好をしたドールがスコーンと紅茶を運んできてくれる。
『皆んな、温かいうちにどうぞ。』
『凄く美味しい! こんな紅茶、街のお店では飲んだこと無いかも!』
あまりの美味しさに盛り上がるアルトとコルネを置いといて俺はマリンバさんに話しかける。
『なんかお茶会に呼ばれたような雰囲気になりましたが、マリンバさん。 実はお願いがあって来ました。』
『うん、知ってるよ。 魔力量が低くて、従魔の〈同化〉を維持できないんだよね。 あなた達が森で迷っている時に皆んなの記憶を魔法でサーチしているから、悪い目的では無いと判断して姿を見せる事にしたのよ。 それと、門番役に雇っていたドリアードは好きに連れて行って大丈夫よ。』
『記憶のサーチまで出来るんですね。 今まで体験した事が無い事ばかりで、魔法に対する理解が追いつかないです。』
『本音を言うとね、私があなた達に興味を示したのは、あなた達が使える魔法を私が探し求めていたのよ。 ラッキー君は光属性を、アルトちゃんは〈憑依〉を使用する事で闇属性をそれぞれ使えるわね。 私の〈ユニークスキル〉は〈マジックラーニング〉というもので、他人が使う魔法を自らも覚える事が出来るスキルなのよ。 使い手がほとんど存在せず、40年近く探し求めてようやく見つけたのがあなた達って訳。』
『40年近くって…マリンバさんって凄く綺麗だから20代前半だと思っていました。』
『ふふふっ、ラッキー君。 女性に年齢の話をしてはいけないわ。 私で無ければ大変な事になるから注意しないとね。 そういう訳で、あなた達の魔力を向上させる手伝いをするから、私には二人に光と闇の魔法を教えてもらいたいの。 お互いにメリットがある思うけど?』
アルト達を見て確認すると、二人とも首を縦に振る。
『そうですね。 では俺達もマリンバさんに協力しますので、ご指導よろしくお願いします!』
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