冒険者登録
早速、冒険者ギルドの中に入ってみるとフロアに人はあまりおらず、カウンターの職員が暇そうに過ごしていた。
『あら初めて見る顔だね。 こんな時間にギルドに来るくらいだから依頼を求めて来たわけではなく冒険者登録の希望かしら?』
今は昼を過ぎて二時間くらいといったところか。 貴族では無いので時計を持っていない為、正確な時間はわからないが。
『はい、メロディ村から来ました。 ラッキーといいます。 お金はあまり持っていませんが冒険者の登録料は稼げるようになってからでも大丈夫と聞いたのですが。』
『うん、その認識で合っているよ。 でもこんな時期に珍しいよね。 アンタ十歳になったから神託の儀を受けて冒険者の適正職業を授かって来たんだろう? 普通なら準備やらがあっても一か月くらいの間に来る子が多いからさ。 あと紹介が遅くなったわね。 私は受付を担当しているメリーよ、よろしくね。』
『よろしくお願いします。』
『ワイルドウルフを連れているところを見ると〈テイマー〉さんかな。 早速だけど冒険者登録をしていくから、こちらの魔道具に手をかざしてくれるかな?』
カウンターに置いてあるスイカ程の大きさの水晶に向かって言われた通りにすると水晶の中に文字が浮かび上がってきた。
ラッキー 男 十歳
ジョブ 〈テイマー〉
スキル一覧 〈テイム〉
従魔一覧 ワイルドウルフ
犯罪歴 無し
『オッケー、犯罪歴も無いようだからギルドカードを発行していくよ。 それと君の場合は従魔がいるから、その子の登録もしないとね。 一応聞いとくけど、その子…噛んだりしないよね。』
『ホルンは賢いのでそんな事はしません。』
『なら良かった。 ではホルンちゃんの首に従魔とわかる首輪をつけるのと水晶型の魔道具だとホルンちゃんがカウンターに登らせないといけなくなるので、水晶と連動出来る私の指輪をホルンちゃんに触れさせてもらうわ。』
メリーさんがホルンに首輪をつけた後に身体に指輪を軽く触れさせる。 するとカウンターの水晶に再び文字が浮かび上がる。
ホルン 雌 三歳 ラッキーの従魔
種類 ワイルドウルフ
スキル一覧 〈気配感知〉
『これでホルンちゃんの登録も完了! 首輪の料金は一匹目はサービスしてるけど二匹目からは銀貨二枚がかかるから覚えておいてね。 じゃあ冒険者カードができるまでの間、冒険者の心得が書かれたルールブックを渡すから読んでおいてね。』
とりあえず〈隠蔽〉スキルのおかげで〈戦士〉のジョブとスキルは表示されなかったみたいだ。 〈魔法使い〉の二属性持ちよりもジョブを二つ持っている事のほうが非常に珍しい。 例えば〈戦士〉と〈魔法使い〉なら〈魔法戦士〉、〈魔法使い〉と〈プリースト〉なら〈賢者〉といった上級職業になれる組み合わせがあり、最強と言われている。 ルールブックを読み終わる頃には冒険者カードが無事に発行されていた。
『ではラッキー君は今日からF級冒険者となりました。登録料は依頼達成時の報酬から少しずつ貰っていきます。初めはスライム退治や薬草採り、街の仕事を手伝う内容くらいしか依頼がもらえないけど冒険者ランクが上がればダンジョン探索や強い魔物の討伐等も受けられるようになるから頑張ってね。 何か質問は無いかな?』
『あのー、四か月くらい前に俺と同じメロディ村から同じ年の子が三人、冒険者登録に来ませんでしたか? ピアとオルガ、ハーモニーというんですけど。』
『あら、あの子達の知り合いなのね。 確かここで知り合った〈吟遊詩人〉の女の子と四人で〈カルテット〉というパーティ名で活動していたわね。 今は商人の護衛の依頼を他のランクの高いパーティのサポートとして別の町に向かったはずよ。 あなたもホルンちゃんがいるとはいえ、ソロだと危ないから誰かを紹介してあげようか?』
『そうですね…考えておきます。 もうじき夕方になるので今日はどこか泊まれるところを探しているのですが。』
『それなら近くに格安の宿があるから場所がわかるメモを用意するわね。 じゃあ新人冒険者さん、頑張ってね。』