魔物の腹の中
どれくらいの時間が流れたのか、魔物に飲みこまれた俺達は全員気絶していたようだ。 お腹の中は当然、明かりなど無く辺りは真っ暗闇である。
『光よ、辺りを照らせ!』
〈光魔法〉で周りを明るくすると、壊れた船の周りで倒れているアルト達を見つけ呼び起こす。
『ラッキー、私達が今いる場所ってひょっとして…』
『うん、おそらく魔物の腹の中だと思う。 正直、どちらに進めば飲み込まれた口の方向に行けるかわからない。 それよりもラッカスさんが危ない状態なんだ!』
『ぐわーーっ、あっ、足が…』
ラッカスさんが壊れた船の一部に左足を潰されており、人の力ではとても船の残骸を動かすのは困難な状況だ。
『くそっ、すまないラッカス…助け出すにはお前の左足を切断する以外、方法が無さそうだ。 どうか許してくれ…』
『きっ、気にするな、兄貴…恨んだりしないからやってくれ。』
ティンバさんは涙を流しながら、ラッカスさんの左足のつけ根をロープできつく縛るとラッカスさんの潰された左足を切り落とす。 辺りにはラッカスさんの絶叫が響き渡る。
『ねぇ、ラッキー。 お願い…』
『勿論、わかっているよ。 コルネ。』
切り落とされた左足にポーションで止血をしているティンバさんに俺は声をかける。
『ティンバさん、ラッカスさん。 これから起こる出来事を決して周りに話さないと約束してくれるなら、ラッカスさんの足を直してあげる事が出来るかもしれません。 二人とも、約束してくれますか?』
『勿論だとも。 ラッカスの足が治るのであれば、絶対に人に話す事などしないと命にかけて約束する!』
ラッカスさんも苦しい表情を浮かべながら力強く頷く。
『どうかラッカスさんの失った足を治してくれ! 〈エクスヒール〉』
ラッカスさんの左足の向かって全力で魔力を注いでいくと何事も無かったかのように左足が再生された。
『まさか! このような奇跡を起こせる力を持っているなんて…皆んな、見てくれ。 普通に動かせたり、歩く事が出来るぞ!』
出血により、表情は青白いものの、喜ぶラッカスさんと、何度も何度も繰り返し感謝をしながらティンバさんは涙を流し続ける。
『一応、予備の明かりもあったほうが良さそうね。 ウィルオーウィスプよ!』
『あんた達のその力は一体…いや、そんなことは関係無い。 俺達は秘密は絶対に漏らさないし、ここから抜け出す手段があるなら微力ながら協力するから言ってくれ!』
『ありがとうございます。 とりあえず、出口を探さないと…ホルン、フラット。 ひとっ走り頼めるかい?』
俺はホルンとフラットの二匹に〈意識共有〉を行うと、二つある道にそれぞれホルン達を走らせ出口を探してもらう。 二匹は夜行性の為、照明が無くても、頭の中で二匹が見る視界の映像は鮮明に伝わってくる。 俺が〈意識共有〉に集中していると、ホルンが向かった方角に沢山の船の残骸が山積みになっており、一際目立つ一隻の船の残骸を発見する。
『あれは! ひょっとして、海賊船?!』
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