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吟遊詩人のポイントカード

 翌日、俺達は乗り合い馬車に乗車し南のベネシャに向かって進んでいる。 馬車には俺達の他にも、吟遊詩人の男性と踊り子の女性が同乗した。


 『やぁ、君達もベネシャに行くのかい? 私は吟遊詩人のハープ、隣りは踊り子のリネット。 私達は二人で街を旅歩きしながら、音楽と踊りで稼いでるんだ。』


 『私はリネットよ。 長旅を共にするので仲良くしてね。』


 『初めまして、俺はラッキーといいます。 一緒にいる仲間はアルトとコルネです。 三人で冒険者パーティをしているのですが、今回は観光で海を見ようと思いベネシャに行くところです。』


 『君達、まだ若いのに危険な仕事を頑張っているんだね。 道中で魔物が現れたら頼りにしているよ。 そうだ、せっかくだから一曲披露しようかな。』


 馬車の中にハープさんの綺麗な歌声が響くと、不思議と皆んなリラックスした気分になる。


 『今のは、緊張をほぐす効果のある歌なんだ。 お互いに早く打ち解けるにはピッタリの曲だろう?』


 『はい、思わず聞き惚れてしまいました。 私達、音楽に触れ合う機会が無かったので、とても新鮮でした。』


 アルトの感想にコルネも頷く。


 『音楽っていいものでしょ? 私もハープの歌が大好きでいつもコンビで活動してるのよ。 長旅の間、時間はいっぱいあるから歌や楽器に興味があれば私達が教えてあげるね。』


 リネットさんが笑顔で話す。


 『ねぇ、ラッキー。 ひょっとしたら新しいポイントカードの条件に繋がるかも、楽器を教えてもらったら?』


 『そうだね。 試してみようか。』


 アルトとポイントカードの事は聞かれないようコソコソ話をするとハープさんの楽器に注目する。


 『ハープさん、今の話ですが俺に楽器の弾き方を教えてもらえませんか? ちょっと興味がわいちゃって。』


 『本当かい? 音楽に興味をもってくれたのなら嬉しいよ。 この楽器はリュートといって、この弦を使って演奏するんだ。 先ずは……』


 ハープさんは親切に指使いの仕方などを優しくレクチャーしてくれる。 30分程、教わるとポイントカードの音声が俺にだけ聞こえてきた。


 『ユニークスキル〈ポイントカード〉の〈吟遊詩人〉のポイント獲得の条件を達成しました。 楽器を30分間練習したポイント30ポイントを獲得しました。 2000ポイントで目標達成となります。』

 

 よしっ、俺は目でアルトとコルネに合図を送る。


 『ラッキー君、意外と筋がいいかもしれないね。 毎日、練習を続けたらすぐに上達すると思うよ。』


 『ありがとうございます。 これから毎日、頑張るのでよろしくお願いします!』


 こうして新たな目標もみつかり、ベネシャに向かう旅が始まった。

 

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