『テイム』を使ってみよう!
俺達は牛達を牧舎に全て入れると、ワイルドウルフを迎え討つ準備をした。 親父は冒険者の頃に使用していた使い古したロングソードとラウンドシールド、レザーアーマーを身につけ、サブウェポンとして短剣を準備。 そして現役の時にワイルドウルフにやられた影響で走る事が出来なくなった右足の古傷はレガースでしっかりと守りを固める。 俺も冒険者になろうと家業の手伝いで少しずつ貯めたお金で購入していた短剣とレザーアーマーを身につけて戦闘に備えた。
夜が更けて月の光が無いと完全に暗闇になる時間帯になると、予想通りワイルドウルフ達の鳴き声が聞こえてくる。 俺は初めての実戦に嫌でも緊張してしまう。
『大丈夫だ、ラッキー。 今まで訓練してきた事は決して無駄ではない。 心を落ち着かせて戦えばお前はやれる!』
『わかった! 一緒に牧場を守り抜こう!』
俺達の前に現れたワイルドウルフは合計で六匹。 俺達二人を囲むように動き出すと、前から牽制しながら俺達を引き離し、隙あれば背後から足や首筋を狙おうと連携して攻めてくる。 必死で戦う俺の背後で一匹のワイルドウルフを倒した親父が声をかけてくる。
『ラッキー、無理に倒そうと焦らなくてもいい! お前が背後を守ってくれていれば儂が奴らを倒す事が出来る!』
そう言うと親父は続けて二匹目を倒していく。
なんとか俺もワイルドウルフの隙をつく事が出来れば倒せるのに…そうだ!! 目の前で襲ってくる一匹のワイルドウルフに向かって意識を集中させる。
『上手くいってくれー!〈テイム〉』
一瞬、動きの止まったワイルドウルフだったが何事も無かったように再び俺に襲いかかる。
『くそっ、まだ俺の魔力が低いせいか意識がやられそうになる。チャンスはあと一回しかないな。』 テイマーが使える〈テイム〉のスキルは成功すると魔物を使役する事が出来るが相手の強さに合わせて魔力を使用してしまう。 ちなみに魔力を使いきってしまうと意識を保つ事が出来ずにしばらく失神してしまうのだ。
『もう一度だけ…今度こそ上手くいってくれ! 〈テイム〉』 俺は再び、目の前のワイルドウルフに意識を集中させる。
先程とは違い、俺の放った〈テイム〉の光がワイルドウルフを包み込むと俺達に敵意を向けていた表情が一変して穏やかになり、俺からの指示を待っているようだ。
『良し、ワイルドウルフ!! 隣りのワイルドウルフに攻撃してくれ!』
〈テイム〉で使役したワイルドウルフは俺の指示に従い隣りにいたワイルドウルフの後ろ足に背後から噛み付く。 突然の出来事に周りのワイルドウルフ達もパニックに陥ったようだ。
『ラッキー、今の力は一体…』
『親父、話は後だ! 今がチャンスだ!』
その後、完全に浮足だったワイルドウルフ達は使役したワイルドウルフのサポートもあり、俺でも二匹倒す事ができた。 群れの最後の一匹を親父がトドメを指す。
『なんとか二人とも無事でウルフどもを倒す事が出来たな。 ところでラッキー、さっきの力は何だったんだ? お前の横にいるワイルドウルフはまるで懐いてるように見えるのだが…まさか。』
『そのまさかだよ。 親父、俺は〈テイマー〉のジョブを授かったんだ!』
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