愛しのマイホーム
『ラッキー君、アルトさん。 物理でも戦えるグール達は私が引き受けよう!』
トラバスさんが先駆けて三体のグールに切り込んでいく。 俺とアルトは霊体であるレヴァナントに向かって先程のレイスと同様にライトアローとダークアローでダメージを与えていく。
『オノレ オトナシク コノヤドノヨウブントシテ ヤラレレバイイモノヲ』
強い殺意を俺達に向けるレヴァナントを見て、アルトが何かに気づく。
『あのレヴァナントはおそらく、この宿に住み着いていた家妖精の成れの果てだと思う。 人がいなくなってからも、この宿を守ろうとして泊まりに来た人達の生気を奪って宿を維持しているみたい。』
『オマエタチ チカラヲ アワセルゾ』
レヴァナントの呼びかけに従うように、モンスターハウスに潜んでいた幽霊達が一斉に集まるとレヴァナントの身体に取り込まれ、巨大な悪霊の集合体になる。
『そんなっ、レギオンに進化した。 ラッキー、アイツに捕まったら一瞬で生気を吸い取られて命を奪われるわ! 私が時間をつくるから〈魔法剣〉を準備して!』
アルトは〈闇魔法〉とウィルオーウィスプの電撃を使いながらレギオンに攻撃を仕掛けるも、殆ど効いていない。
魔力切れ寸前でふらつくアルトにレギオンが襲いかかる。
『危ない、アルト!』
レギオンに掴まれそうなったアルトを寸前のところでコルネが抱き抱えて回避する。
『ありがとう、コルネ…今よ、ラッキー!』
『行くぞ! 光の剣よ、アイツを切り裂け! 〈ホーリーブレード〉!』
俺はありったけの魔力を込めた〈魔法剣〉でレギオンを切り裂くところまでは覚えていたが、そのまま魔力切れで意識を失った。
『ラッキー、良かった。 目が覚めたんだね。』
気がつくと俺はベッドに寝かされていて、周りで心配そうに皆んなが見つめている。
『大活躍だったね、レギオンは君のスキルでやっつける事が出来たようだ。 それと、君の〈ポイントカード〉とアルトさんの〈憑依〉の秘密も教えてもらったよ。 勿論、他言するつもりは無いので安心して欲しい。』
『私も決して人に話す事はしないよ。』
トラバスさんとコルネは俺の目を見つめて真剣な表情で誓ってくれる。
『そういえば、俺が倒れた後、モンスターハウスはどうなったんだ?』
『ラッキー、それがね、凄い事になったのよ! ラッキーの光の剣の効果で悪霊になってたレヴァナントが、元の家妖精だった頃の姿に戻って、私と新たに契約したの。 私達がいるここは、私の魔力で召喚したハウスアンデッドの中なんだよ。 つまり、いつでも呼び出せる私達の家が手に入ったって訳!』
『凄いよ、アルト! でも前の宿と比べると凄く新築に見えるし、宿というよりは普通の家みたいなんだけど。』
『家妖精の幽霊によると、契約した私の魔力量とイメージで建物の外観や内装も選べるんだって、最高でしょ?』
『全く、二人にはいつも驚かされてばかりだよ。 この力があれば野営の心配も無くなり、快適な旅が送れそうだね。 そう言えば気づいているかもしれないが魔力切れ寸前まで魔力を消費していくと、魔力量が上がっていくと以前聞いた事がある。 訓練していけばラッキーもアルトさんも更に強くなれるはずだよ。』
『そうだったんですね。 これからは魔力量も底上げして行けるよう頑張るぞ!』
『私も今は小さな家しか生み出せないけど、いずれはお城を生み出して国でも起こそうかな…冗談だけど。』
『今日のところはラッキー君もアルトさんも魔力を随分と使っただろうから、明日からまた旅を再開しよう!』
『賛成!』
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