幽霊が出る宿
山道も下りに入り時々、ホーネットやキャタピラーといった虫の魔物に遭遇するも順調に進んでいく。 コルネはまだ俺達の事を警戒しているみたいで、こちらから話しかければ返事を返してくれるも、馬車の隅で立て膝の姿勢でずっと俯いている。
『今は気持ちが落ち着くまで、時間がかかるだろうからそっとしておいてあげよう。』
二日に渡る山下りを終えると、トラバスさんが地図を確認する。
『ようやく難所だった山越えが終わったね。 目的地の〈ベルファス〉まで残り半分くらいだよ。 この先を進むと宿場町に繋がる街道に出るはずだ。』
『気のせいか、山を越えてからすごく肌寒くなってきたんだけど…』
『私も思った。 見て、息が白くなってるよ。』
『この辺りの気候は夏でも夜になれば0℃を下回る事があるそうだよ。 冬に至ってはマイナス40℃まで気温が下がるんだ。 ラッキー君とアルトさんは購入した防寒着を身につけてくれ! コルネさんには申し訳ないけど、次の町で防寒着を購入するので、それまではトランが温めてあげてくれ。』
フレイムウルフの身体は外気の影響を受けず、常に温かい身体の体温を維持できる為、ストーブの側にいるような感覚になる。 夏場は逆に、じゃれつかれると汗だくになりそうだ。 初めこそ、トランが近づくと怯える様子を見せるコルネさんだったが、寒さで震える身体を包み込んでもらうと安心した表情を見せる。
『すごく温かい、ありがとう。 怖がってゴメンね…』
道が街道に繋がり、夕方になる頃には宿場町に到着する。 まだお店がやってる時間に間に合ったので、アルトにはコルネさんの防寒着を買うのに服屋に付き添ってもらい、俺とトラバスさんは今晩利用できる宿を一緒に探す。
『すいません、二人部屋を二つと従魔も一緒に泊まりたいのですが利用出来ますか?』
『悪いね、ウチは従魔はお断りしているんだ。 この辺の宿はどこも同じ返事をすると思うよ。 唯一、宿場町の外れにある寂れた宿が一軒あって、従魔も受け入れてくれるらしいけど…出るって噂だからおすすめしないがね。』
『出るっていったい何がですか?』
『決まっているだろう…幽霊だよ! 寂れた宿だから格安なのをいい事に、金を浮かせたい旅人や冒険者が幽霊を見て次々と死ぬような思いをしたらしい。』
『トラバスさん、幽霊ならアルトが何とかしてくれそうじゃないですか?』
『そうだね、他に選択肢も無さそうだから二人と合流したら行くだけ行ってみよう。』
アルトとコルネさんと合流し幽霊の出る宿の話しをする。 コルネさんは購入した防寒着を早速身につけている。
『なるほど、上手くいけば逆に新しく死霊を契約できるかもしれないね。 コルネさんは幽霊とか大丈夫な人?』
『怖くないと言えば嘘になりますが、〈ネクロマンサー〉のアルトさんがいるなら大丈夫だと思います。』
こうして、俺達は今晩の宿を利用する為、噂の幽霊が出る宿に行く事にした。
この小説を読んで「続きが気になる」「面白い」と少しでも感じましたら、ブクマと↓の☆☆☆☆☆から評価頂けると嬉しいです。 いいねもよろしくお願いします。




