依頼の達成
『二人とも、あの鉱石はひょっとしたらお目当ての〈炎狼石〉かもしれない。 傷つけない様に先ずは周りの岩石も含めて大きく掘り出そう。』
赫い石を含んだ岩を慎重に取り出す。
『上手くいったね。 ここからは私の魔道具を使おう。 魔力を注ぐと水を生み出す魔石と思ってくれ。 水で岩の部分を柔くしながらタガネやブラシで少しずつ剥がしていこう。』
『その魔道具便利ですね。 かさばらないし、遠征する時の飲み水の確保が出来てしまう。』
『私が今まで君達に支給していた飲み水は実はこれを使っていたのさ。 よし、〈炎狼石〉に間違い無い! 綺麗に取り出せたみたいだ。 トロン、私がこれに魔力を注ぐから触れてごらん。』
トラバスさんの魔力に反応した〈炎狼石〉は強い光を放つ。 トロンが触れると黒っぽい毛が赫く変化し、身体つきも大きくなった。
『凄い! 魔物の進化に立ち会えるなんて!』
『私もワイルドウルフの進化を初めてみるが上手くいったようだね。 〈フレイムウルフ〉になれたようだ。 トロン、炎のブレスが出せるか試してみてくれ。』
トロンで炎を吐き出すと離れていても強い熱波が伝わってくる。
『私の目的は無事に達成できたから、今度はラッキー君の分を時間の限り探してみよう! 一つ見つかったという事は周りにまだ〈炎狼石〉が眠っているかもしれない。 各自、距離をとって採掘してみよう。』
三十分おきに休憩を挟んで半日以上採掘するも〈炎狼石〉は見つからない。
『トラバスさん、流石に皆んな疲れたのでお終いにしましょう。 俺の分まで採掘に付き合ってくれてありがとうございました。』
『残念だが諦めるか…ラッキー君、アルトさん、せめてアンヒィスバエナの素材を解体すれば結構なお金になるだろうから皆んなで持ち帰ろう。 ただし牙と毒袋には触れない様注意してくれ!』
アンヒィスバエナの鱗はカバン等に加工すると丈夫で軽く高値で取引されるらしい。 皆んなで作業中にお腹の部分切り出していると中から石のような物が転がり落ちる。
『ラッキー君、君はついているぞ! まさかコイツが〈炎狼石〉を飲み込んでいるとはな。 消化できずに腹の中に残っていたんだね。』
『やったね、ラッキー。 ホルンに早速使ってみるの?』
『出来れば強制はしたくないからホルンの意志を確認したい。 進化してみるかい?』
『ウォン!』
『わかった! じゃあ魔力を注いで見るね。 良いよ、ホルン。』
こうしてホルンも〈フレイムウルフ〉に進化する事が出来た。
『では目的も果たしたし君達の依頼は達成だ! 屋敷に戻ったら報酬を用意させてもらうよ。 探索終了だ!』
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