意外な決着
『なんだお前ら、俺様の手駒を増やす邪魔をしに来た訳じゃないだろうな!』
俺達の前に現れた痩せ型の中年男が俺達を睨みつけてくる。 どうやらアイツが墓荒らしをしたネクロマンサーのようだ。
『何あの男…杖の先に動物の頭蓋骨を乗せて気味が悪い。 アンタみたいな奴がいるせいでネクロマンサーのイメージが悪くなり、私まで周りに毛嫌いされてしまったじゃない! どうしてくれるの!!』
『なんだと、このガキ! 自分が嫌われているからといって人のせいにしやがって! 丁度いい、苦労して集めた俺様の手駒を披露してやる! 出よ、ゾンビども!!』
男が魔力を解き放つと、この墓地に埋葬されてたであろう人達がゾンビやスケルトンにされて俺達の前に立ちはだかる。 その数は実に五十体はいるだろう。
『気をつけろアルト! アイツ、見るからにすぐにやられる見た目をしているけど、これだけの死霊を操る魔力を持ってやがる!』
『大丈夫よ、ラッキー。 アイツのゾンビ達ははっきり言って雑魚よ。 戦ってみたらすぐにわかるわ。』
アルトの挑発に怒り狂う男。
『いちいち生意気な奴め! お前達もゾンビにして一生こき使ってやる。 お前ら行け!』
戦闘が始まるとアルトが言った通り、ゾンビ達はまるっきり手ごたえを感じない。 わざわざスキルを使う事無く簡単に倒れてる。 ホルンとアルトが操るゴブリンスケルトンも容易にゾンビ達を倒していく。 気づけば動いているゾンビ達は一体もいなくなっていた。
『何故だ! これだけの数がいてガキ二人と犬コロ一匹が倒せないんだ!!』
あっ、犬コロ発言にスイッチが入ったホルンが男に襲いかかる。
『ひぃっ!』
逃げようとする男をアルトが俺に試した〈闇魔法〉で拘束すると悪い顔をしたホルンさんが男をフルボッコにしていく…
『ぎゃーーっ!!』
あれは痛そうだ。 こうして驚くほど早くに決着がつくと俺達は男を縛り上げ、冒険者ギルドに連行するのだった。
ちなみに男の犯行動機は周りからいつも馬鹿にされたり気味悪がられた事に対する復讐として仕返しをしようと犯行に及んだらしい。
『ところでアルト、何故アイツのゾンビが大したことないとわかったんだ?』
冒険者ギルドからの報酬の受け渡しは明日という事で、ギルドの食堂で夕食を食べながら俺は質問する。
『何故ってそりゃあ、あれだけの数を一度に操る為には莫大な魔力が必要になるでしょう? つまり燃費を維持する為にはゾンビ一体ごとに注げる魔力が少なくなって単調な動きになる訳よ。』
『なるほど、じゃあ俺の〈テイマー〉スキルも魔力が低いうちは魔物を沢山使役してもアイツと同じ墓穴を掘りそうだね。 注意しなくちゃ。』
『アイツのした事は決して許される事では無いけれど、私も道を踏み外していたらあんな風になってたら嫌だなって今回の依頼で思ってしまったの…ラッキーと出会えて本当に良かったよ。』
『俺だって心が強い訳じゃない、失敗する事ばかりだよ。 これからもお互いに助け合って頑張っていこう!』
『うん。 それとね、私に力を貸してくれたファゴットさんなんだけど、奥さんがアイツから解放された事で先に成仏出来たそうなの。 自分も良い行いを増やして奥さんの元に行けるようになるまで、私に力を貸してくれるんだって。』
『それは心強いね。 よーし、俺も早く魔法が使えるようになるよう頑張るぞ!』
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