ネクロマンサーVSネクロマンサー
俺達が街の墓場に着くと、辺り一面、墓という墓が掘り起こされた状態で腐敗した匂いが立ち込めていた。 それにしても俺の受ける依頼は何故、臭い仕事ばかり回ってくるのだろう…
『誰がこんな事を! 酷すぎる。』
『ほんと許せないわ! 絶対に犯人を捕まえないと。』
俺達はひとまず、ホルンの嗅覚で犯人の痕跡探しと墓に眠る死者からアルトの力で情報収集する事にした。
『アルト、情報が聞き出せそうな人(死者)は見つかったかい?』
『それが墓に眠っているはずの遺体がことごとく持ち去られたみたいで話せる相手が見つからないのよ。 あっ、あそこに墓の人と思われる〈レイス〉が一人見つかったから行ってみよう!』 〈レイス〉というのは肉体を持たない幽霊の事だ。
『すいません。 私達、冒険者ギルドの依頼で墓を荒らす犯人を探しているのですが何か知りませんか?』
荒らされた墓の前で悲しい顔をした〈レイス〉にアルトが話かける。
『見てくれ! この有り様を…ここは生前、愛した妻の墓だったんだ。 俺はファゴット。 生前、〈闇属性〉を使う〈魔法使い〉だったんだが冒険の最中に命を落としてしまった。 〈レイス〉となってこの街に戻って妻を陰から見守っていたんだ。 妻も歳をとり生涯を終えて、この墓に来てからようやく再会を喜び仲睦まじく過ごしていたのだが、忌々しいあのネクロマンサーがこの墓場に眠る遺体をゾンビやスケルトンとして自分の支配下にしやがった!』
『ネクロマンサーは自分で触れて魔力で支配下にした死霊しか呼び出す事が出来ない為、そのネクロマンサーは自分の手駒を増やす目的でこのような行為をしたに違いないわ。 私も討伐したゴブリンスケルトンとキラーラットゾンビ、そして過去に偶然出会ったウィルオーウィスプしか呼び出せないのはそういう理由なの。』
『ネクロマンサーにはそういう制約があるんだな。 知らなかったよ。』
『なあ、お嬢ちゃん。 ひょっとして君もネクロマンサーなんだろう? 俺は妻の遺体をゾンビにしたネクロマンサーに仕返しがしたい! だが、肉体を失った俺は生前の魔法を使えなくなってしまった…そこでネクロマンサーには〈憑依〉というスキルがあると聞く。 試しに俺を〈憑依〉させ、お嬢ちゃんが俺の魔法が使えるか試してくれないか? 安心してくれ、俺は仕返しがしたいだけであんたの肉体を奪うつもりはない!』
『そういう事でしたら…やった事が無いので上手くいくかわかりませんがファゴットさん私の身体に来てください!』
ファゴットさんの霊体がアルトの身体に宿る。
『不思議な感覚です。 私の意識の中にファゴットさんが使える魔法や冒険の知識が浮かんできます。』
『どうやら上手くいったようだね。 君はアルトというんだね。 俺には君の名前がわかるだけみたいだが君の頭の中で会話が出来るようだね。 試しに頭に浮かんだ魔法を使ってもらえるかい?』
『やってみます。 ラッキー、危険な魔法じゃ無いから標的にさせてもらえないかな?』
『わかった! アルト、やってみてくれ!』
『行くよ! 〈闇魔法〉ダークバインド!』
『なんだこれ! 身体にまとわりつく黒いモヤに縛られて動けない…』
『どうやら俺の魔法を使いこなせたみたいだな!』
『はい、ごめんねラッキー。 今、解除するから。』
その時、ホルンが吠え、何かが来る事を俺達に知らせてくれる。
『この忌々しい魔力はあのネクロマンサーに違いない! 二人ともアイツをどうか倒してくれ!』
『はい! アルト、ホルン行くぞ!』
『うん、任せて!』 『ウォン!』
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