いざ航海へ
翌日、トラバスさんの館の前で全員が集まるとスレイプニルの馬車でユニオンに転移する。
『ここがユニオン島かぁ。 トラバスさん、航海前に追加で購入しておきたい食料があるので、クレオルの町も見て行きませんか?』
『そうだね。 この近海の潮の流れや、出現する魔物の情報を調べておくのも手かもしれない。 私は港の方で情報収集に向かうから、ラッキー君、アルトさん達を案内してあげてくれるかい。』
『それでは、私はトラバスさんと一緒に行動しますね。』
セレナさんはトラバスさんと一緒に港の方に向かう。 従魔達は一度、ハウスアンデットの中で待機してもらい、俺とアルト、コルネの3人はクレオルの町を見て歩く。
『ラッキー、準備してくれた食料の中に柑橘類を購入してなかったでしょう? 船での長旅では壊血病と呼ばれるビタミンの不足が影響して起こる病気があるの。 航海に出る前に補充していくわよ。』
『そんな病気があるのか?! 知らなかったよ。 俺はてっきり、町を観光して回りたいのかと思っていたよ。』
『もーっ! 流石に旅が始まるタイミングで、いきなり観光しようとするはず無いじゃない!! ラッキーったら、相変わらずよねー…』
『まぁまぁ、アルト。 いつもの事じゃない。 あっ! 2人とも、市場が見えてきたよ。』
コルネが指を指した方を見ると、様々な種類の獣人達が店を出していて、新鮮な魚や野菜、果物などがいっぱい並んでいる。
『そこのお姉ちゃん! 今朝、水揚げしたばかりの新鮮な魚はいらないかい?』
『こっちはユニオン産で有名なメローやマーゴを扱ってるよ! いっぱい買ってくれたらサービスするぜ!』
『すごく活気があり賑わっているね。 あのお店で柑橘類やその他の果物も購入していこうか。』
『お客さん、ひょっとして?! 先日、スタンピードから島を守ってくれたテイマーの男の子じゃないか! 私からの感謝の気持ちだ。 お金はいいからいっぱい持っていきな。』
肝っ玉母さん的な雰囲気の、犬の獣人の店主が果物をいっぱい渡してくれると、周りの店の人達も俺に気づいて食材を無料で提供してくれる。
『まさか無料でこんなに食材がもらえるなんてびっくりしたよ。 ラッキーのおかげだね。』
3人で両手いっぱいに食料を抱えながら港に向かうと、タイミングよくトラバスさん達と合流する。
『3人とも、どうしたんだい?! 凄い量の食料じゃないか!』
『実はこんな事がありまして…』
トラバスさん達に先程の出来事を伝える。
『それは良かったじゃないか。 ラッキー君は英雄として、広くこの島で知れ渡ってしまったみたいだね。 私達の方も一通り、情報収集終わったから出発しようと思う。』
アルトにアンデットシップを召喚してもらうと、コルネとセレナさんが先程の食料を食在庫に整理する。 俺とトラバスさんはハウスアンデットで待機してもらっていた従魔達を船に乗せ、アルトはアンデットの海賊達に航海の経路について指示を出す。
『よし、準備は整った。 これから船での航海の始まりだ! アルトさん、よろしく頼むよ!』
『了解です。 海賊達、出発するよ!』
ユニオン島を離れ順調に航海を続けていると、一つの問題が起きる。 船の船室のほうから俺達以外の人の気配を感知したのだ。
『おかしい! 船が出発する前に、船内を一通り千里眼を使って確認していた筈なのに。』
『まさか、密航者? とりあえず、幽霊達を使って接触させてみよう!』
アルトが複数の幽霊を気配のあった船室に放つと、中から悲鳴が聞こえてくる。
『ぎゃーーっ!! なんだよ、この船! スキルで気配を消して潜伏していたのに、幽霊がうじゃうじゃいるなんて、ありえないぞ!!』
皆んなで船室に突入すると、中には狐の獣人の男が1人、幽霊達に囲まれて震えている。
『とりあえず、武器などを所持しているようならこちらに渡してもらおう。 それと何故、密航したのか説明してもらおうか?』
トラバスさんが、普段あまり見せない強い口調で話しかける。
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