第五話 ユフィの屋敷
やってしまった……。
「マーカスたら大胆なんだから♡」
「こんなとこで勢いに任せて抱いて悪かった。」
「全然良いよ、それよりユウフック王国に行くからぼくに乗ってよ。」
「乗るって……」
「マーカスは苦労した分は楽して良いんじゃないかな?」
「それもそうか。」
リビアは腰を下ろし背を向け、俺はおんぶしてもらいユウフック王国へと一緒に向かう。
風を切る感覚が心地良く、リビアからは良い香りが漂い髪の毛がもふもふしており再び眠気を誘う。
(なんだか、また眠くなってきたな……やはり疲労が抜けきってない証拠だな。)
「マーカス、寝てて良いよ? まだ疲れ取れてないでしょ?」
「あ、ああそうさせてもらうよ。」
俺はリビアから落ちない様に両腕を回し器用に眠ることにした。
「ふふ、もうすぐ着くけど起こさない様にしないとね。」
そうこうしてるうちにユウフック王国へと着き、城へと向かう。
「リビアよ、よく来たのう。 む、マーカスも一緒か?」
「今は疲れて寝てます、それよりも聴いてくださいよ! ホロビーユック王国の人達酷いんだよ!! マーカスを働かせておいてろくにお金払わないどころかダンジョンに置き去りしてモンスターの餌にしようとしてたし!!」
「なんと!? それは酷い離しだ、他国にも報告しホロビーユック王国とは縁を切ろう!! 少ないが大金貨五百枚をマーカスへ贈らせてもらおうかの、昔世話になったからの。」
「ありがとうユウフック王! マーカスが眼を覚ましたら渡しておくよ。」
「うむ。」
リビアは城から出ると暫く歩き、ブロンド髪の女性を見かける。
「あら、マーカスおじさまじゃない!!」
「えーと?」
「わたくしはユフィと申しますわ、お父様とも話をしたばかりですので今日は家で泊まってくれて構いませんよ?」
「本当! 良かった、昨日は外でしか寝かせられなかったから助かるよ!!」
「では、行きましょうか♡」
リビアはユフィに連れられ大豪邸へと入り、マーカスの汚れた身体を拭く為メイド達が服を脱がし洗濯し風呂場へと移動させる。
「ん……何だ……?」
「ユフィ様もご同行されますか?」
「勿論ですわ、マーカスおじさまと一緒にお風呂入りたいから♡」
「ぼくも良いかな?」
「ええ、マーカスおじさまは皆に等しく愛される権利がありますもの♡」
(何がどうなってるんだ? 何で裸なんだ俺!?)
俺は未だに身体が重く動けないでいると広い脱衣所に下ろされ壁に寄りかからされるとメイド達やユフィとリビアは服を脱ぎ裸になる。
(え? え? 何してるの、この人達!? 俺男だよ? 軽々しく女の子が裸見せたら良くないよ?)
「ユフィ様によるマーカス様を皆で綺麗にし臭いを無くす為の行為であり決してやましい事をするわけではありません。 あわよくば私達もマーカス様に愛してもらえるよう細心の注意を払い癒やしましょう!」
「「「「はいメイド長!」」」」
「あ、マーカス起きた? 今から皆でお風呂入るよ♡」
裸の女の子達に上から覗かれるまさに”男の夢“を実現してるかの様な光景に心臓のバクバクが止まらない。
「さあ皆さんマーカス様を綺麗にしますよ♡」
「「「「はい♡」」」」
ゴシゴシと全身を洗われる感覚は悪くなく、今まで身体に溜まった垢が取れスッキリしていく。
「気持ち良いな。」
「わたくしはマーカスおじさまの頭を洗いますわ♡」
ユフィに上半身を起こされ背中に柔らかい二つの感触が在り、わしゃわしゃと頭をマッサージされ髪の毛を丁寧に洗われる。
「凄い、何時もは泉で水浴びするくらいだったが風呂ってのはこんなにも気持ち良いんだな。」
全身にムニュムニュとした感触の存在が女の子特有の物だと判断し未だに疲労は抜けていないため身を委ねることに決めた。
マーカスが天国に近しい行為を受けている中、ガメスとイレーネは肩慣らしに塔のダンジョンへと危険指数Sランクのフェンリルを討伐しに来ていた。
「もう剣が元の状態に戻ってるなんてホロビーユック王国の鍛冶屋は仕事が早いしマーカスと違って流石よね。」
「ああ、今回なんて何時もより剣が軽くなって扱い易くしてくれてるぜ。」
「まじ!? 凄い進歩じゃない、今度私も杖鍛えてもらおうかしら? 木製だけどね。」
「あの鍛冶屋なら可能だろ、ほら見ろよフェンリルが居るぜ?」
「寝てるみたいね、石でも投げよっか?」
「まあ待て、寝てる相手を叩くなんてフェアじゃねえ。」
「それもそうね、起きなさい!!」
イレーネは大声を出すとフェンリルは眼を覚まし、ガメス達を見るも再び眠りにつく。
「ちょっと! 何また寝ようとしてんのよ!?」
「舐めんじゃねえぞ獣の分際で! オレ達の力を甘く見んじゃねえ!!」
「…………」
フェンリルは渋々起き上がり伸びをし欠伸をするとクイクイと顎でかかって来いと言わんばかりに徴発する。
「こいつ馬鹿にしやがって後悔させてやる!!」
「そうよ! 私達は誰にも負けないくらい実力があるのよ、マーカスのくだらないバフ魔法なんて簡単に覚えてるんだから!!」
「イレーネ、バフ魔法を!!」
「分かってるわ“マキシマム”!!」
マキシマムはマーカスのオリジナル魔法で他人が使ったところで練度に違いがあることを知らないイレーネは何時も通りの身体強化と魔力強化が得られていると思い込んでおり、ガメスもモンスターを圧倒出来ると考えフェンリルへと斬りかかる。
「オレ達を舐めた報いを受けな!! ……あれ?」
剣を鞘から引き抜き振り下ろし気付く、剣の長さが半分まで短くなっていることに驚愕する。
「ガメス?」
「ぶげええええ!!」
飛びかかったガメスへとフェンリルは馬蹴りをし壁に激突する。
「え、何で!? マキシマム唱えたのに!?」
「くっそ、あのフェンリル手加減してやがる!!」
「どうやら普通のフェンリルじゃ無さそうね、魔法ならどうかしら? ブレイズショット!!」
イレーネは火炎の珠のブレイズショットを放ちフェンリルへと飛ばすが、フェンリルは大きく息を吸い込むとブレイズショットを吹き飛ばしイレーネの頭へと跳ね返され髪が燃える。
「きゃあああああああああ!!」
「イレーネ!!」
イレーネの頭の火をガメスと消した頃には髪の毛がチリチリになってしまう。
「あぁっ……髪の毛……私の髪が……!!」
フェンリルはフッと鼻で笑うとその場から立ち去り、残されたガメスとイレーネはおめおめと逃げ帰るハメとなった。