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第一話 裏切られたおっさんは猫耳獣人族に助けられる。

 裏切られた……、モンスターの群れが直ぐそこまで向かって来ている。


 朦朧とする意思の中で何をされたのか少しずつ理解していく。


 そうだ……簡単な受けてヘルハウンドの群れを討伐するだけの受けて来たら居ない筈のブラッドハウンドが居て皆が逃げてる最中に身体が痺れて動けなくなったんだった。


 この魔法は確か恋人のイレーネがかけたとしか思えない、リーダーのガメスも妙な雰囲気があった……あぁそうか……あの二人俺を屠る為に仕組んだな?


 もう無理だ、どう足掻いても助からない……この俺マーカス・バックヤードの命もここまでか……


 眼を瞑り死を覚悟していたが一向に痛みを感じず、薄めを開くと眼の前には何者かがしゃがみ込んでおり純白の布地がスカートの中から覗かせている。


「ねえ大丈夫?」


「大丈夫じゃない……」


「さっきの人達だよね? 隠れて見てたから分かるよ、仲間犠牲にして逃げるなんて最低だよね!」


「ああ、最低だな……」


「身体痺れてて飲めそうにないかな? んく……、んちゅ……」


 見知らぬ声の主は何かを口に含み口移しで俺に飲ませる。


「ふぅ~、これで動けるようになったかな?」


「ああ、ありがとう助かったよ。」


「ぼくはリビア! リビア・レイキャスト、獣人族だよ!」


「俺はマーカス・バックヤード、よろしくな。」


 今はハッキリと相手の姿が分かる、健康的な褐色肌でパッチリとした黄色の眼に長く白い髪の頭上に猫の様な耳があり、胸は控えめだが腰のラインが美しく手足には獣の様に体毛で覆われており腰の辺りから尻尾が生えていた。


「マーカスはこれからどうするの?」


「んー取り敢えず街に戻っても、また命狙われかねないし旅に出ようと思う。」


「旅かあ、いいね♪ ぼくも一緒に行きたいな。」


「ああ、一人よりは誰かと一緒の方が楽しいから大歓迎だ。」


「やった! ぜんは急げ、こんなところ速く出よう♪」


 リビアに手を引かれ洞窟のダンジョンから出ると空には星が瞬き雲一つ無い晴れ模様だった。


「なあ、一つ聴いていいか?」


「なにかな?」


「何で俺を助けたんだ?」


「んー、マーカスは覚えてないのかぁ……一言で言うなら”命の恩人“だからかな。」


「命の恩人?」

(こんな可愛い子と会った記憶は無いが……)


「それよりもあいつら酷いよね、冒険者って仲間犠牲にして逃げるなんて最低だよ!」


「まあ仕方ないさ、俺は貧民街の出身で低賃金で雇われては無理な仕事をさせられてきたからな。」


「え? 低賃金てどれくらい?」


「分かるだけでも大銅貨三つだよ。」


「少な!? それ労働者完全に舐め腐ってるじゃない!! もうそんなとこで働かなくていいよ!!」


「そうだな、俺もストライキを考えていた。 国も何時まで経っても貧民街の人達の声を聞く耳もたなかったし流石に疲れたよ。」


 俺はコキコキと凝った肩や首の音を鳴らしながら語る。


「うーん、なら近くの村に行っても同じかな? そうだ、この森に開けた場所があるからそこに行こうよ♪」


「外で寝るのは慣れてるし、分かった行こう。」


 暫く歩くと開けた場所へと出ると川が流れており、リビアは慣れた手付きで魚を取って行くと火をたき魚を木の枝に刺すと焼いていく。


「今日の晩ごはんは少ないけど焼き魚だよ♪」


「美味そうだな、何時もと違って凄いご馳走だ。」


「ご馳走て何時もはなに食べてたの?」


「雑草……」


「うわ……それは酷いね。」


「食べる時間も無いくらい忙しかったからな、飲食店や冒険者ギルドの雑用、鍛冶屋で城の兵士や冒険者の装備品の鍛え直しとか街中へとモンスターが入って来れない様にしている魔導具のメンテナンスや薬屋での調合など様々だよ。」


「それ放置したら大変なことなりそう。」


「だな、けど俺は何度もやってはいたが全く覚えようとしない奴が悪いとしか思わん!」


「それはそうだよね、魚焼けたよはい。」


「ああ、ありがとう。」


 焼き魚を口にすると今までの疲れが一気に吹き飛ぶくらい美味しく自然の恵みに感謝しながら一口ずつ噛み締め味わう。


「ねえ、マーカス良かったらだけど」


「ん?」


「やっぱり何でもない!!」


 リビアは顔を赤くし何を言いかけたのかブンブンと首を横に振り誤魔化す。


「気になるな。」


「た、大したことじゃないから。」

(旅が終わったら一緒に暮らそうなんておこがましいこと言えないよね。)


 一方、ガメスとイレーネは冒険者ギルドにてマーカスが不慮の事故で亡くなったことを告げ受け取った金銭で祝杯を上げていた。


「「乾杯!」」


 白い短髪の男ガメスと茶髪のショートヘアの女イレーネは樽ジョッキを当て合い、マーカスの最後の顔を肴に宴をしていた。


「いやあ、あの目障りなおっさんの最後の顔見たかよ最高だったぜ!」


「ええ、彼女になったふりしてたから本当にあの表情は笑えたわ!」


「はい、お二人さん料理おまちどう。 俺も見てみたかったぜ、この頃ギルドの雑用ですら手を抜いてたからなくたばってくれて気分が良いぜ!」


 冒険者ギルドのマスターと飲食店の店長も居り、国の兵士も何名か来ており祝杯を上げる。


「いやー、ガメス王子の作戦で本当に目障りな貧民街の連中が居なくなってスッキリしましたよ。」


「はは、当たり前だろ? 国に何の得も無い奴なんて要らないからな、イレーネもそう思うだろ?」


「そうよね、あのおっさん自分が仕事出来ると思ってたのが勘違い甚だしかったわ。 それに彼氏にするなら将来有望なガメス様に決まってるじゃない、ねえ? ちゅ♡」


「おいおい、皆が見てる前だぜ?」


「関係無いわ♡」


 ガメスやイレーネ、冒険者ギルドのマスターや城の兵士達はマーカスの事を好き勝手言うが国から出て行かれた事で低賃金で働かせていたことを後悔するとはこの時は誰一人として予想だにしていなかった。


 マーカス・バックヤード、器用貧乏を極め全てが万能であった超が付く程の天才に見放された【ホロビーユック王国】の国家崩壊まで後僅かとも知らずに……

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