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第八話 誰が何のため

 真夜中のホテル。濡れた服を取り替えて、シャワーを浴びた。鏡には捨て猫のような顔。目を逸らし、歯を食いしばる。ナイスガイとはかけ離れた現実──完璧とはほど遠い行い。揺らめく湯気が鏡を曇らせた。気付けば数十分経っている。ハルタは浴室から出た。

 ハルタはゴドー刑事と相部屋。双子(アイノ/ライノ)とベリコは隣の部屋に居る。疲れた顔をしていたからか、ハルタは、ゴドーから何か言われたが何も耳に入らなかった。疲れているので、と謝罪する。

 ベッドへ横たわり、逃げるようにそのまま熟睡。

 悪夢を見た。

 黒焦げで煤だらけの街に、炭化した人々が歩いては、皆一様にハルタの名を唱えている。満身創痍の身には堪える夢だった。飛び起きて、グラスの水をあおる。

 朝というにはまだ早い時刻。カーテンの向こうはまだ暗い。隣ではゴドーがいびきをかいていた。深く息を吐く。

 脳裏には警備AIとは別の、死者達のイメージ。

 呪いだ。呪いで縛り付けられている。

 自分は人々を助けられなかった。一人で抱え込むには難し過ぎるとはいえ──消えていったすべての人の魂のために償わなければ──責任を取らなければ──でも、どうやって? 

 これからどうすれば良い?

 これから、一体……。


 内側から燃え上がる激情が、ハルタを蝕み、食い破ろうとする。眠ってしまおうにも胸が苦しく寝付けない。そうこうしているうちに太陽は昇り、やがて室内が白ずんでいく。朝だ。

 どんな心持ちであろうと世界に夜明けは訪れる。問題は、夜明けを受け入れる準備が出来ていないこと。止まない雨はないなんて言葉を信じながら、いつの間にか濡れるのに慣れきって──雨の降らない日に戸惑ってしまっている。

「生き残ってしまった」ことを後悔している自分が居た。「もう、完璧ではないって言うのに……」

「完璧であるなんざ、不可能だよ」

 そう言ったのはゴドー刑事。横たわったまま。目も瞑っている。

「起きていたんですね」

「いや……起きたのは今、だ。それにしても、お前さん、若いねえ。完璧か。確かに憧れるよなぁ。失敗のない人間、悔いのない人生──ってか? ゲームじゃないんだ、答えなんかなけりゃ、完璧なんてないのさ」

 ハルタはふっと気を緩めて微笑した。

「なら、どうすれば良いんでしょうか」

「良いか、フタミヤ君。失敗には二種類ある。やって良い失敗と、取り返しのつかない、駄目な失敗だ。前者は良く、失敗すべきだと表現される時に使われる。いわゆる試行錯誤(トライアンドエラー)の、錯誤(エラー)の部分だな」

 吐息で相槌。刑事は目を開けて、ちら、とハルタを横目に見る。視線が合ったのを確認して、

「後者は失敗と聞いてイメージする通りのものさ。例えば交渉で上手くいかなかったとか、人を殺めちまったとか、娘が消えたまま見つからない、とかな」

 ゴドーはそこで大きく伸びをすると、起き上がった。まだ眠そうである。また、見られているような気配。猫の鳴き声は聞こえなかった。

「……確かに、それはもう、やり直しがきかないですね」

 現実は仮想(ゲーム)ではない。過去を変えることなど不可能だ。記憶が残る限り、何も変わらない。

「どうしてお前さんが、爆発しない経路を案内できたのか、考えたんだ。つまり……そういうことか?」

 ハルタは罪を自覚して、首を縦に振った。ブリッジシティでのことは、街の爆発は、俺がやったようなものです、と。

「奴らがやったことだろう? 君の責任じゃない」そうゴドーは言う。

「でも──」

 ハルタは歯噛みした。騙されたとは言え、仕方ないとは思えない。

「でも、なんだ?」ゴドーが鋭い眼差しをハルタに向ける。「お前さんに何ができたって言うんだ」

「俺は、誰よりもあの場に近かったんです。爆弾だって、家の中にも仕掛けられていたと知っていれば……」

「君が抱え込むようなことじゃない。自惚れるな。それは傲慢だよ」

「傲慢……」

 ハルタは繰り返した。アイデンティティが揺らいでいる。ナイスガイの生き方とは、完璧さを求める在り方ではないのか。今になって、答えがわからなくなってしまっている。

「生きていれば、案外というか意外にもというか──何度だって生き直せる」刑事はにやりと笑った。無言で先を待つ。「文字通り甦るんだ。本当のところ何があったかは、言ってくれないと知りようがねえが──心ってのは沈むことはあっても、死にはしない。身体がある限り、な。状況が状況だ。深堀は後で……。もう少し眠っておきな」

 俺も眠る、とゴドーは眠りにつき、早々にいびきをかき始める。ハルタの目には涙が滲み、溢れないように、目蓋を閉じた。


「フタミヤ君起きてる?」

 と、ベリコから連絡があったのは午前八時頃。眠れずにいたハルタは、無造作にウインドウを開き、返事する。カーテンは流石に開けた方が良いだろうか、けれど今の自分に光は眩し過ぎる──なんて考えながら。

 うじうじするな、俺。

 ハルタは自分にそう呼びかけて、ウインドウを見つめる。映るのは寝癖で髪が重力に抗うベリコの姿。しかし表情は真剣そのものだった。

「今すぐニュースを見て」

 剣幕に押され、ハルタは更にウインドウを増やし、ニュースクリップを表示。呆然とした。映像では、キャスターが昨晩──七月二十九日、天乃浜市全域で起きた爆発について説明している。曰く、フタミヤ・アンタロウ、フタミヤ・ハルタ親子が主導してのことである、と。

 最後に写真付きで指名手配されるところで映像は終わった。

「ベリコさん、これは……」

「あたしにもわからない。ゴドー刑事は起きてる?」

「今起きた」隣からゴドーが顔を覗かせる。「話は聞かせてもらったよ」

「今からそちらへ向かいます」とベリコ。

「わかった。鍵を開けておく」

 刑事は言ってから、ハルタに目配せした。

 程なくして四人は合流。すぐに本題へと入る前に、研究所で起きたことについてハルタは説明した。ただ、爆破テロに加担してしまったことについては、ついぞ言えなかったけれど。

「フタミヤ・アンタロウがカンザキ所長に成りすましていた、ねえ……」ゴドーが険しい顔つきで腕を組む。

「君はどう思ったの?」ベリコに訊かれて、

「もしそうなら、どれだけ良かっただろうと思いました」ハルタは率直に答えた。

「だが(アンタロウ)の遺体は実際にこの目で見ている。偽装された形跡はなかった。生きているだなんて、あり得ないことだよ」

「はい」だが、それでも信じてしまったのである。「そこで一つ、思い出したことがあるんです」

 と、ハムロ・カイについて説明した。いつかアンタロウが言っていたこと。また、カイがベリコに変装しているのではないか、という仮説を。

 話を聞き終えて、ベリコは目を細めたまま、口元を緩ませた。

「あたしが、実は兄さんだった、か──面白いこと考えるわね」しかし探偵は顰め面になり、「でも言いたいことはわかる。確かに、自分が何者かなんて、証明するのは難しいものね」

「所長……」アイノが切なそうに呼びかける。

 ベリコは表情を変えずに、口角を上げてみせ、

「でもそれはフタミヤ・アンタロウも同じ条件よ。彼が何者か──その正体は、恐らくだけど──あたしにはわかる」

 ゴドー刑事が眉を上げて、「それは? やっぱりカンザキか?」

 ベリコは首を緩々と振った。

「カイ──あたしの、兄さん」瞬間、探偵モードに切り替わったらしい。凛々しい表情に変わり、「まずは彼が何故、フタミヤ・アンタロウではないのか、から。一つには、ゴドー刑事が遺体を確かめている。二つには、アンタロウが扮するカンザキ所長からは、感情が見られなかったことが挙げられる」ベリコは首を傾げ、「フタミヤ君。お父さんは、AIじゃないよね?」

 ハルタは頷く。「両親とも人間です」

「そう……。なら、確かな矛盾ね。もちろん、死後AI化されたという可能性も否めない。そして三つめ──これは根拠としては薄いけれど──ジータ・チェンが彼の名を聞いた際、記憶を探っている様子だったこと。普通、自らカンザキ所長の正体を晒すような真似をするかしら」

「でもそのお陰でフタミヤさんに罪を被せることができますよ」アイノが反論。

「報道されていたしな」ゴドーが補足した。

「そう、正体を晒した理由はそこにあった」としてベリコは認めた上で、「ならばこそ、カンザキ所長の正体がフタミヤ・アンタロウではない可能性の方が高くなる。そう思わないかしら?」

 説得力はある。だけど、証拠がない。

「一理あります」と言ったのはアイノで、「ならお兄さんだと思うのは、どうしてですか」

「確証はないの。でもね、今までのことを思い出してみると、そうなんじゃないかしらと思えてね。例えば感情。カイも感情がなかったのよ」

「それって──」アイノが言いかけて、

「あたしに説明させて」ベリコが手で制止した。「兄さんは先天的な感覚障がいがあったの。全身の、あらゆる感覚がなかったのよ。それが──感情を生まない原因に繋がった」

 あらゆる感覚がない。

 ものの感触、食べた際の味わいに、花や雨の香り。そう言ったものまで感じられなかったのだという。そんな生きた心地のない身体のために、カイは感情さえも生まなくなった。代わりに、感情表現だけは巧みになっていく。

 人型AIと変わらない人間。それがカイだった。

「あたし達兄妹は、人間の母さんと、AIの父さんから生まれたの。母さんが父さんを選んだ時、生まれてくる子どもにこうしたリスクがあるのは承知していたのか、わからない。ただそうして、兄さんは生まれてきた。何も感じられない身体を伴って……」

「話には聞いていました。でも、そんな人が居るんですね」アイノは表情を変えずに言う。

「確率はかなり低いからね」ベリコは苦痛を堪えるような微笑みを浮かべ、「それと、兄さんはいつだって完璧だった──無感覚なのが理由なのかは、知らないけれどね。カンザキ所長の遺体が見つからないのも、フタミヤ・アンタロウに残ったメッセージも──取り付けた発信機を逆に利用したり。今回だってそう……恐らく爆発したのは研究所を廃棄するため。その上で、フタミヤ君達に濡れ衣を着せようとしたかったのでしょうね」

「……自分の無実を証明するために?」

 ハルタは囁くように訊く。ベリコは首肯した。

「それだけにしちゃ、ちとやり過ぎじゃねえのか」ゴドーは受け入れられないといった様子で、眉根を寄せる。

「それは市民感情を煽るためではないでしょうか」とアイノが意見した。「テロに対する恐怖と、犯人に対する怒りやイメージを植え付けるんです」

「そりゃまたどうして」刑事が質問し、

「これ以上、私達が計画の邪魔をしないように」

「逃げ場を失わせるためか」理解して、刑事は鼻で笑った。「それは酷いな」と、俯いて。

「そこまでして創造したい天国って、一体どういうものなんでしょう……」アイノが一点を見つめて言う。


 天国。

 人類が創造した中で最も希望にあふれたこの言葉が、不気味に感じられるのは何故だろう。それは発言者がジータだったからだろうか。そこには──カイが関わっているからだろうか──死の予感がある。

 天国は我々を待ち受けるものだ。積極的に創造されるものではない。爆破テロの経験が、ハルタの思考に浸っている。天国は、大量死を引き起こすのではないか、と。そう感じるのはきっと、自分だけではないだろう。

 死後に待つものを現実に持ってこようという考え方。とてもとても(いびつ)な救われ方に思われる。


「死後の世界」とベリコ。

 全員が一斉に探偵を見た。ベリコはそんなことすら気にも留めない様子で、一心不乱に思考の中へと沈んでいる。瞳だけが激しく泳いでいる。思考の回転が激しさを増しているのだ。額から汗が滲み、顎先へと垂れていく頃には、覚束ない焦点をハルタ達に向け、

「死者の復活」そう一言にしてまとめる。「それが、もしかしたら、彼らの目的なのかもしれない」

 やっぱりだ。それは後ろ暗い感情に彩られた、歪んだ希望といえる。

「どうしてそんなことを?」

 今日何度問われたかも知れない疑問が、アイノの口をいて出た。ベリコは唇を舐めると、訥々と話し出す。

「フタミヤ君の話では、兄さんは〝天国下ろし〟と言ったのよね……。ここに天国を創造するという表現なら、理想郷を作るという意味合いにもとれるわ。けれど、天国を下ろすと彼は言った」疲れたように息を吐いて、「フタミヤ君。何をもって天国と呼ばれると思う?」

 ハルタはまず、連想されるものをイメージした。

「安らかな場所……ですかね。苦痛も何もなくて、ただ喜びだけがあるような」

「観念的ですね」とアイノがコメント。

「そもそも観念的なものだと思うんですけど」

「ハルタ君の考えが普通かもね。じゃあ、アイノはどう考える?」ベリコが手で促し、

「死者の集まるところかと。ただ彼岸と違うのは、地獄と対比される点です。天国に行けるのは、限られた者だけですから」

「私が言いたいことを察して、先回りしたわね?」

 ベリコは痛ましい微笑をする。アイノは肩を竦めて、どうでしょうか、と曖昧な返事。刑事が首を捻って、

「で? 探偵さんはどう考えてるんだ」

「アイノが言った通りだと思っています。つまり、カイの言う天国というのは──」ベリコは生まれたばかりの仔鹿のように、か弱く震えを起こし、「死者の世界。それを現実レベルにまで落とし込もうとしている。あたしは……そう考えています」

「何のために」苦虫を潰した顔で刑事は訊いた。

「そこまでは、わからないわ。ただ彼岸ではなく天国と言った部分が、妙に、引っかかるのだけど……」

 重苦しい空気が充満する。誰も皆、口を開かない。

 カイの目的は死者の復活だった。それと知って、ハルタは不思議と納得する。どうして爆破テロに加担させられたのか、それにもう一つの解釈が得られたのだ。つまりは罪悪感を植え付けるための動機づけ。天乃浜市民の魂を復活させると知れば、ハルタは邪魔をするどころか、協力しさえするかもしれない。そんな打算があったのではないだろうか。

 そして──それは悔しいことに、非常に魅力的な提案に思えてしまう。罪の精算にはならない。だが、責任はかなり薄くなるはずだ。少なくとも、ハルタの自罰的な意識は大分和らぐだろう。自身の手で消してしまったものが返ってくるのだ。辛くなるほどに、これは、魅力的である。

 それに、両親とも会える──そんな薄暗い欲望と共に。

 だからハルタは帰されたのだ、とまた納得した。一人ではこんな結論には辿り着かない。ベリコの頭脳をもって、ようやく得られる答えなのだ。そうして敢えて突き放すことで、ハルタがベリコ達の妨害を働くかもしれない。恐らくそこまで考えられていた。だからハルタは教えられたのだろう。

 天国について──それを天国下ろしと表現したことについても、すべて手のひらの上。行動のみならず、思考回路までも。

 簡単に信じてしまったから、こうなったのだ。少しも疑わなかった自分が恥ずかしい。盲信が招いた種といえる。高い勉強料だ。戒めなくてはならない。二度とこんな過ちを許してはいけない──間違ったなら、直さなければ。

「何にせよ、過去は消えません」ハルタは自分に向けて話すように呟く。「殺すことも、復活させることも、これは命を弄ぶ行為です」

「そうね。あたしもそう思う」ベリコは同意した。

「これまでの考えが全部杞憂だってんなら嬉しいがね」ゴドーは乾いた笑いとともに、「だが可能性がゼロでないなら、確かめにゃあならん」

「私もそう思います」アイノが頷く。

「ライノは?」とベリコが訊き、

「同じく」

 姿を変えて、ライノは言った。またアイノに戻り、親指を立てる。ベリコは満足そうに口元を緩めると、

「さて次は、兄さんはどこに居るのかだけど──」

 ノック音。

 扉が何者かに叩かれた。全員の視線が交わる。ゴドー刑事がドアスコープから相手を確認。

「警察だ」と小声で、「勘づきやがった」

 そこへゴドー刑事に連絡が入る。ウインドウを開き、暫しの通話。ノックが強くなる。ノブが一度、動いた。鍵が掛かっていると相手に伝わったらしい。恐らく、フロントまでマスターキーを取りに行くだろう。

「はい……はい。わかりました」ゴドーが会話を終えると、

「逃げましょう」

 ベリコはすかさずゴドー刑事を手招きした。それから探偵は刑事を伴って移層する。ハルタ達も続いた。第二階層(レイヤー:ツー)──解像度が低くなる。


「何だこの感じは」

 狼狽えたように刑事は訊いた。窓の向こうから、人影が消えている。ドアスコープより外にも、誰も見えない。ハルタは扉を開けて、

「ここは階層世界ですよ」

 人の気配はない。大丈夫そうだ。頷いてみせると、三人が部屋を出る。

「何だそりゃあ……くそ、気持ちが悪い……」

「直に慣れますよ」ハルタはしみじみと言った。

「慣れるのにどれくらいかかった?」

「後三日ですかね」

 ゴドーが呆れた顔でハルタを見つめる。駐車場へ向かう道すがら、階層世界について──第〇階層、上階に反映されるものと反映されないものの違い、ものの埋め込みと核情報の改変、第四階層から行える壁抜け──これはハルタにもピンとこない──について説明した。が、いまいち理解が追いつかないらしい。

「難しい専門用語を連続して使うのはやめてくれ」

 頭の上に疑問符が浮かべられていた。

「習うより慣れろ、ね」ベリコは小首を傾げて言い、「ゴドー刑事なら、すぐに覚えますよ」

「そうだと良いんだが」刑事はぽりぽりと頭を掻く。


 無人のホテルを歩き回り、外へ出た。駐車場に出るとアイノがポケットに手を入れる。そこから圧縮された車を取り出して、展開した。

「回収しておいたんです」と軽い説明。「これに乗って行きましょう」

「シートがずぶ濡れのままじゃないか」

 やれやれと言ったふうに、ゴドーは後部座席に座る。その隣にハルタは並び、

「それで、これからどうしますか?」

 前の二人に問いかけた。

「さっきの連絡だが」と、ゴドーが口を開く。「アンタロウが夜見よみ市に移ったという情報が入った」

「夜見市?」アイノはウインドウを表示させ、地図を展開。「成る程……そこには核研究所があります。過去二度に渡って、地球核にアクセスを試みたらしいです。結果は失敗とありますが、実際はどうでしょうね?」

「良ーし。そこに行きましょう」ベリコは前方──割れたフロントガラスの先を指差した。

「皆さん、シートベルトを締めてください。安全運転で行きますよ」

「そうだな」とゴドー。「もうあんな思いはしたくない」

 まったくだ、とハルタは思う。

 もう二度と、あんな思いはしたくない。だからこそ、次は止める。そのために自分は生かされた。ハルタから迷いは消えている。正しい道の上を生きるのだ──ナイスガイとなるために。

 車が走り出した。ハルタ達以外には、誰も居ない道を、夜見市に向けて。


 ハムロ・カイ──この借りは必ず返す。ハルタは強く決意した。

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