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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

暗闇より出でるもの

作者: 黒日

処女作になります。至らない点も多いともいますがよろしくお願いします。

死屍累々


その惨状を表すのにそれほど適した言葉はないだろう。

その刺激臭の漂う空間では周囲の壁がほんのりと光っており、わずかな光で周囲の惨状を理解するには問題がないほど荒れていた。

地面には無数の死体が散乱しておりその死体の中にはかみついた跡のような傷が多く見受けられる。人の死体と思われるものは腕や足がバラバラになっており目をそむけたくなる光景であることは間違いないだろう。


それらの死体は壁の一角に積み上げられるように捨てられており、その肉でできた山は腐敗によってかうっすらと蒸気を登らせていた。

そんな一切の気配を感じない空間で――カラリ と骨がぶつかったような音が静かな空間に響く。


……カラリ、カラリ


その音は死体の中から聞こえてくる。


ガシャリ


そんな音をたてその死体の山から黒い光沢を纏った細い棒のようなものが突き出した。死体の山から外へと現れたのは人の形をした人ではない何かであった。


体をカラリ、カラリと鳴らしながら死体の山からはい出し立ち上がったその人型はぽっかりと穴の開いた目で周囲をぐるりと見渡した。


その人型は黒い光沢の骨のようなもので組み合わさり体が構成され、その上に同じように黒い光沢を放つ鎧によって身を包んでいる。

その姿は遠目で見れば人に見えることもあるだろうが、近づけばそれは違うということがすぐにわかる。その人型の何かは俗にいう「スケルトン」と分類される魔物であった。その人型がスケルトンの普通が当て嵌らないことを除けば。


――なんだ、この渇きは


最初に黒いスケルトンが感じたことは、その穴だらけの体にあるはずのない渇きだった。

彼は自身がスケルトンであるという事実を分かっていながら、体の内からの圧倒的な渇きによって霞がかかった思考の中、違和感のない骨の体を動かしうっすらと先の見える洞窟を歩きだす。

その渇望を満たすことのできるものを探して。


///////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////


洞窟の壁に生えた鉱石が先ほどの空間よりも明るく照らし、視界も広がったころ。その渇きを満たすべく歩みを進める黒いスケルトンは――ピタリ とその歩みを止めた。

黒いスケルトンが顔を向ける先で曲がり角から伸びた緑色の大きな手が壁を砕いた。

その角から姿を現したのは猪のような顔に緑の体色、丸太のような棍棒を右に握った「オーク」と呼ばれる魔物だった。


黒いスケルトンも聴覚も嗅覚もないにもかかわらずなにかが壁の向こうからこちらに進んできていることは感覚でわかっていた、しかし目のない穴でその姿を見たときその体を揺さぶるような強い欲求が叫ぶ――あいつを喰らえ! と。

内からの欲求が骨でできた体を動かした。


始まりは一瞬だった。黒いスケルトンは走り出すと意識せず体の内側の力を用いて両手に黒い靄を集め、短い槍のような形を作り上げていく。その靄が槍の実体を作り上げるよりも早く、オークはその巨体からは想像もできないほど俊敏に地面を蹴っていた。


「ブモォォォ!」


5mはあろう巨体が地面を走り、五歩でスケルトンの位置まで距離を詰めた。その勢いのまま右手に握った棍棒を小さきものを潰さんと振り下ろされた。


――無策か


その振り下ろされた棍棒スケルトンが先ほどまで居た地面を砕き、横をすり抜けるようにしてオークの後ろへと回り込んだ黒いスケルトンは実体を得た右手の黒い短槍を振り向きざまに横に薙ぎ払う。その体格さもありオークの左太腿へと直撃した短槍は周囲の肉を巻き込むようにして抉った。


「オオオオォォ!!」


一撃で仕留めるつもりで振るった棍棒を避けられ、足に重い一撃をもらったオークはその怒りに大きく雄叫びを上げながら薙ぎ払うようにして後ろに棍棒を振るった。


その反撃に対して黒いスケルトンは後ろに跳躍することで避ける。片足を負傷しているためか後ろに振るった棍棒の勢いをうまくいなせず地面にめり込ませ、軽くバランスを崩しながら睨めつけてくるオークを見ながらスケルトンは思考する。


――こういう戦いを何度もしたことがある気がする。


オークの左足に大きな裂傷を与えながら、その手に持った短槍の具合を確かめるかのように血を払う。


足に大きなダメージを負ったオークはあからさまに最初のような俊敏さは無くなっておりその左足を庇うかのように右半身を前に出すようにしている。その緑色の体を変色するほどに大きく振るわせ怒りを表し。その目はスケルトンの一挙手一投足を見つめ最初の警戒の欠片もない先制攻撃を行ったとは思えぬほど警戒して動き出しを待っている。


その硬直の中、黒いスケルトンは先ほど黒い靄を集めて短槍を作ったように黒い力をその体に張り巡らせる。その行為は先ほど生まれたばかりとは思えないほど滑らかに行われており黒いスケルトンの体に強化を施していく。

その変化を感じ取ったオークはさらなる警戒を強めるが、それでも仕掛けてこないのはそれだけ左足のダメージが大きいことを物語っている。


――終わりにしよう


黒いスケルトンは先ほどと同じように地面を蹴り、そして 消えた。

軽く蹴るようにして動き出した体は一瞬にして最高速度にまで加速したその疾走は最初の動きよりも圧倒的に速く、オークの目にはその動きがとらえられなかったのだ。

一瞬で肉薄した黒いスケルトンは両手の短槍をオークの右足に向かって薙ぎ払った。先ほどよりも圧倒的な力で振るわれた短槍は肉を切り裂き、骨でとどまることはなくその足をちぎるようにして切り飛ばした。

そしてオークが痛みの叫びをあげるよりも早く、二本の短槍でバランスを崩したオークの丸太のような太い首を切り裂いた。


――渇きが満たされていく


オークを殺した後その身に何か見えないものが流れ込んで渇きが満たされるのを感じていた。

その渇きが食事由来のものと思っていたスケルトンは満たされていく自分の体を不思議に思いながら死体をちらりと一瞥した後、先ほどは靄がかかり深く考えられなかった記憶に思考を走らす。


しかしいくら思考を走らしてもこの体になる前の記憶は一切思い出せず、頭のどこかで常にダンジョンの奥地を守れと命令めいたものを繰り返し感じる。しかしその命令は満たされた今なら抵抗できる、その程度のもの。しかし体は勝手に動こうとしいつかその自我は消えこの言葉に操られるだろうということは解っていた。


――また先ほどのような状態になってしまったら次は意思を戻すことはできないかもしれない。


黒いスケルトンは自分が自分としてあるためにダンジョンの奥地へ足を進めはじめる。

奥地には何か手掛かりがあるだろうと希望をもって。


///////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////


――強い力の波動を感じる


道中にいた異様に数が多い魔物をすべてその短槍で切り殺しながら奥地へと進んできた黒いスケルトンはその先から感じ取った気配にその足を止めた。

それとともに奥の空間は大きく開けているのか声が反響して聞こえてくる。一人ではないのか数人が会話しているように聞こえてくる。


――もしかして人がいるのか?


少なくとも話ができる存在がいることを理解した黒いスケルトンはその者たちとコミュニケーションを取ろうとその足を進めようとしたその時。


――コアを守れ!


頭の中に声が広がる。その声は先ほどから脳内に響いていたものではあったが、その声が与える影響はこれまでの声とは全く異なっていた。


――何を__


脳裏に響くその声に疑問を持つよりも早く頭の中はその者たちへの殺意に満ちた。


///////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////


スケルトンは体を黒い力で満たし、洞窟の奥地であろう異様に明るい広間にその姿を晒す。

その大きく広がった空間の真ん中には青白く光が溢れる結晶が宙に浮いている。結晶には細かな紋様が刻まれており黒いスケルトンは本能でそれを守るべき対象であると感じ取っていた。

結晶の周りには五人の男女、こちらに相対するように結晶から少し離れた場所に一人の軽装の男がおり、全員が急に現れたその黒いスケルトンに注意を集めていた。


「bezf6;t@vg4:.!」


――どうして聞き取れない?


軽装の男は後ろの男女に何か叫ぶと腰から一本の剣を抜き取り戦闘態勢に入る。

その男に対してとびかかるように真っすぐに駆けながら、頭の中では知ってる言語なのに単語を理解できないのに違和感を抱いたがすぐに振り払い思考を切り替えた。


尋常じゃない速度で距離を詰めたスケルトンは最小の動作で右の短槍を突き出す。それに合わせるように男は剣を合わせその軌道を無理やり逸らそうとする、しかし片手ではいなせないと察したのか受けている剣に左手を添えて支えながら体を逆方向に動かしその一撃の威力を外に逸らす。剣と槍が接触したことで火花を激しく散らしながらギャリギャリと周囲に音を響かせる。


軽装の男はその受けた力で弾かれたように距離を取り腰から何か石のようなものを黒いスケルトンに投げつけた。

その投げられた石に対応した黒いスケルトンが左手の短槍で切り払う。

そして鳴り響く爆音。先ほど投げつけられた石のようなものは爆弾で切断されるとともに周囲の空気を巻き込み爆発を引き起こしたのだ。


煙の中から黒いスケルトンの姿が現れるのを見た男は苦虫を噛み潰したように顔をしかめながら先ほどの一撃で大きく傷の入った剣をこちらに構えている。


黒いスケルトンが追撃をすべく跳びだす瞬間、視界の端に火炎で構成された槍が飛翔するのが映った。気づくとともに後ろに飛び退きその攻撃を避ける。

先ほどの場所から少し前に着弾した火炎の槍は周囲を燃やし地面の表面を液状へと変えている。その威力からかなりの力が込められていることが伺えた。


――あの槍はまともに受けられないな


スケルトンが攻撃の飛んできた方を見ると先ほどいた男女の三人が軽装の男を支援するかのようにこちら睨みつけている。後ろにいる大きな杖を持った女が先ほどの攻撃をしてきたのだろう女の周りに力の揺らぎを感じた。


――前衛2人と後衛1人か


大きな盾を持った男が杖を持った女を守るように構えておりその斜め前に剣盾の男が牽制している。簡単には女まで到達することはできないだろう。


杖を持った女が力を溜め始めることを皮切りに、一瞬の硬直を見せていた戦場が動き出す。

先ほどの軽装の男から杖を持った女に優先度を変化させると、地面を蹴り走り出す。


「4d\togをvewh;!」


黒いスケルトンが走り出すとともに剣盾の男が何かを叫ぶ。

それに合わせ軽装の男は死角に回り込むように動き始め、2人の前衛は守りを固める。

黒いスケルトンは死角に動く男に気づいていながらさらに加速し距離を詰めていく。そして右手に持っている黒い短槍を ――投げた

狙いは剣と盾を持った男、速度を載せて投げられたその槍は盾で受けようとしたその盾を破壊しながら腕に突き刺さる。


「bezk,oefcZaq@!」


その一瞬、大盾の男が意識を逸らした間に距離を詰め杖の女に襲い掛かる、それをさせまいと大盾の男はと間に割り込みその黒い短槍の一撃を受ける。大盾から火花を散らしながら耐え、そのまま弾くように一気に押し返す。重厚な盾から繰り出される強力なシールドバッシュは空を切った。

黒いスケルトンはその攻撃を予想していたように、一歩後ろに下がった後その押し込んだ大盾に右手を付け大盾の男の上を飛び越えた。


「x:wh;!」


大盾の男が後ろに叫びどうにか止めようと体を動かすがもう遅い。杖の女が迫ってくる黒いスケルトンに対応するべく力の漲る杖先を向ける。先端にはすでに火炎の塊ができておりすぐにでも放てる状態になっている。


――殺して攻撃をもらうよりは、攻撃を受けず無力化すべきか


その力が放たれるのがすぐであることに気づいた黒いスケルトンは発射される力を杖の女を殴り飛ばすことで無理やり向きを変えた。殴り飛ばすとほぼ同時に火炎の槍は放たれ、あらぬ方向に飛んでいく。

その圧倒的な怪力から放たれる一撃は杖の女を戦闘不能にするのには十分な破壊力を持っていた。大きく空中を舞いながら地面に叩きつけられるようにして落下した女はコヒューコヒューと浅い息を繰り返している。それを見て脅威ではないと除外したスケルトンは後ろから距離を詰めてきた大盾の男を向かい打つべく体を翻し__止めた。


――何をしていたんだ俺は


頭の中を満たしていた殺意は急に無くなっていた。まだ頭の中に――コアを守れ! と繰り返す声は聞こえるが十分に体の制御を取り戻した黒いスケルトンは後ろに跳躍、全体を見える場所で自由になった原因を探る。その原因はすぐに見つかった。

中心にある青白い結晶には爆発が起きたかのように砕け、大きなヒビが全体に広がっている。先ほど放たれた火炎の槍はたまたま中心にあった結晶にぶつかったことがわかる。


――あれが元凶だったのか


それを理解したスケルトンは警戒される視線を一身に受けながら元凶を破壊すべく結晶のそばに跳躍する。


「3uqeZqeuyuyw@rt!」


白い結晶の近くにいた眼鏡をかけた女が隣にいた弓を背負った女に止められながら黒いスケルトンに叫んでいるが気にせず近づきその手に触れられる距離まで近づき、そのうちから湧き上がる本来スケルトンは持たない感情を叩きこむ。


ドォン、ダァァン


尋常じゃない力で叩きつけられた骨の拳は巨大な白い結晶に大きくヒビを入れ元から大きなダメージを受けていたのもあってかその大きな結晶を砕いた。


「あぁ!私のダンジョン・コアが!!」

「黙ってなさい!」


――何を言っているのかがわかるようになった?


急に理解できるようになった言葉も今壊したダンジョン・コアとやらがかかわっているのだろうとスケルトンは考えながらいまだに警戒を解かない者たちを見ながらゆっくりと歩き広間の入り口まで距離を取る。


――ここにいると彼らは治療もまともにできないだろう。


声の出ないスケルトンでは安全を伝えることもできない、それにこの状況で敵でないと伝えようとしても信じないだろう。そう考えその場を去ることに決めた

その広間の入り口から、先ほどの者たちに最大限の謝罪の意を込め礼をした後、その異常なスケルトンは元来た道を戻るように暗闇に姿を消した。


「何だったんだ、あの魔物……」


その軽装の男は最大の脅威が去ったことを安堵しながら、その目は姿を消した暗闇を消えた後もしばらく眺め続けていた。



被害:重傷一名、軽傷一名


冒険者という職業の中でもトップクラスの実力者である彼らが受ける被害としては甚大な被害だった。


///////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////


どこかの酒場

そこは多くの人が酒を交わしながら様々な噂が飛び交う場所。

いつもはバラバラな話題が飛び交うがその日はとある魔物に関する話題に持ちきりだった。


「なぁ、知ってるか?賞金が付いたスケルトンのこと」


「黒いスケルトンだろ?知ってる、滅多にないことだからな」


ほんのり赤みがかかった顔で話し始めた男に相槌を打つように一緒のテーブルを囲む男が答える。


「光属性の魔術師を雇ってネームド狩りをやらねぇか?所詮ただの骨野郎だ簡単に倒せるだろ」

「やめとけ、A級の冒険者が手も足も出なかったって話だ、俺らが相手できる相手じゃねぇよ」


その返事を聞いても、あきらめきれないのか


「でもよぉ?倒せれば金貨50枚だぜ?」

「でももくそもねぇよ、命あっての物種だ」


その返事を聞いてあきらめたのか、どうでもいいことを喋りながらいつも通りの空気を取り戻していく。



~冒険者ギルド職員のレポート~

――付近の洞窟型ダンジョンにてフォードが発生。原因を調べるべくA級冒険者パーティとB級冒険者に原因探索の依頼を行う。この際にはダンジョンに詳しい学者を一名同行させた。

ダンジョン・コア到達し解析を行ったときに黒色のスケルトンが姿を現し交戦。結果として一名重傷、一名軽傷の被害が出る。

ダンジョン・コア破壊とともに黒色のスケルトンは姿を消した。このことから黒色のスケルトンは何かしらフォードに関係があると思われる、原因の特定を進める。


また高い思考能力を持つと認定された黒色のスケルトンは二つ名[黒鎧]に認定し金貨50枚の賞金を付ける。



ご閲覧ありがとうございました。

元々大きなストーリーのサブシーンとして考えていたものなので少し終わり方に違和感あるかもしれません。

また小説を書く機会があればよろしくお願いします。

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