幼馴染といつも一緒に登校しているけどなんで俺が家出るタイミングが分かるんだ?
短編なんで仮定吹っ飛ばします。
「いってきまーす」
一人暮らしではあるが無意識に言ってしまう。高校に通い始めると同時に一人暮らしを始めた。最初こそは慣れない環境で寂しかったが、一か月もすれば慣れてきた。
「おはよう修也!」
部屋の鍵を閉めて道に出ると聞きなれた声が俺の名前を呼ぶ。声のする方へと視線を向けると予想通りの人物が走ってこっちに向かってくる。
「花音、おはよう」
花音は俺の幼馴染で幼稚園からの付き合いだ。家が隣同士で同じ年だったこともあり仲良くなった。親同士の付き合いも良く、小さいころからいろんなところに一緒に行った。中学生の時に思春期特有の関りがなくなる時期もあったが、今はまた小さいころと同じように仲良くしている。
「一緒に登校しよ!」
「うんいいよ」
俺と花音は同じ高校に進学した。そして花音も一人暮らしを始めた。初めは俺の隣の部屋に住む予定だったのだが、あいにく俺の住んでいるマンションは空きがなく、隣のマンションに住んでいる。
「中学で何ヶ月かは関わらない期間合ったけど、小学生の時から合わせるとほぼ8年間一緒に登校しているよな」
「そうだね。改めて考えるとすごいね」
確かにすごい。すごいか。
「すごいと言えば花音だよ」
「え、どうしたの急に。私褒められることあったかな」
「えへへへっ」と機嫌が良くなる花音。そういう訳ではない。
「いや何と言うか俺が登校するタイミングでいつも来るよな」
「え!?」
小学生の時はよく花音が起こしに来てくれて一緒に登校してたからわかる。でも中学校で関わらない期間を終えて再び一緒に登校し始めたときは、いつも俺が家を出るタイミングで花音も家から出てきていた。それは高校生になった今でもそうだ。まだ俺が決まった時間に登校していたら話は別だが、10分前後することが多い。それなのにいつも俺が家を出るジャストに合流できるのがすごい。
「そ、それはいつも近くで修也が来るのを待ってるんだよ」
「それならメールしてくれたらよかったのに」
「あはは、これからはそうするよ」
明らかに花音の目が泳いでいるため嘘だと言うのがバレバレである。しかし別に花音を困らせたいとも考えていないため、これ以上は深堀をしないでおく。
「もしかしたら運命ってやつかもな」
「え!?」
花音は驚いた声をあげたかと思うとうつむいてしまった。そんなに嫌だったの!?流石に冗談だとは言え傷つく。とりあえずフォローだけはしておこう。
「冗談だよ冗談」
「わ、わたしも…」
「え?」
花音はもじもじとしながら少しだけ顔を上げる。表情は真っ赤になっておりきょろきょろと視線が定まっていない。
「わ、わたしも運命感じてるよ」
突然の告白じみた展開に一気に顔が熱くなる。きっと顔が赤くなってしまっているだろう。小さいころからの付き合いということもあり恋愛感情が芽生えたことがないが、今初めてドキッとしてしまった。
「…とりあえず学校行くか」
「…うん」
どこか気まずい空気が流れながら二人でいつものように登校した。
◇
「あれ…?」
放課後に友達と遊んで部屋の前まで帰ってきたのはいいのだが、部屋に入るための鍵が見つからない。思い返してみると学校のロッカーに置いてきてしまった気がする。スマホで時間を確認するが既に夜遅い時間だ。学校はおろか管理会社も開いてない。
「どうしよう…金曜日だからって時間を気にせずに遊んだのがあだになった。しかも遊んだせいで実家帰るための電車代もない…」
「どうしたの?」
俺が諦めて母親に電話をして迎えに来てもらおうとしたとき声をかけられる。
「花音!どうしたんだよこんな遅い時間に?」
「ちょ、ちょっと買い出しに行ってたの。それよりどうかしたの?」
俺は花音に今の自分の状況を伝えた。
「そ、そうなんだ。じゃあさ…家来る?」
「え!?」
「いや修也が嫌じゃなかったらなんだけど。別に修也は幼馴染だから信頼しているし、それに小さいころからお泊りとか何回もあったし、それにそれに…」
花音がいろいろと理由を話している。正直なことを言うと、このまま母親に電話をすると怒られてしまうのは確実だ。怒られるのは嫌だ。
「ごめん今日一日だけお世話になってもいい?」
俺の言葉を聞くと花音は嬉しそうに目をキラキラさせた。
「うん、いいよ!」
こうして俺は花音の部屋に泊まらせてもらうことにした。
◇
「さあ入って入って」
「お邪魔しまーす」
今考えると実家の方の花音の部屋は何度も入ったことがあるが、こっちは入ったことはなかった。女の子の一人暮らしの部屋に入ると言うのは熱いシチュエーションであるが、花音の部屋ということもありドキドキというよりワクワクが勝った。
「綺麗だし、それに広いね」
一人暮らしの部屋にしては明らかに広い。部屋もリビング以外に二部屋あるしトイレとお風呂も別々。キッチンもとても広い。
「本当は二人以上が住めるように設計されてるんだ。だけど学校近くのマンションで部屋が空いているのここぐらいしかなかったから」
「なるほどね」
俺は正面にある二つのドアに視線を移す。
「それぞれ何の部屋?」
「えっと右がベットとか勉強机が置いていて、左は…入っちゃダメ」
「どうして?」
「どうしても」
花音は左の扉にべたっと張り付いて首を横に振り続ける。きっと花音も一人の人間だし見られたくないものの一つはあるだろう。もしかしたら物置とかになっているのかも。
◇
それから色々あり時計は夜中の一時を指していた。特にお風呂などで多少のハプニングはあったが今は落ち着いた時間を過ごしている。俺は右の扉の部屋で、普段から花音が使っているベッドを使わしてもらっている。花音は左の扉の部屋で寝ている。ベッドを使わしてもらうのは申し訳なかったが、花音曰く左の扉の部屋にもベッドはあるらしい。正直俺が気を使わないように嘘をついていると思う。しかし花音の優しさをむげにするのは申し訳なかったため信じることにした。幼馴染とはいえ、思春期の男女が同じ部屋で寝るのはどうかとも思うしな。
「とりあえず花音の家で昼まで寝させてもらうのも悪いしもう寝るか」
スマホでアラームをセットし、布団をかぶる。
…
「まあ寝れないわな」
いつもと違う環境ということもある。確かにその理由もある。だがしかしそんなことよりも重要なことがある。
ここが女の子の部屋であるということだ。
普段から花音が使っているベットだと思うと変な感じだし、変態だと思われるかもしれないが良い匂いがする。やはり女の子というのは部屋の香りなどにも気を使うのだろうか。
「それに花音はまだ起きてるのか」
隣の部屋から車?が走っている音がかすかに聞こえる。何か動画を見ているのかもしれない。花音は車が好きなのかな。
「うーん、なんだかな」
これに気付いた俺はもしかしたら天才なのかもしれない。
しばらく寝れないからかすかに聞こえる隣の部屋から聞こえてくる車の走る音を聞いていたのだが、それと同じような間隔で部屋の外の道路を走る車の、走り去る音がする。
「近くにセットしてあるカメラの動画見てるのかな。スクランブル交差点でもないしそんなの生配信されてないよな…」
まあ気のせいか。
段々と眠くなってきた。そしていつの間にか考えることをやめて眠りに入る直前、隣の部屋からガタンッと何かが倒れる音がする。その音で脳が再び覚醒した。
「花音、どうかしたのか?」
隣の部屋に向かって声をかけるが返事はない。俺は心配になりと部屋を出て、左の扉の前に立つ。
何回かノックをするが返事はない。
「入るなって言われたしな…でも返事がないの心配だし…」
もしかしたら花音が倒れてて緊急を要する可能性が頭をよぎり部屋を入る決意をする。まあ実はこの部屋には何があるのかという好奇心もあったのだが。入るなと言われたら入りたくなるのが人のさがだ。
ガチャリと扉を開けた。
一体どんなものが現れるのかと思ったが案外普通の部屋だった。本棚と机と椅子。主なものはそれだけだ。やっぱりベットがあるのは嘘だった。
椅子の近くで花音が倒れているがすやすやと寝息を立てており、ホッと安心した。パソコンの電源がついており、見るからにパソコンを触っている途中に寝落ちをして椅子から倒れたことが分かる。
「何やってるんだよ」
起こすのも悪いため俺はベットに運んで寝かせた。やっぱり家主がベットを使うべきだ。
「パソコンの電源も消しておくか」
何かレポートを書いていたのなら保存して電源を落としておこう。そう思って左の扉の部屋に戻った。
「こんな夜遅くまで何してたんだ…ん?」
タブは一つだけ開いており俺が聞いたことのない名前のタブ。ただなんの変哲もない道路の映像が流れている。
「車の音はこれだったのか」
すると映像で酔っぱらいの男性が歌を歌いながら歩いてきていた。
「なんだよこの動画、よくわからない趣味持ってるんだな」
俺が一人で笑っているとおじさんは映っている画面を通り過ぎて歌も聞こえなくなった。しかし外からおじさんの歌う声が聞こえ始めた。
「あれなんで?ちょっと待てよ…」
俺は映像をよく見る。なんか見たことあるような…。
「これ俺の部屋の前の道路じゃん。しかも生放送かよ!」
変なところにカメラが付けられているなと驚く。別に有名スポットでもないのに。
ふと映像の右下を見ると「カメラ1」と書かれてあり、カメラを切り替えれそうだ。俺はそこにカーソルを合わせて一回クリックをした。すると「カメラ2」に切り替わり、映像は部屋の中になった。天井からのような角度。
「え…俺の部屋じゃん」
連続でクリックをすると、いろんな角度で俺の部屋が映し出される。キッチン、リビング、勉強机、ベランダ、洗面台、トイレ、お風呂。
「え…え…?」
俺はただただ恐怖していた。何もかも筒抜けになっている。もちろん映像だけでなく音声もだ。トイレやお風呂が映っているということはもちろん俺の裸も映っているだろう。
「見ちゃった?」
肩に手を置かれると同時に耳元でささやかれる。ゾッとして勢いよく振り返ると花音は立っていた。しかし俺が知っている花音ではない。いつも笑顔が絶えない花音ではあるがその時の表情は違った。目が暗く、何を考えているかわからない表情?違う。確かに笑っていた。しかしその目はトロンとしており、妖々じみた雰囲気を醸し出していた。
「修也が優しいのが裏目に出ちゃったな…」
「これ…いつからしてたの?」
もう花音がしているのは明確だった。それよりも俺は感じた。これはほんの数か月の行為ではないと。
「そうだね…もう中学生の時からだから約3年間かな。もちろん実家の時もカメラを置いてたよ。実家の時は修也の部屋だけだったけど…それより」
「うわ!?」
花音は俺を椅子から床へ押し倒した。俺は仰向けに倒れ、花音は俺の上に馬乗りになっている。
「修也…好き♡」
両手で俺の頬を挟み、キスをする手前まで顔を近づけてくる。この雰囲気にのまれているのか空間がピンク色に見えてしまっている。
てか告白するのどんなタイミングだよ。
「きゅ、急だな」
「もう修也が誰に取られるかわからない。それに知られちゃったから段階とかどうでもよくなっちゃった」
俺は抵抗しようと体を動かすがびくとも動かない。運動部の花音と帰宅部の俺ではこんなにも力の差ができてしまうのか。
「なんであんなことを?」
「好きな人のことを知りたいと思うのは当たり前のことでしょ?」
好きな人のことを知りたいか…
「さっきの告白の返事だけどOKだ」
「え、本当に!?」
隣の部屋の人に迷惑にならないか心配なほど花音は声を出して喜んだ。相変わらず俺は花音に押さえつけられて身動きがとれないままである。
「ただし条件がある」
「え、何?修也と付き合えるなら何でもしてあげるよ!」
「俺の聞きたいこと全部答えてもらうからな」
なぜ、どうして花音はヤンデレになってしまったのかを知っていきたい。幼馴染として、いやこれからは恋人として花音を改めて理解していきたい。
「とりあえず一緒に暮らそう!」
「そ、それはまた追々で…」
続編希望があれば連載・もしくは短編を投稿します。
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