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殺戮

――次の日


「では行ってくる」


 ホーネットはバンディットに言った。


「バリオス兄さんもホーネット兄さんも気をつけて。バリオス兄さん、大量期待してますから」

「あ、あんまり期待しないでほしいんだが……」

「兄者またそんなことを。約束は守って貰わないと」

「わ、わかってる。約束だからな。できる限りのことはする」

「僕も行きたかったけど、コレンと約束があるからね。2人で頑張って!」


 ホーネットとバリオスは2匹で近くの山へ狩りに出るところだった。カレンとバンディットが見送りに来ていた。


「アナタ、しっかりね! 後で弁当持って見に行くから」

「弁当はエレンが持ってきてくれればいいんだが……」

「何か言った!?」

「い、いや、何も言ってないぞ。ではホーネット、行くか」


 慌ててバリオスが山へ向かおうとした。そのとき――


「アナタ!」


 カレンがバリオスへ声をかけた。


「な、なんだ?」


 バリオスは恐る恐る振り返えった。


「怪我、しないでね」

「……あぁ。行ってくる」


なんだかんだ言っていても2人は仲がいいな。


 2匹のやり取りを眺めていたホーネットは羨ましく思った。





 山へ入って暫くした頃、ホーネットとバリオスは休憩をしていた。


「この時間でウサギ2匹……まぁ兄者にしては頑張ったほうか……」


 正直、もっと大きな獲物を狩るチャンスはあった。だが、寸でのところでバリオスが、躊躇し逃したのだ。


それでもどうにかしようと頑張ったんだ。大きな進歩だ。


 物足りなさを感じつつ、ホーネットは兄の成長を喜んだ。


「ま、まだやるのか? ワシは疲れたんだが」


 獲物を追い回していたバリオスはへたり込んでいた。


「まだ狩りたいところですが、カレンが弁当を持って来ないと拙者も持たないですし……」


 いつも決まった頃にこの場所へ弁当を届けてくれるのがカレンの仕事だった。だが、カレンが来る時間はとっくに過ぎていた。


しっかり者のカレンが珍しい……


「もしかしてワシのことまだ怒ってるのかな……」


 不安な様子のバリオスが洩らす。


「そんなこと引きずるような女性ではないことは兄者が一番解っているでしょ。何か事情があるのでしょう」

「そ、そうだよな。うん。きっとそうだ。今までだってカレンはワシを見捨てなかったんだ。今日はたまたま何かあったんだ」


 自分に言い聞かせるようにバリオスは呟いた。


何かか……気になるな……


「カレンが来ないなら仕方ない。兄者、一度村へ戻りましょうか」

「そ、そうだな! 何かあったら大変だからな! よし、戻るとしよう」


 ホーネットの提案にバリオスは喜び立ち上がった。先ほどまでバテバテだったのが嘘のようだ。


何事も無ければいいが……


 ホーネットは胸騒ぎを憶えていた。





 村を目の前にしたホーネットとバリオスは驚愕した。


「む……村が……」


 バリオスはそれ以上言葉が出なかった。

 ホーネットたちの村からは煙が上がり、家という家から炎が立ち上っていた。


マズイ


「兄者、急ぎましょう!」


 ホーネットはバリオスを急かし、全力で村へ走った。





 村の中は地獄そのものだった。

 傷付いた者たちが倒れ、至る場所から炎が上がっている。倒れているのは殆どが男か老人で、命が無いのは明らかだった。


「そっ……そんな……」

「な、なんでこんなことに……」


 その光景を見たホーネットとバリオスは立ち竦んだ。


一体何があったんだ……


「に……兄さ……ん……」


 そんな二人に声を掛けた者がいた。


「バンディット!」


 全身傷だらけのバンディットは這いずりながら二人に向かっていた。すぐさま二人はバンディットへ駆け寄った。


「バンディット! どうした!? 一体何があったんだ!?」


 ホーネットはバンディットを抱き抱えた。バンディットの身体は血で真っ赤に染まっている。


「バンディット、大丈夫か? おい!?」


 バリオスもバンディットの傍で膝を付いた。


「に……人間です……人間が攻めて来ました……」

「人間?」

「はい……大勢の人間たちが……襲って来て……余りにも突然だったから……みんな……パニックになって……」


 バンディットは苦しそうに話した。


「そ、それで……父さんや母さんは……エレンやカレンやコレンはどうした!?」


 込み上げてくる怒りを必死に押さえ込みながらホーネットは聞いた。


「と、父さんと母さんは……村のみんなを守るために……必死に戦って……でも、二人も人間に殺されて……」


 バンディットを抱く手に力が入る。


「それで……エレンたちは……」

「エレンとコレンは人間たちに拐われて……それをカレンは……」


 そこまで喋ってバンディットはある場所を指差した。ソコには横たわった女の姿があった。


「カレン!!」


 バリオスはカレンの元へ駆け寄り抱き抱えた。だがカレンは動かない。


「カレン! カレン!!」


 それでもバリオスは何度もカレンの名を叫んだ。しかし、その呼びかけにカレンが、反応することはなかった。


「に、兄さん……」

「無理に喋るな! 傷口が広がる!」


 何かを伝えようとするバンディットにホーネットは言った。しかし、バンディットの傷口からは血が止まる気配はない。


「襲って……きた人間の中に……き、昨日の人間が……」

「えっ?」

「昨日の人間が……エレンたちを……」

「それは本当か?」


 カレンを抱き抱えたバリオスがバンディットの傍へ歩いてきた。


「はい。間違いありません……」

「ワシは何てことを……」

「兄者……」

「つまり、今回のことはワシが原因な訳だな……」


 バリオスはカレンを抱えたまま、身体が小刻みに震えていた。


「あの時、ワシが逃がしていなければカレンは死なずに済んだのか……」

「兄者それはちがっ――」

「違わない!!」


 バリオスの怒鳴り声にホーネットは驚いた。これまでにバリオスが怒鳴ったことをホーネットは知らない。それほどまでにバリオスは怒っていた。


「ワシのせいで父さんも母さんも、カレンまで死なせた……ワシは……ワシは……」

「兄者……」


 ホーネットはバリオスにかける言葉が、見つからなかった。


「カレン……すまない……父さん……すまない……母さん……すまない……みんな……すまない……あぁ……」


 バリオスは膝から崩れて泣いた。


「バ、バリオス兄さん……」


 うちひしがれているバリオスへバンディットは声を掛けた。


「バンディット……」

「ま、まだ、エレンも……コレンも死んでない……他の連れていかれた人たちもいます……どうか、どうかみんなを……」

「そうだなバンディット。任せろ。ワシが、ワシがみんなを助けるから!」

「バンディット、もう喋るな!」

「バリオス兄さん……ホーネット兄さん……どうか……どうか……」

「バンディット!!」


 それ以降バンディットが喋ることはなかった。バンディットの体温が徐々に冷たくなっていくのをホーネットは感じていた。


「バンディットーーーー!!」

今回、読んでいただきありがとうございます。「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、評価をよろしくお願いします!



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