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カーマイン③

 一か月後、カーマインの傷は少しずつ癒えていき、少しは動けるようになった。空腹を満たすほどの量を食べることはなかったが、それでも死を覚悟していた時に比べればマシだった。

 そして一番の変化は


「こら。ワイの背中に登るな! 落ちたら怪我をするだろう!」


 カーマインと姉弟は仲良くなっていた。というか姉弟がカーマインで遊び、カーマインが注意をするといったことがほとんどだ。


「ヤダ。ダイジョウブ」

「ダジョブ」


 その間、姉弟はカーマインの言葉を覚え、少しずつ喋るようになっていた。もっとも、喋るのは姉がほとんどで、弟は拙く姉を真似ようとするしかできなかった。だが、こんなに早く覚えるゴブリンをカーマインは聞いたことが無かった。


この姉弟の知能の高さは異常だな……


「ガー、ワイの頭に登るな! ワイが動けんだろ! クー、お前もガーを何とかしろ」

「ハ~イ。ガー、アタマダメ」

「ヤダ、ヤダ」


 クーとガー。姉弟に名前を付けたのはカーマインだった。いつまでも『お前』では呼びづらいからだ。あまり長く関わるつもりもないので適当に付けたが、思いのほか二匹とも気に入ってしまった。


もう少し傷が癒えたらここを去るか……


 姉弟にオモチャにされながらカーマインは思った。






 その日の夜、いつも通りカーマインは身体を丸くうずめて眠っていた。そんな時――


ガサガサッ


 草を掻き分ける音がし、カーマインは目を覚ました。


なんだ、こんな時間にクーとガーか……昼間あんなに遊んでやったのに……


 ここへ来るのはクーとガー、それにその両親だけだった。もっとも両親はカーマインに怯えてあまり近づこうとはしなかった。


ガサガサガサッ


 掻き分ける音は近づいてくる。


ワイは眠いんだ、今日はもう勘弁してくれ。


ガサガサガサッ


 更に音がしたとき、カーマインは違和感を覚えた。

 それは草の音が1ッか所からではないからだ。耳を澄ませると、辺り一面から音がする。そこで初めてカーマインは自身への危機を感じた。


マズい、奴らだ――


 カーマインが立ち上がろうとしたその時、光と共にカーマインへ火の玉が弾丸のように飛んできた。


ボゥン!!


 カーマインのどてっぱらに直撃した火の玉は弾かれたように爆発をした。衝撃でカーマインは横倒しになり、壁にぶつかった。


「クッ……遂に来たか……」


 今の一撃――忘れようもない。今まで逃げるたびにカーマインを苦しめてきた魔法だ。間違うハズがない。


「今だ! ヤツが怯んだ隙にたたみかけろ!」

「おーーーー!」


人間どもめ!!


 カーマインを囲う様に人間たちが現れた。この一か月人間が現れることが無かったのもあるが、ゴブリン姉弟と触れ合ったことで、気が緩んでいたことをカーマインは呪った。本来のカーマインであればここまで人間に接近される前に気付き、対応が出来てたであろう。


 人間たちは各方向から魔法を放ってきた。それは火属性以外のものだ。カーマインが炎竜であることへの対策だ。だが、そのどれもがカーマインへ致命傷となりえることはない。人間の魔法ほどではカーマインへ傷を負わせることは出来ないのだ。ただ一人を除いては――


ボゥン!!


 再びカーマインの腹で火の玉が弾け飛び、カーマインは壁にめり込んだ。


チッ、まったく厄介だ。


 本来、炎竜であるカーマインに火炎魔法は通用しない。だが、この魔法は火炎の中に鋼鉄の粒が多数込められ、音速に近い速度で飛ばされていた。それがカーマインにあたった瞬間勢いよく飛び散るのだ。


――エクスプロージョン――


 これを放っている人間はそう言っていた。


「ライザーさん、効いてるっチ!」

「あぁ。お前たちは引き続き魔法で援護しろ! ヨシキ、お前はドンドンエクスプロージョンをぶち込んでやれ。だが首から先は狙うな。素材としての価値が一気に下がる」

「分かってるっチヨ。八京にばっかり手柄はやらないっチ」

「あと、全員くれぐれも近づきすぎるなよ。一撃でも喰らえば即死だ」

「はい!」


 ライザーと呼ばれた男が他の人間たちに命令をする。だがそれよりもヨシキと呼ばれている人間が厄介だ。ヤツの魔法はデタラメに速いうえに攻撃力も高い。一発二発では死ぬことはないが、これを受け続けたらいくらカーマインといえど身体が持たない。


場所が悪い、移動しないと――


ボン!


 今度は尻尾に命中し、爆発した。


グゥ……仕方ない。


 カーマインは激痛に耐えながら立ち上がり、ヨシキ目掛けて走り出した。


「バカっチ! これで仕留めてやるっチ」


 ヨシキはカーマイン目掛けてエクスプロージョンを放った。その瞬間、カーマインは向きを変え、ヨシキの横の兵士の方へ口を開け突っ込んだ。


ボゥン!!


 後ろ脚に爆撃を受けたがカーマインは構わずそのまま突撃した。


 「う、うわーーーーー」


グシャ


 突然のことに兵士たちは対応できず、喰われる者、吹き飛ばされる者など様々だった。

 カーマインの後ろ脚は先ほどのエクスプロージョンで使い物にならなくなっていた。だが、兵士のおよそ三分の一ほどは死んだか大怪我を負っただろう。


成果としては先ず先ずだな……


 この逃走中で、カーマインに致命傷を負わせうる人間はヨシキ一人だと理解していた。本来なら真っ先に殺してしまえばあとは時間をかけて殺すなり、逃げるなりできる。だが、カーマインはそれを選ばなかった。

 理由は一つ。ヨシキを殺した時点で兵士たちは逃げるからだ。逃げて二度とカーマインを追わないのであればそれでいい。だがそうはならないのが人間だ。次の刺客を送ってくるのは明白だ。最悪、カーマインを瀕死にまで追い詰めたあの剣士を連れてこられたらたまったもんではない。

 だからカーマインはここにいる兵士すべてを殺しておかなければならなかった。二度とカーマインを追ってこれないように。

 本来ならもう少し体力が回復してからコトを起こそうと考えていたが、人間たちの執拗な追従に回復もままならない。ならば、多少でも回復した今が実行するべき時だとカーマインは覚悟した。


「アイツ等……あれほど気をつけろと言っていたのに……」


 ライザーは忌々しそうに呟く。


「ライザーさん、ここは一旦引きますか?」


 怯えた兵士がライザーに尋ねる。


「バカ言え! 相手はもはや瀕死だ。ここで仕留めなくてどうする!! ヨシキもいるんだぞ!」

「そうっチ。俺っチはまだやれるっチヨ!」


予想通りだな。


 カーマインはエクスプロージョンに臆することなく兵士たちを攻撃した。

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