説得
「はあぁぁ!」
八京に主導権を握らせないために八京へ斬りかかった。相手はあの八京だ。ナオキがいくら本気で斬りかかってもかすり傷一つ付けられないことは分かっている。だが、八京のペースになってしまえば途端に取り押さえられてしまうだろう。そうなってはゲームオーバーだ。ナオキに出来ることは攻めて攻めて攻め続けることだった。
案の定、ナオキの攻撃を八京は容易く躱した。でもそれでいい。今は何も考えずに攻め続けるんだ。
「……驚いた。城を出てから数日、まともに稽古をしたわけじゃないのに君は強くなってる」
ナオキの攻撃を躱し続けながら八京は言った。本心のようだ。
「八京さんに褒めてもらえて嬉しいですよ」
それでも……それでも八京さんには届かない
「ナオキ君、僕は何度も言うけど、大人しく言うことを聞いてエルフを渡してくれないか? 君のことは僕が必ず何とかする」
「八京さん。そう言ってもらえるのは本当にありがたいんですけど、八京さんが助けてくれるのはオレだけですか? レイやベルさんはどうなるんですか?」
「それは……」
「オレだけが助かってもダメなんです。オレ気付きました。オレの周りにいる人たちを救いたい。それは人間とか、エルフとか、ゴブリンとか関係なしに。誰かが理不尽に何かを傷つけるなんてことを見過ごすなんてことしたくないんです」
「ナオキ君……」
「今までのオレだったら何か理由付けて見ない振りをしてやり過ごしてました。でも、辛いことがあって、この世界に召喚されて、色々なことがあって、決心って言うか、覚悟って言うか……とにかく自分が正しいって感じたことを貫くって決めたんです。だから八京さん。相手が八京さんでもオレ戦います」
「ナオキ君……君のその真っ直ぐな気持ちは応援したい。けれど、君のその気持ちを折ってでも僕は君を止めたい。いや、止めることしか僕には出来ないんだ」
「何でですか!? 八京さんだってこの世界の理不尽さはオレ以上に八京さん自身が身をもって理解してるじゃないですか? それなのに何でこの国の人たちのために戦うんですか? 八京さんならオレなんかよりより多くの存在を救うことが出来るのに……」
「……理不尽なのはこの世界に限ったことじゃ無い。それに、僕にそんなことは出来ない。僕はこの国が望むことをこなすだけなんだ。それは僕に限ったことじゃ無い。清太郎も大和も涼音さんだってそうだ。皆好き好んでこんなことやっているわけじゃない。でも僕たちリスターターはそれに従うほかないんだ」
「何でですか!? 一体なんで従わなきゃならないんですか? そんなのおかしいでしょ?」
「それは……」
八京に斬りこみながらナオキと八京は話し続けた。ソコはお互いのみに意識がいき、周りの状況を把握しきれないないほどに二人は攻撃と会話にのめり込んでいた。
そんなナオキの背後に歩み寄る一人の男の姿があった。だが、ナオキも八京でさえもその存在を見逃していた。
「後ろが隙だらけだぜニイチャン」
ゾーラだった。今まさに背後からナオキ目掛けて斬りこもうとしているゾーラがソコにはいた。
八京とのやり取りに気を取られ、周りが全く見えていなかった。そんなナオキが躱せない説妙なタイミングでゾーラの剣が振り下ろされた。
ヤバい。躱せない――
「ナオキ君!」
八京もナオキを救うため身体を動かしたが遅かった。すでにゾーラの太刀はナオキを捕らえていた。
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