その先
テントを出ると、スティルトンの姿は無く、代わりに周辺から兵士たちの声が聞こえた。
この騒動で兵士たちが目を覚ましたか……
レイが気になりスグに向かおうとしたが、兵士が目に入り、物陰に身を潜めた。
ヤバいな。見つかる前にレイと合流したいんだけど……レイ大丈夫かな。
レイも傷を負っている。しかも相手は八京だ。どう考えてもレイのほうが不利だった。
どうする……見つかるのを覚悟で飛び出すか? それとも身を潜めながら少しずつ向かうか……
判断に迷うところだ。リスクは避けていきたいので見つかりたくはない。だが速やかに行動するに越したことは無い。
……どうしよう……
「……ナオキさん」
ナオキが悩んでいると、ベルが小さく声を掛けてきた。
「ナニ? どうしたの?」
「あそこ……見てください」
ベルが指さす方向は倉庫として使われているテントだった。
「ほら、あの物陰」
ベルの言う通りテントの物陰を見ると、何か動いている。目を凝らしよく見ると、なんとそれはレイだった。こちらに向って手を振っている。
「レイ!?」
「シーっ! ナオキさん、声が大きいです!」
咄嗟にベルはナオキの口に手を当ててそれ以上声を出させないようにした。
ベルの手の香りがナオキの鼻孔を刺激する。
どうやら兵士たちには気付かれなかったようだ。
ナオキとベルは周囲を見回し、兵士がいないことを確認してレイの元へ駆け寄った。
「レイ。無事だったん――」
「兄さま!」
「ベル。無事でよかった」
レイとベルは抱き合いお互いの無事を喜び、ナオキの声は二人の喜びにかき消された。だがこの兄妹の感動の再会に水を差すほどナオキは野暮ではい。
二人が抱き合うのをやめたのを見計らってナオキは口を開いた。
「レイ。無事でよかった」
「お前もな。ナオキ、よくベルを救ってくれた。本当に感謝してる」
ナオキとレイはお互い手を取り合い。ガッチリ握り合った。
「それにしてもあの八京さん相手によく切り抜けたな。もしかして八京さんを……」
――殺した――
まさかとは思うがその可能性もある。
「いや、ナオキが出て少しして俺も抜け出したんだ」
「? 一体どうやって?」
「ナオキ。お前とやりあってたアイツだよ」
「!?」
ジュダか
「アイツ、意識を取り戻した途端、お前の先輩に『サッサと片付けろ』だの『俺の回復はまだか』だの言い始めてな。先輩の意識が向こうにいったスキに俺も逃げたって訳だ」
「ジュダさんがそんなことを……」
意外だった。
「ナオキ、あの二人の関係は何だ? 友人や上司と部下って感じじゃない。むしろ主人と奴隷だ」
「そ……そんな……だってあんなに……」
信じられない
「とにかくナオキがいた時とは全然違った。あの二人、何か裏があるぞ」
「………………」
この世界の住人とリスターター……二人の間にも何かあるのだろうか。
「まぁお陰でこうして無事にベルと再会できたんだ。あとはここからずらかるだけだな」
「そうね。兄さま。早くここから離れましょう」
「おう! ところでナオキ。お前はこの後どうするつもりだ?」
「オレ?」
「そうだ。俺たちが逃げたらお前はここに残るのか?」
「……いや……色々な人たちに迷惑かけたしもうここにはいられない……」
「じゃあ――」
「あぁ。この国を出て旅に出ようと思う」
ベルを助けると誓った時から考えていた。ここに残っても周りに迷惑をかけ、ナオキ自身も悩み続けることになると。それならいっそ外の世界へ、自分の思うまま着の身着のまま旅に出るのも悪くない。勿論、簡単ではないだろう。だが、自分自身の力で切り開いていこうと誓った。ベルの救出はそんなナオキの背中を押すきっかけになった。
「……そうか……なら俺たちと来ないか?」
「え?」
「お前、この世界のこと知らないだろ? 今回の件も有るし。礼って訳じゃないが、お前が望むなら一緒に旅をしようぜ」
願っても無いことだった。本音を言えば何も知らない世界を一人で生きていくことが不安だった。だがレイたちと一緒ならこんなに心強いことは無い。
「本当にいいのか?」
「俺とベルの恩人だ。嫌なハズがない」
涙が流れるのをグッと堪え、ナオキはレイの目を見た。
「よろしく頼むよ」
改めてナオキはレイと手を取り合った。先ほどと違うのはその手に上にベルも手を乗せたことだった。
「私もいますからね。後、ナオキさんのコト、私にもわかるように説明してくださいよ」
「そうだったな。でもその前に、すべてはここを抜け出してからだ」
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