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キツネの思惑

 ――テントから出たナオキはヨタヨタと倒れそうになりながら歩いていた。ナオキが先ほどまでいたテントにベルの姿は無く、どこかへ移動されていた。エルフは貴重だ。適当な場所へ移動するようなことは考えられない。


 多分あそこだ……


 ナオキは確信に似たモノを感じていた。早くしないとジュダが目を覚ましてしまう恐れがある。

 ジュダへの最後の一撃はあえて刃先ではなかった。ゾーラの時と一緒だ。本気で剣を振ったが、ジュダのことだ、死ぬことは無いだろう。

 そう願いながらヨタヨタと歩いていると目的の場所にたどり着いた。


 ジュダと八京のテントだ


ここしかない。行こう


 意を決し、テントへ入ろうとしたその時――後ろから人の気配がした。


えっ!? もう来た!?


 突然のことに驚きながらもナオキは後ろを振り返った。

 そこには月光に照らされたスティルトンが立っていた。


「く……」


 反射的に身構えようとするが、全身の痛みで構えることもできず、持っていた剣を杖代わりにし、スティルトンと向かい合った。


「こんな時間にこんなところを散歩ですか? それも身体中傷だらけで」


 全身を嘗め回すような視線をナオキに向けながらスティルトンは言った。


「………………」


 ナオキは何も答えなかった。スティルトンがどこまで把握しているのか分からないので相手の出方を伺うことにした。


「そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ。アナタを攻撃するつもりはありません」


 口元を隠しながらクスクスと小さく笑い、スティルトンは言った。その仕草に妙なイラつきをナオキは感じた。


「じゃ、じゃあオレをどうするつもりですか? まさか、付きっきりで看病してくれる。なんて言わないですよね?」


 スティルトンの意図がわからない。ジュダ達同様ナオキを止めるのなら何も喋らずに一撃喰らわせればそれで終わりだ。指で突かれるだけで倒れそうなほどにナオキは弱っている。


「どうしましょうかねぇ? 無論、アナタの事情を私が何も知らないわけではありませんが……」

「じゃあ――」

「けれども、アナタに手を貸す気はサラサラありません」


 どうしたいんだこの男は。目的のわからないスティルトンに苛立つ。


「そうですねぇ。あえて言うなら……何もしない」

「はぁ?」

「そう。何もしません。アナタに手を貸しませんし、捕まえもしない。ただ、アナタたちの動向を見守ることにします」


――アナタたち――


オレとレイの関係を把握しているっていうことか……まてよ


「アンタ、レイと戦ったんだよな?」


 最早レイとのことにシラを切るつもりもない。


「レイ? あぁ戦いましたよ。あまりに強くて驚きました」

「なら何でここにいるんだ? レイにやられてたんじゃ……」


 訳がわからなかった。


「それは簡単です。私がやられたフリをしました」

「え?」

「いやぁ。あのエルフ……レイって言うんですか? とても勝てる気がしなかったんでね、早々に負けることにしたんですよ」

「な……」

「勝てない勝負はしない。私のモットーです。それに無駄に長引かせても怪我をするだけですからね」


 驚いた。まさか兵士でこんなことを平気でいうヤツがいるなんて……それもジュダの信頼が厚い男が言うコトではないだろ。


「あ、アンタ兵士だろ? もっとこう……国のためとか命令とか規律に従わないのかよ!?」

「おや? 我々を裏切ってエルフを奪還しようとしてる人が言うことですか?」

「う……」


 言葉が出ない。


「でも別に私は命令や規律に反しているわけではありませんよ。現にエルフと一戦交えて負けたわけですし。今だってアナタを確保するよう言われているわけでもない。まぁ本来なら今頃はエルフに失神させられていなければいけませんがソコは内緒と言うことで」


 口に指をあてて小さく笑うスティルトンを見て再び苛立ちが湧いてくる。


リスタのことが嫌いなんだろ? 何でそんな奴が少し楽しそうにそんなことをオレに喋る?


「な、何もしないって言ったけど、一体何が目的なんだ?」


 苛立ちを隠せずつい口調がキツクなる。


「それは内緒です」

「んなっ!?」


 またもや口元に指を当てて意地悪な笑みを浮かべて言った。


――ムカつく――


「そんなに何でもかんでもアナタに喋る訳無いじゃないですか。アナタも所詮はリスタ。もう少し考えられませんか?」


 怪我をしていなかったらこの男を殴っていただろう。


「ですが、そうですねぇヒントを一つ。私はある目的のために動いています。それに今回の件が無関係だとは言えないでしょう。けど私は今のところは傍観することにします。それが私の今の仕事です」

「仕事? 傍観が? まったくわからない……」

「それはアナタが知る必要はありません」


 そのことについては言うつもりはないらしい。


「なら、何でここに来たんだ? それくらいはいいだろ?」

「そうですね……まぁいいでしょう」


 少し間を開けてスティルトンは言った。


「なんてことはありません。アナタに興味があったからです」

「はぁ!?」

 今日一番くだらない答えのような気がした。


「私の目的のためにアナタの行動が利益になるかどうか。それを見定めるために来ました」


この男は何を言っているのだろう……


 どうリアクションをしていいか分からなくなってきた。


「ほら、お仲間の妹さんを救わなくていいのですか? 妹さんはアナタの想像通り、このテントの中にいますよ」


こいつ……


「い、言われなくても分かってる……本当に何もしないんだな?」

「えぇ。私の目的に支障が無い限りはね」


 この男を信じることは出来ない。ナオキの中でそう警笛が鳴っている。でも……


「……わかった。でももしオレの邪魔をするなら……」

「そんなことはしませんから早くお行きなさい」


 もう話すことは無いとでも言いたげにスティルトンは“シッシッ”と手を振った。


 コイツ、いつかぶっ飛ばしてやる


 言われるままにナオキはテントを開けようとした。


「あぁ最後に一つ。今私と話したこと、誰にも喋らないでくださいね。周りに知られると何かと面倒なんで。二人だけのナイショってやつで」

「なに!?」


 こいつ。どこまで人を馬鹿にしたようなことを言うんだ。


「アンタとの会話を誰かに言ったところでオレに不都合はない。だからアンタの言うことをきく必要はないだろ!」

「それはそうですが、まぁあるとすれば、今この場でアナタが私に捕まっていない。それを交渉の材料にしましょうか」

「おま……さっきは何もしないって言ったろ」

「だ・か・ら。これはお願いです。私としては、今この場でアナタを捕らえることも殺してしまうこともできます。ですが、それでは面白くない。だから何もしないんです。そして、今傍観することで私の目的達成が早まるなら尚更です。と言うことでどうでしょう? 悪い話では無い筈ですよ」

「………………」


 考え込んでしまう。悪い話ではない。というか今スティルトンと一戦交えれば確実に負ける。答えは出ていた。


「わかった。誰にも言わないよ」

「そう言ってもらえると思いました。一見頭が悪そうですがアナタはタダのリスタではありませんね」


ひと言多い


「じゃあもういいな? オレは行くぞ」

「はい。アナタが無事であらんことを」


 礼儀正しく会釈をし、スティルトンは言った。


白々しい。いちいちムカつく


 今度こそナオキはテントを開け、ヴェルニカ救出に動いた。


今回、読んでいただきありがとうございます。「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、評価をよろしくお願いします!



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