ナオキの意志
――ナオキはベルが捕らわれていたテントへ走った。既に夜も深くなり、兵士の姿も無く、基地は静かだった。かえってそれが今のナオキには不吉に感じさせた。
レイ……無事でいてくれ……
そう願い、ベルのいたテントへナオキは入った。
まずナオキの目に入ったのは八京だった。そしてその隣にはジュダがいる。二人とも剣を構えていた。そして二人の目の前にはレイがいる。
良かった……無事だ……
ナオキの顔は安堵から、僅かに緩んだ。だがそれも束の間、スグに表情は険しいモノになる。
この状況を打破しなくてはいけない。それは今までのどの状況よりも難しいモノだ。
「ナオキ、どういうことだ? ベルはここにいるんじゃなったのか!?」
ベルがいないことで苛立ったレイがナオキに言った。ナオキとしてはここでナオキとレイが知り合いだと認めるのは得策ではないと感じたが、八京とジュダがここにいるのだ。ナオキとレイの関係はもはや分かっているだろう。
「……オレたちの作戦はバレてたんだ」
「バレてた? どういうことだ?」
「オレがレイに信号を送ってたのが見られてたんだ……すまない。もっと周りに気を配ってれば……」
「そんな……」
レイにかける言葉も無い。今の状況は限りなく最悪に近いモノなのだから。
「いや~ナオキ君、君のおかけでエルフをもう一匹捕らえることが出来そうだ。お手柄だよ。本当に感謝してる」
「えっ!?」
突然、ジュダが話しだした。それも信じられない内容を口にしている。
これにはナオキもレイもそして八京でさえも驚きを隠せないでいた。
「そ……そうなのか……ナオキ……」
「ち、違う……レイ……し、信じてくれ……」
オレはお前を裏切ってない
「ナオキ君、君の今までの問題行動は目に余るものがあった。いくら八京がフォローしたところで庇いきれるものではない。だが、今回の件でそれも帳消しだ。何せ、貴重なエルフ、それもこんなに若くて美しいエルフが手に入るんだ。これは素材のランクで言ったらダブルAに匹敵するよ」
「ジュダさん……あなた……」
八京もそれ以上言葉が出てこなかった。
「ナオキ君、これは君にとって大きなチャンスだよ。さぁ、一緒にエルフを捕らえよう!」
ジュダはナオキに向って手を差し伸べている。確かに、レイを裏切り捕らえれば大きな成果になる。幸いなことに今レイは、前方にジュダと八京、後方にナオキと挟み撃ちの状態だ。ここから逃げるのは難しいだろう。ナオキが今のまま、八京や明日香やルカと過ごすのならこれが最後のチャンスだ。
「………………」
「ナオキ、お前……」
レイはナオキから距離をとるように後ずさりする。だがそれはジュダと八京に近づいていることになる。そして八京は心配そうな顔でナオキを見ている。
「ナオキ君、ここはジュダさんの言う通りにしてくれ」
「や、八京さん?」
「君の気持ちは分かってる。だけど、君にはそのエルフたちを救えない。僕たちの元へ来るんだ」
「八京さん……」
「今なら君を何とか出来る。僕が絶対にしてみせる。だから……」
八京は必死で説得をしている。それほどナオキを思ってくれているのだろう。
「………………」
「ナオキ……」
レイの声は力のないモノだった。
「ナオキく――」
「八京さん」
ナオキは八京に向っていった。
「な、何だい?」
「オレ、八京さんに迷惑かけっぱなしで、その度に八京さんはオレのことを守ってくれて、本当に感謝してます」
「そんなこと良いんだよ。全然気にしてない」
「オレ、こんなだからこれからも似たようなことするかもしれないし、実際、さっきも兵士の人たちやっちゃったし、もっと迷惑かけるかもしれません……」
「え? そうなの!? で、でも大丈夫。僕が何とかして見せるから」
明らかに八京は驚いている。だが八京の答えは変わらなかった。
「八京さん、ありがとうございます。八京さんならきっとそう言ってくれると思ってました」
「ナオキ、お前……」
八京はホッとしたように笑みを浮かべ、反対にレイは険しい表情を浮かべて身構えた。
「でも八京さん。オレ、それじゃダメなんです」
「え?」
「今までもこれからも八京さんに守られっぱなしじゃ……自分が正しいと思うことを自分が責任をもってやらなきゃアイツを悲しませることになる……」
「な、ナオキ君、何を言ってる――」
「だから、だから八京さん。申し訳ありませんけど、オレはレイと一緒にレイの妹を助けます。たとえ、アナタと戦うことになっても。オレの信念を曲げるつもりはありません!」
「ナオキ君……」
八京は悲しそうな表情を浮かべそれ以上言葉が出なかった。
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