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作戦開始

 ――森の茂みを出て野営地の近くまで来た頃、ナオキは警備の兵士に発見され、そのまま八京とジュダの元へ連れていかれた。

 ナオキは今までの経緯を説明した。勿論、レイやクー、ガーのことには触れず、森の中で雨が止むのを待っていたと説明した。


「はぁ……まったく。君の無茶な行動には驚かされたよ」


 ナオキの説明が終わった後、ジュダが開口一番に言った。その表情は安堵半分苛立ち半分といったところか。


「心配をかけて、本当にすいませんでした……」


 ナオキは深く頭を下げた。ナオキ自身、原因はゾーラにあると考えていたが、ナオキが逃げた後、懸命に捜索をしてくれた八京や兵士たちに対して迷惑をかけたことには深く反省をしていた。


「とはいえ、元はと言えばウチの兵士たちの問題行動にある。これから始まる討伐前の景気づけとはいえ、君があそこに参加することは禁止されていた。あの場にいた兵士たちには相応の罰を与える方向で検討中だ」


ジュダもゴブリンの殺戮ショーは知っていたのか……


 もしジュダが知らないところでアレが行われていたのなら今後、あのようなことは無くなってほしいと淡い期待を持っていたが、それは夢に消えた。これからもアレは行われるのだ。


「あの、ことを大きくしたのはオレの責任なんで、あの場にいた人たちには出来るだけ穏便にお願いします」


 でないと後々、ナオキが目を付けられてはたまったもんではない。


「処罰に関しては軍法に則って厳正に対処はするが、ナオキ君がそう言うならそれも考慮しよう」

「はい。よろしくお願いします」


 ナオキは再び頭を下げた。


「でもナオキ君が無事に戻ってきてくれて本当に良かった。何かあったらどうしようと皆心配してたんだよ」


 八京は嬉しそうに言った。だが、その表情には疲れが見える。本当にナオキの事を心配してくれたのだろう。


「八京さん。迷惑かけてばっかりで、すいません」


 今度は八京に向って頭を下げた。八京はナオキの肩に手を置き、下げた頭を起こさせた。


「迷惑だなんて思ってないさ。気にしなくていい。それよりも色々大変なことがあったと思うけど、ここに戻ってきてくれたことが何より嬉しいよ」


 八京の優しさに胸が痛んだ。ナオキは再び八京に迷惑をかけることになるのだから。


「あの時オレ、無我夢中で冷静な判断が出来てなかったんです。これからはもっと冷静でいられるように頑張ります」

「元の世界とこの世界では違うことが多いからね。少しずつ慣れていけばいいよ。それよりお腹空いてるだろう? 食事を用意してあるから。明日香さんたちも待ってるし、向こうで休んだほうが良い」


 確かに腹は減っていた。明日香とルカにも謝らなければならない。だが、それよりも先にナオキにはやるべきことがあった。


「あの……戻ってきて早々申し訳ないんですけど、八京さんに相談したいことがあるんです」

「僕に? 別に構わないけど。今すぐかい?」


 少し驚いたように八京は言った。それに、一瞬ではあるが八京の視線がジュダを見た様に見えた。


「出来れば早いほうが有難いです。それもできれば二人で話したいんですが……」


 ナオキが何かマズいことを言ったのだろうか。八京は困った顔をした。


「ナオキ君、それはこの私にも聞かれたくは無いことかな?」


 ジュダが話に入ってきた。心なしかその口調から冷たいモノを感じる。


「ちょっとした相談事なんで、ジュダさんに聞いてもらうようなことじゃ無いんですよ」


 ナオキは努めて明るく言った。八京と二人で話したほうが事は上手くいく可能性が高いと考えたからだ。


「そうか……でも君がどんな悩みを持っているのか私も知りたい。それに何か力になれるかもしれないだろ? 出来れば私にも聞かせてもらいたいのだが、駄目かな?」


 口調は穏やかだがジュダの雰囲気はとても冷たいモノだ。まるでナオキを警戒しているように感じる。


「まぁジュダさん。ナオキ君も言ってるけど、ちょっとした相談事みたいだし、僕が話相手になればいいんじゃないですか?」


 八京が助け船を出してくれる。


八京さんナイス! これで納得してくれれば……


「いやー。私としてはリスタの悩みってものも知るいい機会だと考えてるんだ。ほら、今後もリスタは増えるだろうから。その時に少しでも参考になればいいと思ってな。どうかな、ナオキ君?」


 どうやらジュダに引く気は無いらしい。何をそんなに拘っているのかナオキには分らなかった。


どうする……変に拒否るのも怪しいよな……


「分かりました。ジュダさんも聞いてください」


 ナオキの了承を聞き、ジュダは笑顔を見せた。


「それは良かった。勿論、ここで聞いたことは他言しないから何でも気にせず話してくれ」

「は、はい、お願いします」

「勿論、僕も他の人に言うなんてことはしないから安心して」

「八京さんがそんなことしないのは知ってますよ」

「ありがとう。それで? 僕に話って?」

「あの、他の兵士の人たちの会話が聞こえちゃって知ったんですけど……エルフを捕まえたんですか?」


 それを聞いた八京の表情が一瞬強張った。ジュダの表情は変わらず微笑んでいる。


「う、うん。そうだね。けど、それがどうかしたの?」

「はい。オレ、エルフって見たことないんで、一度見てみたいんですけど駄目ですか?」


 ナオキの言葉を聞いて八京は安堵の表情を浮かべ、ジュダの顔を見た。


「確かにエルフを捕らえているがナオキ君、君はそんなにエルフに興味があるのかい?」


 ジュダは微笑みながらナオキに近づいてきた。


「はい。元の世界にはエルフっていなかったし、異世界って言ったらやっぱりエルフって言うか……ゼヒ一目見てみたいんですよ!」


 ナオキはエルフに興味があるように努めて言った。本当はエルフ(雄だが)には先程会ったばかりだが……


「そうか、よし分かった。ナオキ君にエルフを見せてあげよう」

「本当ですか!? ありがとうございます」

「ちなみにナオキ君の相談事ってこれかい?」

「え? は、はい。もしかしたら見せられないって言われるかもしれないんで……けどそんな時、八京さんなら“皆には内緒で”ってことで少しでも見せてくれるかなぁって……すいません」


 バツが悪そうにナオキは言った。


「ナ、ナオキ君……」


 八京は困ったような驚いたような何とも複雑な顔をした。そしてそれを聞いてジュダは笑い声をあげた。


「ハッハッハッ。そうかそうか。そりゃ確かに八京一人に相談をしたかったわけだ。けどナオキ君、捕らえたエルフを見せることを許可しないなんてこと、私はしないよ。むしろ是非見てもらってこの世界のことをもっと知ってほしいと思っているくらいだ」

「そうだったんですね。良かったぁ。見せてもらえなかったらどうしようって思ってましたよ」


 これは本心だ。先ず、エルフが本当に捕らえられているか。次にそのエルフが本当にベルなのか、怪我はしていないか。そして、どこにどのように捕らえられているのか。これらを確認しておく必要があった。


「じゃあジュダさん、早速お願いします」


 感謝の意味を込めてナオキは深々と頭を下げた。


「あぁ。付いておいで」


 3人は捕らえられているエルフの元へ向かった。

今回、読んでいただきありがとうございます。「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、評価をよろしくお願いします!



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