お守り
――森の茂みの中、ナオキとレイは身を潜めていた。ナオキの野営地は目の前だった。
ナオキとレイはここに来るまでに2つのルールを作っていた。
一つはお互い名前で呼ぶこと。
二つ目は、敬語は使わないこと。
これらはお互いを信頼し対等の立場でいるためのルールだった。今回の作戦のみの短い間だが、お互いの信頼無くして作戦は成功しない。そのために少しでも信頼関係を築くためのルールだ。
「それにしてもコレ、ホントに貰っていいのかな……」
ナオキの手には透明なクリスタルが握られていた。クリスタルの中は赤く輝いている。
「あのチビ達が良いって言ってんだ。貰ってやればいいだろ」
「でも……メチャメチャ高価なんだしその……危険なんだろ?」
「だから、要らないなら俺が貰ってやるって」
「いや、それは無いな」
ナオキの握る石はクーとガーから預かったものだった。
――それはナオキとレイが洞窟を出発する時だった。
「じゃあオレたちは行くからな。お前たち、もう人間に捕まるなよ」
ナオキはクーとガーの頭を撫でた。二匹とも涙を流している。
「ウウゥ……ワ、ワタシタチモイク」
「ワ、ワイモ……ワイモ……ウゥ……」
泣きながら二匹は言った。どうやら一緒に行きたいらしい。
「それはダメだって言ったろ? 遊びじゃないんだ。また捕まったらどうする」
「デモ……テツダイタイ……」
「気持ちは嬉しいけど、見つかったらお前たち、ひどい目に合って挙句には売り飛ばされるかもしれないんだぞ? 絶対にダメだ」
特にゴブリンは何をされるか分からない。絶対に連れては行けない。
「ウウゥ……ジャア……ガー。アレ……」
「アレ? アレ?」
クーがガーにアレを促した。だがガーはアレが分からないらしい。首を傾げている。
「モウ! アレダヨ……オマモリ!」
「アー。オマモリ! アル、オマモリ」
ガーはいきなりパンツの中をゴソゴソまさぐり始めた。
「アッタ! オマモリ!」
ガーはパンツの中から透明な石を取り出した。その石は赤く輝いていた。
「何でパンツの中に入れてんだよ。ってかその石なんだ? 宝石か?」
「コレ、オマモリ。ガー、ソレアゲテ」
「ウン。ハイ」
クーに言われ、ガーは持っている石をナオキに差し出した。
「え? 何? それ、くれるの?」
気持ちは嬉しいけどパンツの中に入ってたやつだろ……
受け取るのを躊躇うナオキへガーは石を近づけた。
「ハイ! オマモリ!」
「いや~。その……気持ちだけ貰っておくよ。ほら、ソレ大事なもんだろ? 自分で持ってたほうが良いよ……」
受け取りを拒むナオキを他所にレイが隣で笑いを堪え震えている。
「プッ……い、良いじゃないか……折角だし受け取っとけよ」
こいつ……他人事だと思って……
「モウ! オニイチャン、オマモリモラッテヨ!」
痺れを切らしたクーが叫んだ。
それに反応したガーがジャンプをしてナオキに抱き付き、持っている石をナオキの顔に押し付けた。
「ウグッ」
石はナオキの頬にめり込むように押し付けられた。
「うわー! 何すんだよコイツ! って臭っ! あ、ヤベェ臭え!」
当てられた個所から匂うアンモニアの発酵した匂いでナオキは思わず叫び膝をついた。そして必死に顔を拭った。レイは耐えきれず声を出して笑い出した。
「オニイチャン。オマモリモラッテヨ!」
尚もクーは怒っている。ガーは再びナオキの顔へ石を近づけた。
「わー! やめろ! 近づけるな! わ、わかったわかった! 受け取るから。受け取るから! 取り合えずその石を近づけないでくれよ」
観念したナオキは石を貰うことにした。
「もらうから。だからその前に一回その石を洗ってくれ。臭いんだ!」
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