表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

善なる煩悩

作者: 楠木静梨

 本当に勘違いしないでいただきたいのだが、私は欲ではなく善意で動いただけだ。


 今朝九時、母が家を出る前に残った米を食べておいてくれと言っていた。

 だが、華の休日―――一人一日留守番のパラダイスで、米似合うおかずなど作りたくはない。


 だから私はカップラーメンを、胸を張って食べた。

 豚骨の、味の濃いやつだ。


 完食、腹七分目。

 少し物足りないが、もう一杯カップラーメンを食べる余力はない。


 そこで私は閃いた―――(もとい)、思い出した。


 私は母を助ける為にカップラーメンを食べたのだと。


 決して偶然思い付いたわけではなく、思考回路が働いたわけでもなく、計算ずくの行為を思い出しただけだ。


 豚骨ラーメンを食べるとどうなるか―――そこには熱い、豚骨ラーメンの細麺では吸いきれない大量のスープが残る。


 ラーメンの味とはなんだ。

 至極明快、スープである。

 麺に拘り、細麺太麺手打ちと看板を打つ店はあるが、結局それらに味をつけるのはスープ、スープ様々だ。


 そのスープをシンクに捨てる? とんでもない、冗談でも言ってはならない。


 だが、ただ飲むのでは芸がない。

 だから私はスープに米を入れる―――スープを有効活用して、母の願いである米の処理も達成。


 箸だけで済んだはずの洗い物に、スプーンを追加。

 鉄スプーンだと熱いので、木のスプーンだ。


 サラサラと米を流し込んで、スープ残量を元の二割以下まで。

 それをようやく、単純に飲み込んだ。


 夏の日、エアコン起動の三分前。

 額に汗を浮かべながら、熱の篭った息を吐く。


 決して豚骨スープに米を入れて食べたかっただけじゃない。

 私は完璧に、全てをこなしたのだ。


 これこそが、これだけが皆幸せになる道筋。


 私は今日、休日に善意を振るったのだ。

夜ご飯のブタメン、美味しかったです。


@QkVI9tm2r3NG9we(作者Twitter)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 健啖ですねぃ♪ あと、言い訳がお上手♪(笑) 情景、心情、動作等の表現描写とストーリー進行のテンポのバランスが読みやすかったです。 [気になる点] タイトルの「善」は「膳」に掛けてい…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ